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非日常にも日常のひとコマにも 「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –

非日常にも日常のひとコマにも 「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –

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着物仲間で集う機会ではない時に、個々がそれぞれ着物で出かける最初に感じる不安や恐れは、体験していくことでしかなくなることはありません。その中で、「あ、意外と大丈夫だったな」という安心感が次に繋がっていくのです。

12月というだけで、つい、せわしない感覚になるのは「師走」という言葉のイメージが強く刷り込まれているからではないでしょうか。

スケジュール帳を開き、他の月とあまり変わらない黒さを確認したあとで、焦る気持ちを落ちつかせようとコーヒーカップに手を伸ばしています。

師走

とうとう12月、2020年最後の月

とうとう12月。
新型ウィルスに翻弄された2020年、最後の月となりました。

「海外暮らし」で一時帰国をしない、できない、予定が立てられない体験は初めてで、最初の頃は不安や戸惑いだらけでしたが、日が経つにつれ、静かに受け入れ現状が良くなるのをひたすら待ちながら、日常を送ってきました。

が、日々入ってくる日本の感染者数の増加と、欧州のロックダウンのニュースに、それまで密かに抱いていた「1年か2年の間には収束して日本に帰れるかも、海外に行けるかも」という希望も打ち砕かれ…
やはりこれからも3年、または5年くらいは今の場所から動けないのではないかと、諦めの境地に達しつつあります。

台湾でも12月からは防疫対策が強化されました。
いっとき、マスクなしで集えたり、日常生活を今まで通りに送れていた時期があっただけに、残念な思いとともに気持ちが引き締まります。

どうかみなさまも十分にお気をつけください。

そんな中でしたが先日、台北アリーナで開催されていたブロードウェイの人気ミュージカル『オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)』の台湾公演(全22回)千秋楽を観に行ってまいりました。

コロナ禍中で、世界で唯一予定通りに行われる公演ということで、出演者のみなさまは米国、英国、韓国などから来台し、14日間の隔離と、その後2回のPCR検査で陰性となったことを経て初日を迎えたのでした。

「オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)

マスクをしての鑑賞となりましたが、舞台が生で観られる感激もあいまって、感動もひとしお。

最後のカーテンコールでは、アリーナ3階まで満席の観客が携帯電話のライトを一斉につけるサプライズがあり…それはそれは美しい光景でした。
私も光る携帯を振りながら、感謝の思いなどが一気にあふれてきて涙が止まりませんでした。

その日は、日中に茶道稽古があったのと、天気も雨予報だったのとで、地味ないでたちとなりましたが、劇場に着物姿で行くのはおめかし感もでるので、できるだけ着ていくようにしています。

日常の中のちょっとした非日常的な行動や体験は、ほどよい緊張感が刺激を与えてくれます。

舞台芸術の華やかさや、目に飛び込んでくるパフォーマンス、耳に響く音は、縮んでいた心をゆっくりと溶かし広げてくれる感じがして、私はそういう時間がとても好きだと再確認できた良い時間でした。

着物も私にとっては、非日常感を出してくれる時もあれば、もっと普段に日常になじむものであってほしい気持ちもあり、特別と普通の間を行き来し繋いでくれているものなのかもしれません。

夢のような時間が終わると一気に現実に引き戻されますね。
12月に入り、時だけは着々と刻まれていることを実感せざるを得ません。

ロバート・インディアナ氏のパブリックアート作品の前で

アメリカ人の芸術家ロバート・インディアナ氏のパブリックアート作品の前で。

新宿にもありますね。
台北101の横の広場にも設置されています。
その他ニューヨーク(アメリカ)オーチャード(シンガポール)、バレンシア(スペイン)、バンクーバー(カナダ)など、世界に向けて平和と共栄の祈りを捧げたものだそうです。

私も台湾から祈ります。

台湾のクリスマス

台湾の12月は日本人の考える年末ではありません。
というのも中華圏の新年は旧暦・春節だからです。
(来年は偶然1月1日から3日まで連休ですが、お正月という理由ではなく、開国記念日と、土日が重なるためです。)

来年の春節は2月10日(元旦にあたる日)で、16日まで7連休となります。

台北信義区BELLAVITAのイルミネーション
台北信義区BELLAVITA・FBページより

旅行好きで知られる台湾人のみなさまですが、引き続き、その行き先は国内に限られそうです。
そして「旅行のための出費を惜しまないこと」が特徴だそう。
四つ星と五つ星クラスの観光ホテルが最も人気があるようです。

いずれにせよ、年末年始感が街中や人々の意識に出るのは1月終盤。
クリスマスツリーが撤去されると門松やお正月飾りが並ぶ日本が、本当になつかしいです。

中山駅前のツリー

台湾のクリスマスは、一応日本っぽい「形だけクリスマス」に準じています。
街にはイルミネーション。
クリスマスツリーが設置されて、商業施設にもクリスマスソングが流れ出します。

ただし日本とは違い、KFC(ケンタッキーフライドチキン)に長蛇の列ができたり、恋人との勝負日だとあおることはなく、普通に家族と過ごしたり、友人同士でカラオケに行く程度で、25日過ぎのクリスマスケーキの大量安売りも見られません。

車にプレゼント

私は昭和40年代生まれの、バブルの最後の洗礼をうけたバリバリの日本人ですから、KFCとクリスマスケーキ、そしてプレゼントはかかせません!(笑)

もちろん、着物仲間のみなさまと「クリスマスコーディネート」にて集まる計画も。
12月の楽しみのひとつになっています。

着物×クリスマス

クリスマスの雰囲気の置きコーデ

着物でのクリスマスコーディネートというと、まず緑と赤、赤と白、などという定番カラーが思い浮かびます。
緑や赤の着物や帯があれば、なんとなくクリスマスの雰囲気がでますね。

でも、手持ちの着物や帯に赤や緑のものがない、またはクリスマスっぽい小物もないという方々もご安心を。
「コーディネートに自分で意味を持たせる」と、人に説明するのがぐっと楽しくなりますよ。

例えば、「ホワイトクリスマス」のイメージで白い着物のワントーンコーデや、シルバーを用いた大人っぽいコーディネートはいかがでしょうか?

雪の女王様、雪の妖精、氷の精などになりきる気分で。

ホワイトクリスマスコーデ
ぼかしやあられなどを雪に見立てるのも良いですね!

逆に、黒い着物にぼかしやあられなどを雪に見立てる、というのも良いでしょう。

またブルーも、今はクリスマスイルミネーションなどでも多用されていて、数年前には冬にブルーは寒々しいなと感じたものですが、今ではすっかり慣れました。
それどころか、キンと冷えた空気を感じさせてくれて、なかなか雰囲気が良いなと思うようにもなりました。

そういえば大ヒットしたディズニー映画『Frozen(アナと雪の女王)』の「エルサ」も青や水色のドレスが多かったですよね。
ブルーをコーディネートの主役にするのも、人と違って注目を集めそうですね。

ブルーを主役にコーディネートするのも注目を集めそう!
プレゼントの包装紙の様な帯

ツリーの下に置かれたプレゼントのイメージで、カラフルなパッケージを意識したポップなコーディネートも素敵です。

日本ではなかなか外出も難しい時期かとは思いますが、ご自宅でも少し意識してコーディネートを組み立てると、誰に見せるのでもなくとも、楽しい気分になれるのでおすすめです。

少し意識してコーディネートしてみると、楽しい気分になれます

海外で着物

着付け教室の様子

台湾、台北で始めた着付け講座もおかげさまでコンスタントに生徒さんたちにご利用いただけています。

私の台湾での着付け講座は、基本的に普段着物の着付けをレッスンしています。
礼装着付けのメニューはオプションとなり、必要な方のみ、必要な時期に合わせてお受けしています。
なぜなら私の着付け講座は「通う」のが目的ではなく、「着物を着て出かける」を目的にしているからです。

今日着る洋服を選ぶように、着物もワードローブの選択肢のひとつにし、気軽にその日の気分で纏っていただきたいからです。

基本をおさえながら大事にしているのは、ただ綺麗に着付けることだけではなく、着て出かけた先で崩れても直せること。

手順どおりに意識しながら着付ければ、よほど激しい動きをしない限りほぼ着崩れたりはしませんが、この布がどこに繋がっているのか、この紐をなぜそこにかけるのか、という意味を理解していただけるように心がけています。

そしてその人に合った着心地の良さも、ご一緒に考えます。
窮屈で大変だと、着物を着るのを躊躇してしまいますからね。

とはいえ、洋服のワンピースをさらっとかぶるよりはずっと手順の多い着物着付け。
「面倒くさい」ことは否めません。
それでも果敢にも着物を着て「お出かけ」をするようになった生徒さんたち。
人にもよりますが、だいたい2回ほどレッスンを受けたあと、外に飛び出して下さる方々が多いです。(笑)

着物仲間で着物を着て集う機会ではない時に、個々がそれぞれ着物で出かける最初に感じる不安や恐れは、体験していくことでしかなくなることはありません。
その中で、「あ、意外と大丈夫だったな」という安心感が次に繋がっていくのです。

着付け講座の生徒さんたち
着付け講座の生徒さんたち

そのちょっとずつの勇気を出して、着物を着て出歩き始めた生徒さんたちを尊敬しますし、ありがたく、またほほえましく眺めています。

海外で着物を着る時に気をつけることは、以前のコラム(『オトナの夏着物 装いに涼をあらわす』)でも書きましたが、台湾では比較的安心して着物を着ることができます。
他人の着るものを気にされないか、喜ばれる方のほうが多いので、幸せなことだと思っています。

台湾でも着物を着て出歩く人が増えています。

「日本人が着物を着ているのは当たり前」
台湾の方々がそんなふうに感じてくださっているのも、ラッキーなことです。

着物を着て出歩く人が増え、それを目にした人のなんらかのハードルが下がり、「あ、私も着物着てみよう」に繋がっているのを感じています。
そして、いよいよそれは日本通や台湾人の着物好きの方々の中にもじわっと染み込みだしたようにも見えます。

今までも台湾人でありながら着物を着る方々は、他の国よりは多い印象でしたが、それはイベントや着物を着る職業や、習い事をされている方が圧倒的に多かったのです。
が、普段に着物を着たいというお問い合わせが、台湾人の方々からもちらほらと入るようになってきました。

思いがけず、流れに乗るようにして始めた台湾台北での着付け講座ですが…
流れがあるうちは身をまかせ、どこへ辿り着くのか、どんな景色を見せてもらえるのか楽しみながら継続していこうと思っています。

読者のみなさまと、次にこちらでお目にかかるのは新たな年ですね。
素敵なクリスマス、年末年始をお迎え下さい。

素敵なクリスマス、年末年始をお迎えください!

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