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刺繍も着物も気持ちを”整える”。 刺繍作家・小菅くみさん(インタビュー後編) 「きもの、着てみませんか?」 vol.1-3

刺繍も着物も気持ちを”整える”。 刺繍作家・小菅くみさん(インタビュー後編) 「きもの、着てみませんか?」 vol.1-3

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ユーモラスなモチーフの作品で人気の刺繍作家・小菅くみさん。インタビュー前編では、「好き」を増やしてとにかく動いてみる!ことを語ってくださいました。後編では、刺繍と着物の共通点や先輩きものファンへのメッセージも。vol.1-1、1-2に引き続き、薬真寺 香さんスタイリングの浴衣姿にてお話しいただきます。

動いてみたら、いいことしか起きない。 刺繍作家・小菅くみさん(インタビュー前編) 「きもの、着てみませんか?」 vol.1-2

ユーモラスなモチーフの作品で人気の刺繍作家・小菅くみさん。vol.1-1での、薬真寺 香さんスタイリングによる浴衣姿も好評でした。今回は、”好き”を仕事にしていく上で小菅さんがどんなことを大切にされているのか、お話を伺いました。

背筋が伸びる気持ちよさ

前回、自身の仕事や刺繍への想いを語ってくださった作家・小菅くみさん。
薬真寺さんのスタイリングで浴衣を身にまとい、帯がきゅっと締められたときに、小菅さんがぽろっと口にした言葉は、「気持ちいい」でした。

レトロな雰囲気のタイルを背に浴衣姿で微笑む小菅さん。

「帯を締めてもらったとき、気持ちいいって思いました。背筋が伸びて、しゃんとする。
きちんと帯を締めて浴衣を着ている時の、自分の精神的な高まりは洋服とちょっと違いますね。日本人だから、和服を上手に着こなせたらいいなと今日あらためて思いました。

見た目に涼しげなのはもちろん、着ていると生地もサラサラして、肌上を通る風を感じました。
こうやって帽子と合わせたり、今風にもできるんだって、うれしい気づきですね」

着物・浴衣や和をテーマに刺繍するとしたら?と伺ってみると、

「風や水を思い起こさせるもの、風鈴とかかな。今日浴衣を着て銀座を歩いてみて風の気持ちよさを感じたので、そこを表現できたらいいな」

プールサイドにたたずむ浴衣の後ろ姿。

浴衣や着物に織り込まれた思い出

お話をうかがっていると、着物や浴衣にまつわる思い出をいくつもお持ちの小菅さん。

「思い返せば、実家には母が七五三で着た着物がとってあって。私も七五三のときに着せてもらってうれしかったのを覚えています。
母も祖母も喜んでくれて、継いでいくのっていいものだなと思いました」

ヴィンテージのバッグを手にした浴衣姿の小菅さん。

「中学生の時には、家庭科で浴衣を手縫いしたんです。大人になってから、その浴衣を着て同級生と集まりました。
私は中学生にしては渋い藤色を選んだんですけど、後から思うと大正解でしたね。

それから、好きな人ができた時に浴衣を着て夏祭りに行きました。全然うまく着れなくて、時間が経つとはだけてしまって今思うと恥ずかしいのですが…
好きな人の前でいつもと違う自分を見せたくて、慣れない着付けも頑張ったんだと思います。浴衣を着ると、みんなかわいく見えるから」

浴衣を着た小菅さんの手元と、発売したばかりの初めての書籍。

着物って楽しい!ってもっと教えて

普段は着物を着ていない小菅さんですが、着物や浴衣にはどんなイメージがあったのでしょう。

「街に出た時に、同世代が浴衣着ていると「おっステキ!」て思っていました。
すごくかわいいな、自分で着れるようになったらいいなと何年も思っているんですが、なかなか機会を作れなかったので今日は着せてもらえてうれしかったです。
ルールやマナーが難しいって考えがちですが、そんなの気にしないで浴衣や着物をもっとカジュアルに、普段のものにできたらいいですよね」

着物って楽しい!

普段から着物を着ている人へのメッセージを伺ってみると、

「着物を着るって楽しい!ということを、着物を着ない下の世代にもたくさん話を聞かせてほしいと思います。
私もそうですが、みんな”ちょっと着たいな”と思っているけれど、なんだか難しいものだということが頭にある。普段から着物を楽しんでいる姿を見せていただいたり、お話を聞く機会があると身近に感じると思うんです。

怒られちゃうともう着たくないなって思うので、”この着方は間違っている”という感じじゃなくて、やさしくおもしろく、マナーなどを教えてくれたらうれしいですね」

縁が深い、刺繍と着物

着物や帯、半襟などには刺繍を施したものも多く、刺繍と着物は縁が深いものです。

「実は以前、着物やさんとコラボレーションして、帯や半襟に刺繍をしたり、帯留ブローチを作らせていただいたことがあります。
それまで着物ってもうちょっと遠いものだと思っていたんですが、半襟や足袋にワンポイントの刺繍を入れたりする方もいると聞いて、関わりが深いんだと知りました。
人と違う、自分らしいポイントにできてステキですよね」

着物の世界では絹糸での刺繍が一般的。小菅さんが普段扱っている刺繍とは、少し違う世界にも思えます。

「私は、世界が違うとはまったく思わないです。
糸の材質は違うけど、大切なのは、ツールやセオリーではなくて、自分がどんなことを感じて、何を表現したいか、どう縫い進めていくか。そこは同じですよね」

小菅くみさんの刺繍作品。タイトル「ほっと一息」。
小菅くみ『ほっと一息』
制作途中の小菅さんの刺繍作品。タイトル「森の守り神」。
小菅くみ『森の守り神』

「私が洋服に刺繍をはじめたのは、刺繍のお洋服って買うととても高いけれど、自分で縫えばいいじゃんって手持ちの服に刺繍をはじめたところからでした。

絹糸で刺繍をしていく京繍は難しい、と挫折してしまう方も多いと聞きますが、ツールや型にこだわらず、好きにチャレンジするといいのかなと思います。
考えすぎて手を出せない、となるのはもったいないですから」

刺繍も着物も、気持ちを整えてくれるもの

刺繍作家・小菅くみさんが浴衣スタイルで銀座に

小菅さんは、刺繍と着物の共通点があると見つけてくれました。

「集中して刺繍をサクサク縫っていると、気持ちが整ってくる。着物も、帯を締めると背筋が伸びて気持ちがシャンと整う。
所作まで変わってきますもんね。装うだけでなく、内面にも影響があるのを感じました。精神面が”整う”のが共通点ですね」

半襟に自分で刺繍したり、”私らしさのある着物姿”もしてみたいと語る小菅さん。持ち前の好奇心で、これから新しい和服姿をみせてくれるかもしれません。

◆ 読者プレゼント ◆

さて、ここで楽しいお知らせが…
ゲスト・小菅くみさんの初の書籍『小菅くみの刺繍 どうぶつ・たべもの・ひと』(文藝春秋)を、抽選で2名の方にプレゼント!

小菅くみの刺繍

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※応募期間:2021年8月25日(水)まで

浴衣
『着物 中や』
kimono_nakaya

ハット
『Saravah』
帽子デザイナー兼帽子職人・坂口直顕さんによる、2013年にスタートした日本のハットブランド。クラシカルでいて瑞々しく、マニッシュでありながら女性らしい柔らかさが漂う。美しいフォルムと厳選された素材、流行り廃りに左右されない確かな魅力で支持されている。
saravah_hat

帯留め
ガラス作家 福士遥さん
茨城県出身、武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 卒業。その後同大学 ガラス研究室 助手を勤め、現在は東京で制作を行う。個展や合同展を多数開催。主にパート・ド・ヴェールという技法を使い、くらしや壁面をいろどるガラス作品を制作。
fukushiharuka

*三分紐、下駄、うちわ、バッグはスタイリスト私物

構成・文/青葉鈴 greenery_aoba
撮影/坂本陽 minami.camera 

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