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大島紬で際立つ”静かな迫力” feat. 俳優・片岡礼子「きもの、着てみませんか?」 vol.2-1

大島紬で際立つ”静かな迫力” feat. 俳優・片岡礼子「きもの、着てみませんか?」 vol.2-1

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着物スタイリスト・薬真寺 香さんのスタイリング連載第二弾。映画やドラマで活躍されている俳優・片岡礼子さんをお招きし、秋の着物コーディネートを提案しました。光と影に戯れる自由闊達な片岡さんの表情とともに、しっとりと大人な着物姿をご覧ください。

俳優・片岡礼子さん ― 伝統と新しさの同居する着物姿

着物や和のこと以外の分野で活躍されている方をゲストにお招きし、着物スタイリスト、薬真寺 香さんによるスタイリングで着物姿になっていただいてお話をお聞きするという本連載。

大変好評だった前回(『”浴衣×ハット”で夏の都会へ feat. 刺繍作家・小菅くみ』)に続きシリーズ2回目となる今回は、とある出会いから生まれたご縁により、俳優・片岡礼子さんにご登場いただきました。

俳優・片岡礼子さんの着物姿と眩しい笑顔

1993年に『二十歳の微熱』(橋口亮輔監督)でスクリーンデビューしたのち、1995年『KAMIKAZE TAXI』(原田眞人監督)で第15回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、2001年『ハッシュ!』(橋口亮輔監督)で第75回キネマ旬報主演女優賞と第45回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞するなど、国内外から高い評価を受けている片岡礼子さん。

映画界のミューズとして注目を集めていた2002年に脳出血を発症し、一時は生命の危機に晒されましたが、療養生活を経て俳優業に復帰され、現在も公開中の映画『空白』(吉田恵輔監督)や、10/15〜舞台『コントと音楽 vol.3「くたばるものかよ」』(演出・脚本・選曲/飯塚健)など多方面で活躍されています。

よく通る快活な声と親しみやすい笑顔で氷川神社に現れた片岡さん。
ユーモア溢れるお話でその場を柔らかい雰囲気にしてくださいます。

しかし、着物を身に纏いカメラが向けられるとすうっと息を吸い、がらりと俳優の表情に。

光を帯びた俳優・片岡礼子さんの凛とした着物姿

スタイリングのポイント

薬真寺さんに、今回のコーディネートのポイントやこだわりをお伺いします。

竹を背にして。俳優・片岡礼子さんの凛とした着物姿。

「着物は泥染め・本場奄美大島紬。力強く、伝統的でありながらモダンでスタイリッシュな雰囲気も感じられる、趣深い着物です。
華美な装飾がなく、色味を抑えた着物を纏っていただくことで、片岡さんの内面から湧き出る静かな迫力が際立つようイメージして選びました」

粋でスタイリッシュ俳優・片岡礼子さんの着物姿

渋い色味と大島紬独特のシャリっとした絹の質感が凛とした美しさを引き立てて。

八掛の、ニュアンスを帯びた紫色。

八掛の紫が片岡さんのお気に入りの色であることも、決め手のひとつになったそう。

合わせた帯は、節糸の凹凸がほのかに浮かぶ紬地にエキゾチックな花更紗が染め上げられた洒落袋帯。

地の色は、江戸時代に深川の芸者さんが好んだことからその名がつき、やがて江戸庶民の間でも流行した”深川鼠(ふかがわねずみ)色”です。

大島紬。俳優・片岡礼子さんの凛とした着物姿。
更紗柄の帯が印象的

「発祥の地はインドとされるものの、その後ヨーロッパをはじめ世界各地で思い思いの発展を遂げてきた更紗模様。風や土、日々の暮らしに揉まれるうちに、それぞれの地でオリジナルの更紗が生み出されてきました。

それはどこか、それぞれの感性やバッググラウンドをもとに異なる表情(かお)を生み出して見せ演じる”俳優”という職業に通じるところがあるようにも感じられます」

大胆で洒落みのある配色の更紗柄の帯

「私にとっての片岡礼子さんのイメージは”生”。どんな役をされていても、とにかく”生きてる”という印象を覚えます。

そして例えほんのわずかなシーンでも思わず目を奪われてしまう、圧倒的な存在感があります」

「この帯の不思議な吸引力や、素朴さと華やかさが共存するところ、絵柄から感じる生命力、そしてどこかに誘ってくれそうな異国情緒。

これらすべての要素が、片岡さんに対して抱いていた説明し難い感触にしっくりと馴染み、全体の方向性を定めてくれたように思います」

エキゾチックで洒落た配色の更紗柄の帯

静かに語りかける小物たち

・ストール

作家・高橋京子さんによる『つばめ工房』のもの。
元テキスタイルデザイナーである高橋さんがデザインし、自ら糸を染め、機(はた)を織って生まれた布をセレクト。

作家・高橋京子さんによる『つばめ工房』のもの。
表情豊かなストールが装いを物語に変えてくれる
ストール、歩くたび揺れる様に目を奪われる
着物姿を柔らかく包み込むストール

「つばめ工房さんの作品、作り手の高橋さん、そして布たちを生む工房が纏う空気―

共通するのは、”初めましてなのに何故かそんな気がしない”、懐かしさにも似た触れ心地。
しかしその眼差しは鋭く、どんなに柔らかで優しげな色合いの布からも糸目からも房からも、強く真っ直ぐな意思を感じます。

そしてそれはまさに、片岡さんに共通する点でもあります」

織り上がった時の布の表情を大切にするため、あえて”単糸*”を使うことが多いというのも、作り手である高橋さんのこだわりのひとつ。

*単糸(たんし):紡績したままの一本の糸。通常使われることの多い双糸に比べ太さにムラがあること、撚り(より)が一方向のため戻ろうとする力が働くことなどから、布地に独特の動きが生まれる。

手織りならではの風合いが初秋の光によく映えるストール

「美しいドレープを描くストールは、着物姿に風情を添えてくれる名脇役。なめらかに肩に沿わせる仕草はなんとも雅やかで、印象的に映ります。
上質な手仕事が感じられる特別な一枚は、普段着きものにサッと羽織るだけで様になる頼れるアイテム。洋装でも使いやすく、年齢や性別を問わない色やデザインは家族やパートナーとシェアする楽しみも」

サッと肩から外し、手に掛けても様になるストール

・かんざし・帯留め・リング

『Classic Ko』(クラシックコー)のもの。
伝統と歴史の香りを色濃く感じさせる石川県は加賀で、大下香征工房が手掛ける蒔絵の装身具ブランドよりセレクト。

美しい横顔を彩るかんざしと、まとめ髪の優雅な毛流れ

ひとつの文様を描くにも漆を塗り金粉を蒔き、また漆を塗り重ね幾重にも工程を重ねる蒔絵の装飾技術は、繊細で圧巻の美しさ。

蒔絵という日本の伝統的な装飾技法を装身具(ジュエリー等身につけるもの)に落とし込むことで、その技術や魅力をより現代に合った形で伝えたい、という思いをもとにものづくりをされています。

「『KARUTA』と名付けられたこの帯留は、裏の金具がバッテンに配されていて、縦でも横でも使えるという嬉しい仕様(こちらは横で装着)。
デザインや細工の美しさだけでなく、こうした細やかな工夫がなされているところも大きな魅力のひとつです。

小さなひとつぶから遥かな物語と浪漫を感じさせてくれる佇まいが、俳優として様々な役を生きてきた片岡さんの姿に彩りを添えています」

モザイク調のモダンな帯留

「普段着きものをちょっとキレイめに着たいときには、今回のような小物で帯まわりや髪をさりげなく飾るのがおすすめ。
丁寧に生み出されたお気に入りの小物は、使わないときに引き出しを開けて「ああ綺麗」と眺めるだけでも豊かな気持ちにさせてくれます。
かんざしは、シンプルなワンピースなどに合わせても素敵です」

なだらかな曲線を描いたカール・アップヘアを飾るかんざし

内面に迫るインタビュー編も

大島紬の素朴さと更紗帯のエキゾチックな味わいに、クリエイティビティに満ちた現代作家さんによる小物の手仕事の表情が加わることで、普段着きものが品よく洗練された薬真寺さんのスタイリングでした。

次回は、インタビュー前編を10月後半に公開予定。

片岡さんご本人の魅力や人生観により迫るとともに、撮影スタッフ一同魅了された、片岡さんの千変万化の着物姿も必見です。どうぞお楽しみに!

普段着きものの気軽なお出かけスタイル

片岡礼子さん出演情報

映画『空白』公式サイト
https://kuhaku-movie.com

コントと音楽

コントと音楽 vol.3「くたばるものかよ」
conte-to-ongaku3

片岡礼子のシトラスレター

片岡礼子のシトラスレター

毎週月曜日11時45分~11時55分
南海放送ラジオ ※radikoでも視聴可
https://www.rnb.co.jp/radio/citrus-letter/

ストール
『つばめ工房』
2010年にスタートした高橋夫妻によるクラフトギャラリー。台東区鳥越の昭和の風情溢れる「おかず横丁」の一角に居を構えている。作家・高橋京子さんが染め、織を手掛けたストール等の布製品をメインにさまざまな作家作品を販売している。
http://tsubamekobo.com/
Instagram tsubamekobo

かんざし、帯留、リング
『Classic Ko / クラシックコー』
時代を経て受け継がれてきた装飾技術「蒔絵・漆」の手技を駆使しながらも、現代の感性によって継がれる独自のミックス感覚を持った「美しさ」を築いているアクセサリーブランド。
http://www.classic-ko.jp
instagram classicko.jp
online-shop http://www.classic-ko.net

草履
『襟の衿秀』
http://www.erihide.jp/

※半衿、帯揚げ、帯締めはスタイリスト私物

構成・文/青葉鈴 greenery_aoba
撮影/坂本陽 minami.camera 
取材協力/ 上目黒氷川神社 

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