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芒種:青空に映える大胆な着物の季節!「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

芒種:青空に映える大胆な着物の季節!「二十四節気で楽しむ着物スタイル」

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新暦での衣替えも済んだ「芒種」の時期は、大手を振って単衣が着られる時期です。 梅雨入り前のこのころ、旧暦でいうところの「五月晴れ」の空を飛び回るのは燕(ツバメ)たち。稲作の害虫を食べる益鳥として大切にされてきた燕は、かいがいしく子育てをすることから「燕が巣をかけた家は繁栄する」といわれ、子孫繁栄の象徴といわれています。

(1) 二十四節気とは

「二十四節気」とは、旧暦(太陰太陽暦)における太陽暦であり、2月4日の「立春」を起点に1年を24等分し約15日ごとの季節に分けたもので、いわゆる「暦の上では…」のもとになっているものです。

どこかで見聞きしているものの、いまひとつなじみがない
というあなたにこそ知ってほしい「二十四節気」。

いにしえの知恵「二十四節気」に親しむことで、

□ 季節を感じる感覚が豊かになる
□ 着物コーディネートが上手になる
□ 着物を着る機会が増える

こんな素敵な毎日がはじまりますよ。

月2回アップするこちらの連載で「旧暦着物美人」をめざしてみませんか。

(2)「芒種(ぼうしゅ)」とは

さて、明日訪れる九番目の節気は、

芒種(ぼうしゅ)

「稲など禾偏(のぎへん)のつく穀物の種を蒔く時期」という意味です。

「芒(のぎ)」とは、イネ科の植物の穂先の細い毛のような部分のことで、もともとは麦のことを指していました。

まずは麦秋を迎えた麦を刈り、その後に稲を植える…
そして養蚕農家は田植えが終わった後に、春蚕(はるご)から糸を紡ぐ作業をはじめます。
こんなふうに芒種は農作業の順番を教えてくれている節気なのです。

(3)「芒種」のアンティーク着物コーディネート

新暦での衣替えも済んだ「芒種」のアンティーク着物コーデ

6月1日といえば、冬服から夏服への「衣替え(ころもがえ)」の季節ですが、この衣替えは明治時代に軍服や警官・郵便配達人・学生などの制服の規則として定められたもので、着物の「更衣(ころもがえ)」とは全く関係がありません。

冬服と夏服しかない制服と、長い歴史を重ねいろいろな素材で季節の装いを楽しんできた着物を一緒にすることはできないはずなのに、衣替えと着物の更衣がいつしか混同されてしまったものと思われます。

とはいえ、新暦での衣替えも済んだ「芒種」の時期は、大手を振って単衣が着られる時期です。

梅雨入り前のこのころ、旧暦でいうところの「五月晴れ」の空を飛び回るのは燕(ツバメ)たち。

稲作の害虫を食べる益鳥として大切にされてきた燕は、かいがいしく子育てをすることから「燕が巣をかけた家は繁栄する」といわれ、子孫繁栄の象徴といわれています。

今回のコーディネートは、そんな「燕」をテーマにしたアンティークのひとそろえです。
◎ 着物…銘仙(めいせん) 「燕文様」 単衣
◎ 帯…黒地に水玉(ドット)半幅帯 
◎ 半襟…楊柳地「燕に五月雨」刺繍半襟
◎ 履物…パナマ表下駄 水玉(ドット)鼻緒
◎ 小物…レースショール・縮緬細工の燕(香袋)

(4) 「銘仙(めいせん)」のデザインのおもしろさ

この着物の構図の大胆なこと。大小の燕が青空を旋回する様子は迫力満点。まるで一枚の絵を見る心地がします。

この着物は銘仙という織物で、明治末期から昭和30年代にかけて一大隆盛をみた生地です。紬よりも一段質の低い糸を使い、大量生産できる手軽さから、女学生や若い女性の普段着として好まれ、その産地では洋画家を図案家に迎えるなどして、次々とおもしろい柄が織られるようになりました。

撚りをかけない糸で織られた銘仙はつるりとした手触りで、縮緬やお召しに比べ雨に濡れても縮みにくく、木綿のような重さのない絹の軽さを兼ね備えていたため、日常着として好まれるようになったのです。
先染めの糸で織るため、あまりきれいな発色は望めないはずなのですが、この着物の鮮やかさといったら…銘仙に対する見方が変わる一枚です。

「燕が低く飛ぶと雨」…そんなお天気の言い伝えを思い出して、楊柳縮緬(ようりゅうちりめん)にピンクで燕を、銀糸で斜めに降めに降る五月雨を刺繍した半襟を合わせました。

(5) 「芒種」の帯あわせと小物あわせ

銘仙は普段着なので軽快な半幅帯をあわせて

銘仙は普段着、ということで帯は軽快な半幅帯を合わせてみました。

黒地に水玉(ドット)の半幅帯は浴衣などにも締められる現代物。裏地のシャーベットオレンジとの対比がよく見えるように変わり結びにしてみました。

帯にあしらった縮緬細工は、「燕」を模した香袋。明治時代の女学生は、裁縫の時間にこうした香袋や琴の爪を入れる小袋を縫って裁縫の腕をみがいていたそうです。

白木の台にパナマの表を張った夏物の下駄

履物は、白木の台にパナマの表を張った夏物の下駄で、青地に白の水玉でひそかに帯と模様をリンクさせました。前ツボの赤が燕の喉の赤と同じ色という点もコーディネートのポイントです。

遠い異国の雰囲気を漂わす白いレースのショール

燕が渡ってきた遠い異国の雰囲気を漂わす白いレースのショールは、晴れた日の外出時は埃除けとして、梅雨寒の時は襟元を覆って寒さしのぎに…と便利に使える小物です。

外した時に腕に掛ける様子も涼やかで、西洋のロマンチックさを着物姿のアクセントにしてみました。

その他、芒種には、紫陽花・葵・枇杷・田植え・鵜飼い・カワセミ・蛙・かたつむり…などの季節のモチーフを取り入れて「芒種」のお洒落を楽しんでみてはいかがでしょうか。

(6)「芒種」の着物スタイルをイメージする

梅雨が本格化すると、湿気で縮みが心配な着物は敬遠されがちになりますが…
暑い夏には綿や麻、上等のものでは芭蕉布など、植物素材の着物の出番が多いことを考えると、「芒種」は絹地を楽しむことのできる時期といえます。

春に繭を作った蚕から絹糸が紡がれる季節=「夏のはしり」をステキな絹物で装う着物暦はいかがでしょうか。

あなたは「芒種」にどんな着物スタイルを楽しみたいか、心に思い浮かべるイメージをカレンダーや手帳にメモしてみましょう。

無地や縞・格子の着物に節気のモチーフをひとつ取り入れるだけで、自然と調和した素敵なコーディネートになりますよ。

一年で二十四回、二週間ごとに着物に親しむ、あなただけの「二十四節気の着物スタイル」のはじまりです!

次回は6月21日に訪れる「夏至」についてお話しします。
前日20日の配信を楽しみにお待ちくださいね!

『旧暦で楽しむ着物スタイル』河出書房新社
 
※写真はさとうめぐみ著『旧暦で楽しむ着物スタイル』(河出書房新社)より。

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