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立春:春の気配が感じられるようになる、暦の上での春のはじまり! 「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

立春:春の気配が感じられるようになる、暦の上での春のはじまり! 「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

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立春は「正月節気」ともいわれ、旧暦のお正月であり四季としては春のスタートです。一年のはじまりを祝うコーディネートのテーマは「立春大吉(りっしゅんだいきち)」。新暦のお正月は着物に袖を通すことができなった方も、立春に着物を着て春の到来を感じてみませんか。

(1) 二十四節気とは

「二十四節気」とは、旧暦(太陰太陽暦)における太陽暦であり、2月4日の「立春」を起点に1年を24等分し約15日ごとの季節に分けたもので、いわゆる「暦の上では…」のもとになっているものです。

どこかで見聞きしているものの、いまひとつなじみがないというあなたにこそ知ってほしい「二十四節気」。

いにしえの知恵「二十四節気」に親しむことで、

□ 季節を感じる感覚が豊かになる
□ 着物コーディネートが上手になる
□ 着物を着る機会が増える

こんな素敵な毎日がはじまりますよ。

月2回アップするこちらの連載で「旧暦着物美人」をめざしてみませんか。

(2)「立春(りっしゅん)」とは

さて、今回訪れる節気は、二十四節気のはじまり、立春(りっしゅん)。
春の気配が初めて感じられるようになる時期で、暦の上での春のはじまりです。

旧暦の太陰暦では一月・二月・三月、二十四節気(旧暦の太陽暦)では「立春」から「立夏」の前日までの約90日が「春」です。
「立春」から約90日後に「立夏」、約180日後に「立秋」、約270日後に「立冬」を迎え、四季を一巡します。

立春の前日の「節分」に豆まきをして鬼を追い払い福を呼び込む行事はおなじみですが、豆まきで一年の厄を落とした翌日、新しい一年を迎えた立春の早朝に、厄除けのために家の入口に「立春大吉」と書いた紙を貼る習慣もあります。

この文字は、縦書きすると表裏・左右対称になることから、出入り口を探す魔物の混乱を誘い、侵入を防ぐ効果があると言い伝えられ、「今年も一年無事に過ごせますように」という願いを込めて行うそうです。

今回はそんないわれにちなんで、旧暦の一年のはじまりが大吉であるようにと考えたアンティーク着物をご紹介します。

(3)「立春」のアンティーク着物コーディネート

立春のアンティーク着物コーディネート

◎ 着物…綸子地 鶯色 梅と万年青文様 小紋(袷)
◎ 帯…塩瀬黒地 白梅・竹・猫柳・椿文様 名古屋帯 
◎ 帯留…陶器製 鈴図帯留
◎ 半襟…縮緬地 鳥居と雪持ち梅の刺繍半襟
◎ 帯揚げ…綸子地 真紅に白梅輪出し 
◎ 履物…黒エナメル台 赤字に花刺繍鼻緒
◎ バッグ…黒地に桜文様

二十四節気の最初の節気「立春」。

「正月節気」ともいわれ、旧暦でのお正月であり、四季としては「春」のスタートです。

一年のはじまりを祝うコーディネートのテーマは、「立春大吉(りっしゅんだいきち)」。

着物の鶯色の綸子地に描かれているのは、「梅」と「万年青(おもと)」という植物です。
「梅」は厳しい冬を耐え百花に先駆けて咲くので、別名「春告草(はるつげぐさ)」と呼ばれてい ます。
また「梅」は読みの音から「産め」に通じるため、繁栄を象徴する花としても好まれていますね。

「万年青(おもと)」はその漢字があらわすとおり、 万年「青」という表記から、松などと同じく、常緑の植物として縁起が良いとされてきました。

明治時代はこの「万年青」の植木の品評会がさかんに行われ、株や金の取り引きのように相場がどんどん上がり「万年青成金(おもとなりきん)」まで登場した、という歴史をもつ植物です。

この着物のおもしろさは、地色が「鶯色」というところ、「鶯」を描かずに「梅に鶯」を一枚の着物に表現しているところに奥ゆかしさと洒落心を感じます。
写真には写っていませんが、八掛も「鶯色」です。

かつてこの着物を誂えた人はそのことを承知で洒落心を重ねたのだと思うと…アンティーク着物は学びの宝庫、工夫の宝庫だと感心します。

「立春 大吉」がテーマのコーディネート
垂れの部分に「白梅」 の一枝が刺繍されている帯

帯は塩瀬地に「椿」「竹」「猫柳」そして「白梅」が刺繍されたもので、猫柳のふわふわした質感に、厳しい冬の寒さの中に芽吹こうとする春の息吹を感じます。
銀座結びに結んだ垂れの部分にも「白梅」 の一枝が刺繍されていて、一枚の構図として完成された印象の黒の帯は、膨張色の黄色を引き締めてくれる役割もあります。

(4)「立春」の小物合わせ

新春のおめでたさを感じさせるセレクト

小物は新春のおめでたさを感じさせるセレクトに。

帯揚げは、綸子の真紅地に白梅を絞り出した「輪(りん)出し」を選んでみました。
「輪」とはしぼり柄の外枠のことです。

輪出しの帯揚げは、京都の花街の芸妓さんたちが愛用していることで知られる、全体が白地で梅や桔梗の形にくくった部分を赤く染めたものが一般的ですが、この帯揚げは全体を真紅で染め、絞った部分を染め残しで「白梅」柄に仕上げた珍しいタイプです。

着物の紅梅、帯の白梅、それらをつなぐ真紅に白梅の帯揚げ。
よく見えるように、着つけの際には帯揚げを多めにのぞかせてみました。
着物のコーディネートは、この「白梅」と「紅梅」のように、季節の花の色を差し色にもってくると不思議なくらいに収まりがよくなります。

「鈴の音がよく鳴る」ことから「今年もよくなりますように」の想いを込めて

さて、帯留は「節気正月」にちなんで旧暦新年の初詣をイメージし、陶器製の「鈴」の形をあしらってみました。

神社の正殿に据えられた鈴は、その清々しい音色で参拝者を敬虔な気持ちにするとともに、参拝者を祓い清め、神霊の発動を願うものと考えられています。
その「鈴の音がよく鳴る」ことから「今年もよくなりますように」の想いを込めて。

またその日会う相手が「鈴木さん」なら、「あなたのためにこの鈴の帯留を選んできました」と相手への想いをコーディネートに託してもステキですね。
そんな遊び心も、着物のひそかな楽しみです。

雪持ち梅と神社の鳥居の刺繍が施された刺繍

半襟は、雪持ち梅と神社の鳥居の刺繍が施されたものです。
連なる鳥居は稲荷神社。

「立春」の後に訪れる「午」の日は「初午」といって、稲荷神社のお祭の日にあたります。
旧暦の初詣・初午と、年の初めの祈りをこめた着物姿で装いでお参りすれば、今年もきっとよい年になりそうです。

バッグには、一足早く桜の柄を取り入れて、

〽 梅は咲いたか 桜はまだかいな

と、江戸の端唄(はうた)がロをついて出てきそうな「立春大吉」のコーディネートにまとめました。

江戸の端唄がロをついて出てきそうな桜の柄のバッグ

(5)「立春」のモチーフ

明治六年に暦を新暦に変更するまでは、節分の日が冬と春の分かれ目で、この日が年越しと考えられていました。
新暦のお正月は何かと気ぜわしく、着物に袖を通すことができなった方も、立春に着物を着て春の到来を感じてみませんか。

冬の名残と春の訪れ…
移り行く季節を感じさせるモチーフで、ステキなお洒落をお楽しみください。

本来は「季節を分ける」という意味だった「節分」といえば、 「今年もまめ(健康)でありますように」と「魔」を「滅する」語呂合わせで「豆」が用いられます。
その豆を入れる「福舛(ふくます)」は、「福」が「増す」といわれる縁起物です。

「福は内、鬼は外」の掛け声をイメージした「おかめ」(関西では「おふく」とも)や「鬼」も、ユーモラスなモチーフで立春前後にはぴったりです。

松竹梅で楽しんだ「梅」を単品であしらって

植物では、お正月には松竹梅で楽しんだ「梅」を単品であしらって、気品ある装いに。

「梅」といえばつきものの若緑色が美しい「鶯」、 早春の光を浴びて銀色に輝くふわふわの猫のしっぽのような「猫柳」。
さらに猫といえば、春の日差しとともに相手を探す猫の声がにぎやかになってくる季節をあらわした春の季語「猫の恋」にちなんだ「猫」文様。
そして立春近くに訪れる稲荷神社のお祭りの日「初午」に関わる「鳥居」「狐」など…

「立春」は、厳寒の冬を越えようやく迎える春を表現するモチーフで、着物コーディネートをお楽しみください。

着物に親しむことで、身の回りにある植物や花、などを自然と再発見できるのも、装いの恩恵のひとつです。
自然や季節との調和した着物姿は、着る人をより美しく見せてくれることでしょう。

(6)「立春」の着物スタイルをイメージする

自然と調和した素敵なコーディネートを

暗く重たい冬空から、明るい陽光がほんのりと感じられるようになる「立春」。
この時期は、ふんわりとやわらかい色を求める心持ちになります。

淡い紅色、藤色、萌黄色、黄色…

自然界でもまず、黄色の福寿草や萌黄色の蕗の薹(ふきのとう)、白い水仙や梅、猫柳、そして淡い紫色の菫などの花が緑葉に先駆けて顔を出します。

モノトーンの街並みを、そんな春の風景を先どりした優しい色合いの着物姿のあなたが歩いていたら…どんなに魅力的に映ることでしょう。
身体をほっこり包んでくれる真綿紬・シボの高い縮緬など、ふっくらした質感の絹は見た目にもあたたかく、春の訪れをより印象づけてくれます。

暦の上での春のスタート「立春」はどんな着物スタイルで楽しみたいか、心に思い浮かべるイメージをカレンダーや手帳にメモしてみましょう。
無地や縞・格子の着物に節気のモチーフをひとつ取り入れるだけで、自然と調和したステキなコーディネートになりますよ。

一年で二十四回、二週間ごとに着物に親しむ、あなただけの「二十四節気の着物スタイル」をお楽しみください。

次回は2月18日に訪れる「雨水」についてお話しします。
前日17日の配信を楽しみにお待ちくださいね!

『旧暦で楽しむ着物スタイル』河出書房新社
 

※写真はさとうめぐみ著『旧暦で楽しむ着物スタイル』(河出書房新社)より。

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