初夏のような陽気が続く、4月半ばの3日間。京都・烏丸御池の「しまだいギャラリー」にて、彩琳記念展覧会「継承と変革、創造のつづき展」が行われました。

富宏染工株式会社のつくるきものを販売・プロデュースする「彩琳株式会社」の60周年とあわせ、新社長就任記念を寿ぐ特別な展覧会。緊急事態宣言の合間を縫っての開催とあって、おだやかに、でも華やかに、きもの姿の来場者が近隣からお祝いに駆けつけます。

新社長に就任されたのは、本サイト内での連載「ひとつひとつの色をつくる 、京友禅染匠がみる景色」でもおなじみの藤井友子さん。

「ひとつひとつの色をつくる 、京友禅染匠がみる景色（全5回）」（全5回）

父である藤井寛さんから経営を引き継ぎ、ひとり娘である友子さんが代表取締役に就任されたのは、実は昨年2020年の8月25日のこと。コロナ禍まっただなかでの引き継ぎとなったため、なんと8ヶ月目にしてようやくのお披露目会だったのです。

「社長交代から半年以上経っての展示会を無事終え、ホッとしております。これからは気持ちも新たにものづくりに精進して参りたいと存じます。」

翌朝、友子さんから届いたお礼のメールには、そんな率直な一文が添えられていました。

展覧会場は、

「サスティナブル・ラグジュアリーRITOFUのお披露目」
「ロイヤルファミリーに愛された着物（初公開）」
「唯一無二の瑞雲色無垢」

の3部構成。

『RITOFU』は、現代の女性のライフスタイルによりそい、「伝統的な美意識」と「現代を生きるリアル」を兼ね備えたブランド。家業を継承すると心を決めて染匠となった友子さんが、未来志向で生み育ててこられた新しいブランドで、洋装に合わせることのできるクラッチバッグなどの小物も注目の的。

一方、このめでたき節目に初公開となった「ロイヤルファミリーに愛された着物」は、その名の通り皇室に重用されてきた、格調高き京手描き友禅の展示。先代・藤井寛さんの「瑞雲」に代表される独特の意匠をふんだんに取り入れつつも洗練された作品がずらりとならび、あまりの美しさに、何度も何度も息をのんでしまうひとときでした。
こちらに写真をお届けできないのは残念ですが、まさに、眼福！

そして、2月にスタートしたばかりの婚礼事業『OIWAI』の婚礼衣装も、めでたく展示されていました。

「手しごとから生み出される美が凝縮した作品を制作していきたいと考えています」と、友子さん。

白無垢の清廉さと色打ち掛けの華やかさをあわせ持った「瑞雲色無垢」、花嫁だけの特別な装いである「引き振袖」を中心に、オリジナル婚礼衣装のラインナップがそろいます。

鬱々とした日々が続くなか、婚礼をはじめとするお祝いの場のあり方はみな試行錯誤の連続ですが、いかなる時代であっても人生の節目を「寿ぐ心」は変わらずにもっていたいもの。

「彩琳株式会社」新社長となった染匠・藤井友子さんが継承と変革を往来しながら提案する、令和のお祝いの気持ちにふさわしい装い。ここからはじまる京手描き友禅の「つづき」から、しばらく目が離せそうにありません。

展示会撮影／スタジオヒサフジ