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夏空に映える、レースの羽織 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.33

夏空に映える、レースの羽織 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.33

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レースの羽織は、下に着ているきものや帯が透けて見え、なんとも涼しげ。色も白だけでなく淡いブルーのものやアンティークレースのような淡い黄色のものまであって、一枚選ぶのに難儀するほどです。

快適な衣!夏素材のすすめ 「きくちいまが、今考えるきもののこと」

暑がりのわたしは、見た目だけ涼し気で、着たら汗疹になりそうな素材は大の苦手。以前、せっかく麻のきものを着ているのに襦袢がポリ、という方が「きものは暑くてかなわん」とぐったりしていました。もったいない~!! わたしの場合、襦袢やインナー、白足袋も、5月から秋の彼岸近くまでずっと夏素材です

影も美しいレースの羽織

子どもの頃、母が縫ってくれたコットンレースのパーカーを水着の上から着るのが好きで、泳ぎ疲れたあとにプールサイドにしゃがんでレースのパーカーを羽織り、その影が作る景色を見るのが大好きでした。
レースの隙間の大小が揺れるのを見ながら、うとうとするのもまた、子ども心に至福の時だったように思います。泳げるようになったのは小学校5年生の夏休みでしたから、それ以降の短い記憶なのですが、レースの影はあのときから大好きです。

わたしは紗の羽織を初夏から初秋まで着ていますが、その影もまるで羽化したての蝉の羽のようで、炎天下に自分の影を見つけてはゆらゆらと裾を動かして、つい眺めてしまいます。

ところで、最近あちこちで目にして、気になっているのがレースの羽織。紗の羽織は2枚持っているのに、レースの羽織は持っていません。きっと着姿の影がレース模様になって、夏空に映えてきれいなんだろうなぁ。

十年ひと昔と言いますから、ふた昔ほど前の話になりますが、その頃わたしは近所の和裁教室に通っていました。ある日仲間のひとりが、どうしても気に入ったレースのカーテンで羽織を作りたいと言い出したのです。
なんと斬新な!わたしは目を丸くして、それいい!わたしもいつか作りたい!と感激しました。先生は「なんでも勉強よ。やってごらんなさい」とおっしゃって、わたしは出来上がっていく様子を傍らで眺めながら浴衣を縫っていたのですが、しばらくして完成した羽織は、ウエディングベールのように輝いていて、うっとりするほど麗しく、もう今日この帰り道にでもカーテン売り場に行きたい、という衝動にかられるほどでした。

でも羽織った仲間の一言は「やっと出来た!うれしい!……でも、重い!」でした。カーテン生地は厚みがあるということを、そのとき知ったのです。
あれから何年も経って、レースの羽織がすっかり商品化されているのを見ると、あのときカーテン地で作らなくてよかったな、なんて思うのです。

レースの羽織は、下に着ているきものや帯が透けて見え、なんとも涼しげ。
色も白だけでなく淡いブルーのものやアンティークレースのような淡い黄色のものまであって、一枚選ぶのに難儀するほどです。
大事なきものや帯を守る意味でも、上から一枚羽織る習慣はとってもいいこと。一般的な羽織は紅葉から桜まで、と言われますから、レースや紗の羽織はその真逆で、桜が散ってから、秋風が吹くまで、です。意外と着られる期間は長いんですよ。

帯付きでさっそうと歩くカジュアルな雰囲気もいいですが、透ける羽織を着てでかけるのも品があって素敵ですよね。紗の羽織の残布ではバッグや帯を作ってコーディネートを楽しみましたが、レースの羽織ならマスクもレースのものにしてコーディネートを楽しみたいな~。

レースのはおりもの
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