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特別対談「美しい所作の効能」 東京KITTE展示会イベントレポート

『美しいキモノ』特別講演・対談「美しい所作の効能」 東京KITTE展示会2020イベントレポート vol.1

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7月に東京丸の内KITTEにおいて開催された「京都きもの市場 日本最大級きもの展示会」。今回は“お楽しみイベント”として企画された13もの催しのなかから雑誌『美しいキモノ』新編集長と特別ゲストによる対談「美しい所作の効能」をレポートいたします。

美しい所作の効能

今年で第5回目を迎えたというこの「京都きもの市場・東京KITTE展示会」。
日本最大級というだけあって、会場では日替わりで13もの催しが企画されていました。恒例となっているもの、今年ならではのもの、と様々あり…どちらに参加させていただこうかと迷ってしまうほど。

今回はそのなかから、雑誌『美しいキモノ』の新編集長と、特別ゲストによる対談「美しい所作の効能」に参加してまいりました!

ステキなお品の並べられたイベントスペースでまず目にとまったのが…

イベントスペースの美しい着物と帯

こちらの帯!
QRコード柄とはイマドキですね!

なんと実際に読み取ることのできる本物のQRコードで、このWebメディア「きものと」のTOPページが出てまいりましたよ。ちなみに前帯は、Facebookやインスタグラム・Twitterなどの各種SNSでした!
遊び心満載ですね♡

講座内ではクラッチバッグの持ち方にも触れられるとあり、イベントスペースにはすでにステキなお品も並べられておりました。ローズカラーでも有名な「衿秀」さんのものとのこと。スタイリッシュですね!

華道「専正池坊」煎茶道「日本礼道小笠原流」副家元諸泉聡子先生

さて今回の特別対談、スペシャルゲストとして招かれたのは、華道「専正池坊」・煎茶道「日本礼道小笠原流」副家元の諸泉聡子先生。
幼い頃からお祖母様・お母様のもとでお花や煎茶・礼法を学び、山村流の舞踏でも着物に親しんでこられた方です。

このような和の道のスペシャリストから直々に学べるという機会、とてもありがたく思いました。

撫子きものと朱地貝名古屋帯
貝に施された刺繍の帯

先生のこの日の装いは…

・紋紗薄朱地ぼかし撫子きもの
・塩瀬絽朱地貝名古屋帯

先生の優しいお目元の笑みを引き立てるふんわりとしたコーディネートが、所作を学ぶという緊張感を和らげてくれました。
貝に施された刺繍のなんと可愛らしくお上品なこと!

そしてもうおひとかたは、みなさまご存知の雑誌『美しいキモノ』西原史編集長。
『婦人画報』『Richesse』二誌兼任のラグジュアリーメディアグループ・シニアエディターを経て、2018年『婦人画報』副編集長、今年2020年に『美しいキモノ』編集長に就任されたとのこと。

武者小路千家のお茶も嗜まれるそうで、大和撫子なキャリアウーマンでいらっしゃいます。

人間国宝小宮康孝氏の江戸小紋とピンクの帯
まろやかなモーヴピンクの帯

西原編集長の装いは…

・人間国宝 小宮康孝氏の両面染め江戸小紋
・ 表…両子持ち立涌、裏…流水

なんとも贅沢なお染め付けの着物に、まろやかなモーヴピンクの帯。
“美しいキモノの編集長”というイメージにぴったりな、お品の良いコーディネートでステキですね!

「美しい所作の効能」と題して行われた今回の対談、先ずは礼法の心構えについてのお話しからスタート。

美しい所作の効能の対談スタート

西原編集長ー

「今日はみなさまと一緒に、美しい所作のプロフェッショナルでいらっしゃいます諸泉先生より、様々な美のエッセンスを頂戴したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。まずは、美しい所作と着物との関係性についてお伺いしたいのですが。」

諸泉先生ー 

「美しい姿勢でいますと、着物に余計なシワがよりません。お召しになっている着物の美しさがさらに引き立ちますし、ご自身もより一層美しく輝くという効能がございます。また背筋を伸ばし、ゆったりとした動作を心がけることで、エレガントに見えますし、多少緊張していても気持ちが落ち着き、内面が整うという効能もございます。所作は外見と内面の両方を整えてくれます。」

西原編集長ー 

「今日いらしているみなさまは、お着物のすばらしさをよくご存知の方々かと思いますが、美しい所作となると、どうだったかな?と思うこともあるかと思います。着物の美しさを何倍にもしてくれるのが所作ではないかと思いますので、おでかけする機会の減ったいま、おうちで練習してみるのもステキな時間の使い方なのではないでしょうか。ここからは実践編として、実際に練習してみてはいかがでしょう。」

ここからは実践編として、実際に練習
これが基本の立ち姿

諸泉先生ー 

「そうですね。ではみなさまにはお立ちいただいて、先ずは基本の立ち方からやってみましょうか。」

「肩は肩甲骨を意識して広げます。やり過ぎるくらいでちょうどよいかと思います。

爪先をやや内側になりますようにそろえて、片足を少し下げます。
そして膝と膝の間が触れているようにいたします。
そうしますと、おはしょりから下が締まって見えます。

これが基本の立ち姿となります。よろしいでしょうか?

手は親指、小指がやや内加減になるようにしますとふっくらします。
腿の中心よりもやや外側に置くようにします。

みなさんとっても美しいですね!鏡でご覧になったら、違いがはっきりわかると思います。
全ての基本は立ち方にございます。」

西原編集長ー 

「他に基本的なこととして大切なことはありますでしょうか?」

諸泉先生ー 

「笑顔ですね!最近はみなさまマスクをつけておりますので、気がゆるみがちで、マスクの内側は険しい表情になっているのではないでしょうか?私も気がつくと真顔になりがちですので、意識して笑顔になるようにしておりまして、”キィウィ”という言葉を用いて口角をキュと上げております。」

西原編集長ー 
「口角を上げると目元にも笑みが宿るといいますか、優しい表情になりますね。」

諸泉先生ー 
「年齢も10歳は若返りますので、ぜひお試し下さい。
笑顔のほかには、指先にも意識を向けていますととても優雅に見えます。物を取る時などは指先をそろえると、よろしいかと思います。」

西原編集長ー 

「では続いて、お辞儀についても教えていただけますでしょうか。三つのお辞儀があると伺っておりますが。」

三つのお辞儀

諸泉先生ー 

「お辞儀は”真・行・草”とございまして、一番正式なお辞儀が”真”。目上の方の送り迎えですとか、お礼やお詫びをする時に使います。”行”が日常のご挨拶など、普段使いのお辞儀となります。”草”は会釈程度。”恐れ入ります”というようなちょっとした時に使います。」

西原編集長ー

「では実際に“真”のお辞儀から教えていただけますか?」

諸泉先生ー 

「はい。ではまず最初にお教えした基本のきちっとした立ち方から。背筋を伸ばして、腰から頭の先まで真っ直ぐに45度くらい倒しまして、1メートルほど先を見ます。倒してからひと呼吸おいて身体を起こしましょう。首だけを曲げないようにして下さいね。下げる時よりも上げる時の方をゆっくりと。みなさま笑顔もお忘れなく!」

西原編集長ー 

「お辞儀とご挨拶の言葉は、どのように合わせたらよろしいのでしょうか。」

諸泉先生ー 

「”申し訳ございませんでした”といったお詫びのように、ご自分だけがお辞儀をするといった場合、先に言葉をお伝えしてからなさると良いと思います。お相手もお辞儀をする場合は、お相手のタイミングを見ながら、臨機応変に合わせられると良いですね。」

辞儀とご挨拶

諸泉先生ー 

「続いて“行”のお辞儀ですが、こちらは30度くらい。少し浅いぶん、目線は2メートルくらい先を見ます。首をまっすぐに保つことを意識すると、綺麗に上体を倒していくことができますよ。
“草”は会釈程度ですので、ちょっとでしょと思われるかもしれませんが、浅くてもきちんとされるととても綺麗に見えるお辞儀です。角度は15度くらい、目線は3メートルほど先にと心がけると良いかと思います。」

西原編集長ー 
「ではもう一つの基本動作であります、座り方についても教えていただけますでしょうか。」

座り方

諸泉先生ー 

「座ります時には、椅子の左側から入り、左側へ出るというのが基本ではありますが、こちらも臨機応変に。まず右足を半歩引いて、右手で椅子を確認しながら、上体を倒し過ぎないように座りましょう。手は腿の上で重ねます。浅めに腰掛けますと、身体がまっすぐになります。みなさま綺麗に座れましたね!」

「立つ時には右足を半歩下げ、左手を腿の上に置いたまま、右手で椅子を確認しながらゆっくりと立ちます。引いた右足を左足にそろえるのもお忘れなく。」

バッグの持ち方

西原編集長ー 

「では読者のみなさまからもよく迷うとお声をいただく、バッグの持ち方なども教えていただけますでしょうか。」

諸泉先生ー 

「手持ちのバッグですが、基本的には左手に持ちます。階段の上り下りの際などでは、上前と下前の褄を軽く引き上げますので、右手をフリーにしておきますとよろしいかと思います。
バッグが重い時にはどうしても利き手に持ちがちですので、こちらも臨機応変に。立食のパーティーなどでは左手首で持つようにしますと、お皿も持てますし、優雅に見えます。」

「クラッチバッグといった持ち手のないものは、手のひらで底を持つと安定して良いかと思います。裏面に指先がくるようにいたしますと表を汚すのを防げます。
補足ですけれども、小さな手持ちバッグは背もたれに、大きな物でしたら床に置くのがよろしいかと思います。お着物を傷めないようにと心がけますと、大抵の動作は綺麗になりますので、意識なさってみて下さい。」

クラッチバッグの持ち方

西原編集長ー 

「車の乗り方についても教えていただけますか。なかなかスマートに乗れないといったお声もよく聞きます。」

諸泉先生ー 

「まず先に荷物を乗せていただいてから、浅くシートの端に腰をかけます。そうしてから両足をそろえ、腰を支点にクルッと入られると良いかと思います。最近はボックス型のタクシーなどもごさいますので、その場合にはしっかりと褄を持ち、髪型を守りながら入られて下さい。
ここで申し上げておきたいのが、乗る時も降りる時も両足をそろえておきますと、着物の乱れが少なくてすみます。みなさま覚えておいていただければと思います。」

西原編集長ー 

「最後に、お食事の時に関しまして質問させていただきます。ナプキンの使い方についてアドバイスをいただけますでしょうか。」

お食事に関しての質問

諸泉先生ー 

「実はわたくしの祖母が、『美しいキモノ』にもよく寄稿されていた木村孝先生と大親友だったのですが、木村先生は”昔はナプキンなどなかったのだから、好きなように使ってよろしい!”とおっしゃっておりました。ですので、スープなど汁気のある物をいただく時は、胸元にあてても良いですし、帯にはさんでもよろしいのではないでしょうか。
ですが晩餐会といった正式な場では、膝の上に敷かれておくのがスマートかなと思います。」

西原編集長ー 

「乾杯の時に注意すべき点などはございますか?」

諸泉先生ー 

「グラスを取る時に着物の袖がお皿に触れないように、反対の手で袂(たもと)を押さえながら取るようにいたしましょう。またグラスをあごから鼻先あたりの位置でお持ちになると、綺麗に見えるのではないでしょうか。
ついグラスどうしを合わせたくなるかもしれませんが、こぼしたりと粗相の元にもなりますので、軽くグラスを上げる程度になさって下さい。」

諸泉先生と西原編集長の対談終了

西原編集長ー 

「40分という限られた時間ではありましたが、今日は大変多くの学びを得ることができました。誠にありがとうございました。」

諸泉先生ー 

「ではせっかくですので、今日学んでいただいたご挨拶で締めくくりましょうか。みなさまありがとうございました!」

佇まいに“美しい日本”が凝縮されているようなおふたり。
お稽古を重ねてきた諸泉先生、キャリアを積まれてきた西原編集長と、芯の強さといったものも着姿にあらわれていました。

この日学んだお作法とともに、目に焼き付けたお二人の着姿を参考に、私も“きもの美人”を目指したいと思います。

諸泉先生、西原編集長、ご一緒させていただいたみなさま、学びのひとときをありがとうございました!

レポーター/池田千恵里

趣味は書くこと!という着物愛好家。国内外において着物PRの経験を持つ。英国駐在時には着物でのお出掛けを常とし、自身の着姿をSNSやYouTube 等でも発信。また、ロンドンで着物ファッションショーを開催するなど、和装のPRに務めている。

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