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”上巳の節句(桃の節句)” 女性らしくいける桃のいけばな - 嵯峨御流「はじめましょう 花であそぶ節句」vol.1

”上巳の節句(桃の節句)” 女性らしくいける桃のいけばな – 嵯峨御流「はじめましょう 花であそぶ節句」vol.1

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今回は嵯峨御流の伝書に書かれているお約束からは少し離れて、桃の花は八重咲き、そして枝にはたくさんの花芽をつけたままですが、お生花(せいか)「内用」という形の上巳の節句のいけばなを活けてみました。桃を飾るときのちょっとしたポイントも、参考にどうぞ。

いけばな嵯峨御流とは

嵯峨御流とは

「嵯峨御流」とは、大覚寺を総本山とするいけばな流派です。
嵯峨天皇が、大覚寺の大沢池で舟遊びをしていた際に、池の菊ガ島に咲く可憐な菊を手折り殿上の花瓶に挿されたこと、これが「いけばな嵯峨御流」のはじまりであると伝えられています。

特徴は…

花はより花らしく 枝はより姿の良い枝らしく 自然に咲いている頃よりも自然に美しく

こうみせるように活けること。

「いけばな」と聞くと格式が高く近寄りがたい雰囲気があるとも耳にしますが、私自身は、「よりきれいに草木を飾ろうと想い活けた花」はすべて「いけばな」と言って良いと考えています。

最近はお稽古事として「いけばな」よりも「フラワーアレンジメント」を習う方のほうが多いような気がいたします。
「いけばな」と「フラワーアレンジメント」の違いはまさに「日本文化」と「西洋文化」の違いともなりますが、基本的に「いけばな」は床の間(とこのま)に飾る文化からきています。ですので「フラワーアレンジメント」のように持ち運びはできませんし、四方八方から鑑賞するというより、正面から鑑賞するものになります。

季節とともに楽しむお花

季節の活け花

日本には四季があり、季節・節句にあわせて様々な行事や習慣があります。
いけばなををしているとその時々の行事や習慣にあわせた花の活け方などが多くあり、おのずと季節の変化や日本の伝統行事に敏感になります。

さて、3月3日は桃の節句(上巳の節句)ですね。

もともとは、年齢や性別などに関係なく、健康を祈り厄災を払うために草や藁で作った人形に穢れを移してお祓いをしていたようですが、その後「雛人形」の形になり五節句(※)のひとつと定められました。

※江戸幕府が公的な行事・祝日として定めた五つの節句。人日(1/7)上巳(3/3)端午(5/5)七夕(7/7)重陽(9/9)。

嵯峨御流の伝書の中にも「上巳の節句の花」として、桃を使った活け方が記されています。
これがなかなかややこしく、

上巳には桃の一色を挿する。
枝は桃の若葉を選び、花芽は五または七輪をおくだけとする。
花は一重を用いて八重は無用。

など、そのほかにも活け方などが難しい古語で記されています。

今回は嵯峨御流の伝書に書かれているお約束からは少し離れて、桃の花は八重咲き、そして枝にはたくさんの花芽をつけたままですが、お生花(せいか)「内用」という形の上巳の節句のいけばなを活けてみました。

※お生花(おせいか)とは、嵯峨御流のいけばな花態(かたい)のひとつです。
とても簡素な花姿ですが、その姿形は天円地方(てんえんちほう)の理にしたがって、天・地・人を表す形をしています。
基本的には一種の花材を使い三才格(さんさいかく)・五行格(ごぎょうかく)といわれる正式花態をつくります。
この正式花態以外に変化花態として、それぞれの役枝(やくえだ)を強調させた七曲(しちきょく)と呼ばれる形があります。
内用(うちよう)はそのうちのひとつとなります。

生活に取り入れるアレンジのポイント

一般のご家庭では、流儀に沿ったいけばなを活けることは滅多にないと思いますので、桃を飾るときのちょっとしたポイントをお伝えいたします。

◆桃の花について

3月3日のお雛祭りが近くなると、どこのお花屋さんでも桃の枝が売られるようになります。
くねくねと動きのある枝とは違い、桃はまっすぐに伸びる枝ものです。大きな枝の場合、案外太い枝からの脇枝のほうがまっすぐに上へ伸びていますし、小さな枝で売られている時は、まっすぐな脇枝ばかりを束ねているようです。

桃の花について

◆花器の選び方とコツ

花器の口が大きすぎるものは、枝や花がばらついてまとまりがなくなってしまいます。
花器口が大きい場合は、花器口に枝を張って花器口を区切り、片側にだけ花を入れるとまとまりやすくなります。

花器の選び方とコツ

◆活け方のポイント

桃の枝は、なるべく高さが揃わないよう、少しずつ長さを変えると変化が出ておもしろいでしょう。
桃はまっすぐな枝ではありますが粘りがありますので、曲げてやると多少は曲線を描いてくれます。曲線を出すとやわらかな印象にもなります。ただ桃の花はポロポロと落ちやすく、あまり枝を触りすぎると花芽が落ちてしまうのでお気を付けください。

活け方のポイント

◆とりあわせ

桃と一緒に他の草花を合わせる時には、桃のスラリとたラインを邪魔しないよう、花器口あたりに低く取り合わせるとバランスが良いと思います。
この時期でしたら桃と一緒に菜の花が売られていることが多いですね。
桃のピンクと菜の花の黄色は、とても春らしいとりあわせです。

桃の花のいけばなのとりあわせ

◆飾る場所

一日の気温の変化が激しいと花はダメになりやすいですので、活けた花を飾る場所としては、なるべく気温の一定した場所が望ましいです。リビングに飾る場合はエアコンの風が直接あたらない場所を選び、また温度が上がりすぎる場所は避けましょう。
こまめな水換えと、水換えをする度に少しずつ茎枝を切ってきれいな切り口にしてあげると花もちがよくなります。

桃の花を飾る場所

「花」にできること

花にできること

昨年におこったコロナ禍により、私たちの日常は大きく変化しました。
不要不急の外出制限を求められる日常で、身体や心がお疲れの方も多いと思います。

「不要不急」とされるものごとの多くは生活や生命維持に不必要とされるものですが、人が人らしく、文化的に幸せを感じられることの多くは「不要不急」であったりもします。
「いけばな」もまさに、その範疇のものと言えましょう。
それでもこのコロナ禍中において「花を飾ることで気分転換ができた」「花が気持ちを軽くしてくれた」というお話を何度も耳にしました。 

節句ごとにお届けいたしますこちらのコラムにて、「いけばな」を知っていただき、そこから花を活けることや花を触ることへの興味を持っていただき、さらには気持ちや生活に良い変化を感じていただけましたら…
とてもうれしく思います。

次回は5月、端午の節句に向けてのお花をご紹介いたします。

撮影/スタジオヒサフジ

桃の花と菜の花のいけばな01
桃の花と菜の花のいけばな02
桃の花と菜の花のいけばな03

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