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有職菓子御調進所 老松 匂い立つ『此の花』 「京都・和の菓子めぐり」vol.7

有職菓子御調進所 老松 匂い立つ『此の花』 「京都・和の菓子めぐり」vol.7

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京都最古の花街「上七軒」に店を構える「有職菓子御調進所 老松」。梅の時期には馥郁たる香りに包まれる北野天満宮の梅苑でも同店の茶菓がいただけますが、せっかくなので北野店にも足を運んでみては。思わず連れて帰りたくなる華やかで愛らしい上生菓子をご紹介します。

梅は咲いたか 桜はまだかいな––

習ったわけではないのに、こんな一節が口をついてでるくらい
陽射しが春めいてきました。

京都で梅の名所といえば、やはり北野天満宮。
梅苑の公開が2月上旬から始まっています。

北野天満宮の梅苑

「有職菓子御調進所 老松」の北野店は北野天満宮東門からすぐ。
芸舞妓さんが行き交う、着物の似合うまち「上七軒(かみしちけん)」にあります。

老松店内

京都で最古の花街と謳われる上七軒は祇園甲部、祇園東、先斗町、宮川町と並ぶ京都の花街の一つで、室町時代に北野天満宮再建の際の残木で建てた7軒の茶屋が起源と伝わっています。

老松外観

菅原道真の家臣・島田忠臣を祀る北野天満宮の第一摂社、老松社にその名を由来する同店。創業は明治ですが、菓子づくりの歴史はさらに古く、公家にルーツを持つ祖先は朝廷の儀式に使われる菓子や神饌などを調製していたといわれています。

代表銘菓『御所車』や『夏柑糖』のほか、茶席菓子、婚礼菓子などを手がける老舗の名店です。

老松の代表銘菓『御所車』

白い暖簾をくぐり店内に入ると、この季節はやはり北野の梅にちなんだ生菓子に心を奪われます。

老松内観

中でもひときわ華やかで愛らしいのが、きんとん製の『此の花』。
此の花とは梅の花に対してのみ使われる別名です。

きんとん製『此の花』

一輪の花の中で紅白に咲き分ける「思いのまま」や、枝ごとに紅白で咲き分ける「源平咲き分け」なども北野天満宮の梅苑に植わっているので、ぜひ見つけてみてください。
和菓子では濃い色が右側にくるのが通例だそうですが、自然界の咲き分けはそれこそ思いのままかもしれませんね。

「『此の花』の材料は揃っているので、30秒ほどで作れますよ」とのお言葉に甘えて、工房を見学させていただきました。

老松作業風景

つくね芋と白あんを半々に混ぜた生地を籐(とう)素材でできた「通し」と呼ばれる漉し器でそぼろ状にします。

あとは芯となるこしあん玉にそぼろ状のあんを咲き分けになるように、まあるく乗せていくのですが、

手数が少ないからこそ、手直しがきかない難しさ。
それを少しも感じさせない職人技に惚れ惚れします。

老松作業風景
できたての『此の花』

古くから梅は特にその香り、匂いが好まれてきた花ですが、もともと「におい」とは視覚的な感覚を表す言葉だったことが偲ばれる、まさに匂い立つような仕上がりです。

ご自宅や大切な方に、春の一枝、一輪を和菓子の姿で運んでみませんか。
梅苑の馥郁たる匂いを思い起こしながら、お茶にいたしましょう。

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