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きものにカビがつかないようにするために 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.29

きものにカビがつかないようにするために 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.29

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しかし、なぜ同じ箪笥の同じ引き出しに入っていたのに、母のきものだけカビが?理由はたとう紙でした。わたしのたとう紙は和紙製ですが、母のたとう紙は洋紙。和紙は中のきものの水分を外に出そうとしてくれますが、洋紙はまわりの水分を吸収してしまうのだそうです。

桐たんすのしまい方

親戚の葬儀のため、桐箪笥の中にしまってあった、わたしと母のそれぞれの黒紋付を出したときのことです。同じ箪笥の同じ引き出しに入っていたのに、母の黒紋付だけ白いカビが点々とついていて、まるで”酢昆布”のようになっていたのです。黒紋付を着ないわけにはいかないので、慌てて吊るして、ブラシでカビを払い、母はそれを着て葬儀に参列したのですが、カビは増えますし、他のきものにもカビがうつってしまっては困ります。同じ場所に収納するわけにはいかず、いつもわたしのきもののお手入れをしてくれる専門の方に送り、カビ抜きをしてもらいました。

しかし、なぜ同じ箪笥の同じ引き出しに入っていたのに、母のきものだけカビが?
理由はたとう紙でした。わたしのたとう紙は和紙製ですが、母のたとう紙は洋紙。和紙は中のきものの水分を外に出そうとしてくれますが、洋紙はまわりの水分を吸収してしまうのだそうです。つまり、箪笥の中の水分を、母の黒紋付のたとう紙が吸ってしまっていたということ。話を聞いて慌てて他のたとう紙がどうだったかチェックしましたが、母のきもの以外はすべて和紙でした。「黒紋付”酢昆布”事件」以来、たとう紙は和紙製のものを使っています。

桐箪笥にさえ入れれば安心、という慢心もよくなかったようです。
桐箪笥には種類があります。
引き出しを開け閉めしたときに、別の段の引き出しが動いたりして、なんとなく密封されるような感覚になるものがあります。それは、桐箪笥職人が作った桐箪笥。最高級品です。また、表面に桐材を貼っただけの桐「の」箪笥、というものも見かけます。こちらは家具職人が作った箪笥。桐箪笥職人が手掛けたかどうかで品質は大きく変わるそうです。

桐箪笥は上から順にいいものを、と教わったのですが、それは「総引き出し」(イラスト参照)の場合。観音開きの箪笥の場合は、扉を開けた分の湿気が出入りします。つまり、いいものは「引き出し部分の上から順に」。観音開きの部分にはよく使うものを入れるべきと知りました。
さらにわたしは、箪笥の中に吸湿材を入れています。日付を書いて、湿気がどのくらいで溜まるかの実験も兼ねて。きものに湿気は大敵です。

みなさんもたとう紙が和紙かどうかチェックして、吸湿材で実験してみてください。梅雨入りしている今がチャンスですよ。大事なきものを守るための、大事なお話でした。次回は、収納についてのお話の続きを、と考えています。6月18日をお楽しみに!

……と書いたところ、後日桐箪笥メーカーさんから「桐箪笥に吸湿剤は不要です」とメッセージいただきました。

桐箪笥には密封された空気を湿度60%ぐらいに保持する機能があり、吸湿剤を桐箪笥の中に入れると、中が乾き過ぎて、桐材自体の水分を箪笥の中に放出してしまうんだそうです。そうなると桐は乾いてしまうので、外部から湿気を補おうとするのだとか。吸湿剤を入れても、外部の水分を取り込むだけなんですね。
「桐箪笥の密封保護力を信じて頂きたいと思います」とのことでした。勉強になります。というわけで、桐箪笥の吸湿剤は取り除きました。クローゼットと表面だけが桐風の箪笥の中では引き続き実験中です。いつかこの桐箪笥メーカーさんに取材に行きたいなと考えています。

(2021年6月10日更新)

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