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手数を減らして着まわす工夫 「きものは布」第三回

手数を減らして着まわす工夫 「きものは布」第三回

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着付けにおいて何か省けるモノがないかを考えても、可能なのは内側につけている和装小物くらい。モノを減らすことができないならば、なんとか「手間」を省いてきものに手が伸びるように考えてみましょう。

コラム 「きものは布」

きものは布

古代の人は、樹皮や草を編んだり、獣の皮などが身体を覆うものでした。
身体を衣服で覆う唯一の動物である人間は、布でできた“衣服“に進化をさせ、洋服としてそして和服として受け継がれ、そして楽しみになりました。
洋服だけでも生活がまっとうできる現代、着物は通常着ではないながらも、日本の文化として纏い、憧れ、大事にしています。
すでにある着物や帯、そしてそれらを作り、着ていた先人達への尊敬の念も含めて、まずは身近なタンスやその他収納の内側と向き合うことからはじめましょう!

第一回 着ない着物(使わない帯)、着られない着物(使えない帯)
     “コレ着られるかしら…”

第二回 着物や帯として再生させる
     “やっぱり着たい!”

第三回 手数を減らして着まわす工夫
     “いい(良い)加減がいい”

第四回 そばに置き、使えるモノへ
     “鋏を入れる勇気と捨てる前に生かすこと”

第五回 すっきりとしたその先は
     “次世代へ着姿やキモノを伝えていくアイコンとして”

第三回 手数を減らして着まわす工夫 “いい(良い)加減がいい”

着付けに必要な帯締めと帯揚げ

“きものを着よう!”と思った時に用意するものと前後を考えると手間が多いと感じませんか?
きものと帯を決めただけでは“着姿”にはなれず、肌着に始まり草履、バッグ、そして防寒や雨除けまで入れると実に数多くのモノが必要です。
もっと簡単に…とは思いますが、かつてはもっともっとたくさんの重ね着から簡略化され、江戸時代にほぼ現代に近い形で帯締め・帯揚げが登場して今のスタイルが150余年に渡っていますので、これでも手間は減って一人で完結することができるスタイルになってきたわけです。
劇的に簡略化はできなくても、効率を考えて準備・着付けをすると時間短縮や手数を増やさず美しい着姿になります。

何か省けるモノがないかを考えても、可能なのは外から見えない内側のものくらい。
モノを減らすことができないならば、なんとか“手間”を省いてきものに手が伸びるように考えてみましょう

〔 準備や保管の簡略化 〕

◆たとう紙はメモがわりに

たとう紙はメモがわりに

ひと目で取り出せるよう、自分が分かる言葉できものの特徴などをたとう紙に書き込みましょう。
たとう紙の右手前端の方へ書いておくと重なっている状態から探しやすいです。
しまう時もそのたとう紙へ戻すように心がけて、何が入っているかをたとう紙を開けなくてもわかる状態にします。
種類・季節・主な色や柄、襦袢をあわせる時は袖丈の寸法も入れると便利です。

◆帯締めや帯揚げが箱に入っていませんか?

帯締め帯揚げを選びやすくする

箱入りの小物はかさばる上に何が入っているかわからないものが多く、選ぶのに時間がかかります。
高級な帯締めは桐の箱に入っていることがありますが、これも中が見えず、かさばる状態です。
思いきって箱は使わずに以下の方法で保管してみてください。
タンス内の空間が増え、コーディネートを考える時間の短縮になります。

<帯締め>
・秋冬物と夏物を分ける
・アクリルなどの透明な浅型収納引き出しやプラスチックケース、横開きのパスタケースなどへまとめる
 →欲しい色の帯締めがすぐに取り出せます。

<帯揚げ>
・秋冬物と夏物を分ける
・アクリルやプラスチックケースなどにくるくる巻いて入れる
 →しわにならず、色も見えて取り出しやすくなります。

◆着るのに必要な物がすぐに取り出せるようにしましょう

和装小物はまとめておく

紐類はここ、肌着はあそこ、足袋はまた別の場所、ということになっていませんか?
使って問題のなかった小物は、着付けに必要な最低限の数を洗濯ネットなどへまとめましょう。
袋を開けなくても中の確認ができることがポイントです。

<洗濯をしないもの>
・衿芯/腰ひも/伊達締め/きものベルト/帯枕/帯板
<洗って完全に乾かすもの>
・肌着やスリップ/足袋/補正道具

上記は分けても、すべてをひとつの袋に入れてもいいかと思います。きものや帯・襦袢・帯締め・帯揚げを選んだら、そのひとまとめの小物軍で準備はOKとしていきましょう。

※ご家族ひとりずつで着装用小物を分け、一人分の必要小物の袋には「新品予備のもの」や「複数の不要な同じアイテム」を一緒にしないようにすることも、準備の簡略化になります。

〔 きもの姿になるための手間の減らし方 〕

◆きれいな半襟で長襦袢を着る

きものを着る以上は必ず発生する半襟汚れ…
この問題はみなさん共通の悩みであり、手間になっているかと思います。
いかにいつもキレイな半襟にするかを考える際には、やはりそれぞれの各自の価値観が影響します。

美しい半襟が着姿を決める

<正絹長襦袢での半襟>

最初に必ずしなければならないことは“汚れた半襟をはずす”ことです。
その後自宅で絹洗いの洗剤で洗うか、新しい半襟を用意するかはみなさんが判断してください。

・自分で完結
様々な半襟つけの方法が動画サイトで紹介されていますので参考にしてトライしてください。
手間は減りませんがどこかへ持ち込まなくても済みます。

・誰かに半襟つけをお願いする
料金が掛りますがラクです。和裁の心得のある人や仕立やメンテナンス業者さんに頼んでください。
半襟つけのみでしたら高額ではありません。業者さんが新品のストックを持っていることがあります。
 
・わずかな薄い汚れの場合
半襟を長襦袢につけたまま丸洗い加工に出します。
薄い皮脂汚れ程度でしたら落ちることがあります(ファンデーションは残りますのでしみ抜きが必要)。

ローズカラー半襟

・半襟と長襦袢に“仕掛け”をする
ファスナーでつけはずしができるように長襦袢と半襟に加工を入れます(ローズカラー半襟/写真参照)。
最初に料金がかりますが好みの半襟を買い足した時も同じ加工をすると、すでにファスナーがついた長襦袢へ簡単に取りつけられます。

二部式「うそつき」襦袢

<正絹以外の襦袢の半襟>

第二回で紹介しました二部式襦袢は、身頃が木綿、袖がポリエステルです。
これは別名「うそつき」とも言います。
ほかに「大うそつき」と言われている、袖が取りはずしできる襦袢もあり、袖のみが正絹の場合があります。
それは絹洗い用洗剤で軽く洗って、生乾きの時にアイロンをあててください。
ポリエステル袖の場合は縮みませんので普通に洗って大丈夫です。
 
また、少し乱暴かもしれませんが二部式襦袢に正絹半襟をつけたまま洗濯機で洗ってしまっても、半襟は縮みますが、伸ばせば大きな問題はありません。
生乾き、もしくは霧吹きで半襟を湿らせてからアイロンをかけるのがコツです。
正絹半襟にアイロンを当てる時はあて布を使うとテカりません。
身頃の木綿部分は、洗うとシワにはなりますが干すときに両手でたたいてよく伸ばしておけば見えない部分でもあり着るのに問題のない程度になります。
もちろん半襟にアイロンをかける際に一緒に身頃もかけてしまえばいいです…

ポリエステル半襟を使いますと、汚れは落ちやすくなります。
洗濯機に入れる前にポイント汚れ用石鹸などをすり込んだり、軽く揉んであらかじめ落としておくと、ファンデーションのシミもきれいに落ちます。
もし刺繍が入っている場合は、洗剤液に少しつけこんでから、歯ブラシで上からトントン軽くたたいて汚れを薄くしてください。
決して横にこすらないようにしてください。
刺繍糸がケバ立ったり糸切れをしてしまいます。

正絹半襟をつけた二部式襦袢を洗濯機で洗うと、半襟は身頃や袖ほど丈夫ではないので
だんだん生地が薄くなります。縮めて伸ばしてを繰り返すのでやむをえません。その際は新しい半襟にすればいいと考え、手間を減らすことを優先するのも考え方のひとつです。

◆着付の手間を減らす

恐れずに腰紐の1周目をといてみる

ご自身で着付ができる方は経験済みかと思いますが、時期によって気分によって手数が変わることがあります。
ましてや着付を依頼する場合は人によって使う小物も、その使い方もさまざまです。
手順を省くには使う紐類を減らすのが一番です。
(着付けを依頼する際は、着付師さんからの用意してもらいたいリストに従って小物をご準備ください。)

着付教室で習った手順も大事ですが、やはりご自身で着る場合は自分なりの工夫や省きをうまく取り入れていただくことをおすすめします。襟のうちあい(左右襟の重ね)以外では「こうしなくてはイケナイ」ということはとても少ないです。
基本は楽であること、崩れにくいこと、そして使う紐類の数を減らして短い時間で着るようにすること、かと思います。

・ウエストやヒップの補正
役割は、きれいなボディラインを作る目的と、クッション効果で腰ひもがしっかり締められるので崩れにくくなることです。
タオルでの補正は身体につける際にずれますので、簡単に身体につけられるように縫ってしまうのもいいですし、クリップで止めておく方法もあります。

・腰紐
すべりにくいものを使うことでで結び目も締まり、緩まなくなります。
幅のあるマットな紐は、摩擦が大きくなり効果があります。
1本の腰ひもは2周巻きをしますので、裾を決める第一腰紐は出先で締め直しができます。
もしきものの裾が落ちてきたときは、恐れずにおはしょりをめくって、結び目のみを解いて1周目を締めなおしてください。

・伊達締め
10cm幅の平たい幅広紐です。
胸元など、紐の締めつけが嫌な場所に使うと効果があるのと、留袖や丈の長いきものを着る際におはしょり上部が余る場合に、そのふくらみをおさえてラインがスッキリします。

・着物ベルト(着付ベルト/コーリンベルト)
両端にクリップがついているゴム紐です。使う人、使わない人さまざまです。
私はかつては必要ないと思っていましたが、現在は使います。
理由は襟あわせがずれないように結んだ「胸紐」を、帯枕の紐を結んだ後に抜き去ることができるからです。
襟の角度は着物ベルトで安定し、そこに帯枕の紐も通るので、安定させる紐が二重になって胸紐が要らなくなります。

※着物ベルトを使うときに気をつけること
長さを調節して「絶対にゴムを伸ばさず」に使うこと。
ちょうどの加減がわからなければ少しだけ緩く止めます。
ゴムを伸ばして使ってしまうと、襟を左右に引っ張る作用が働いて時間の経過とともにきものの襟合わせがどんどん詰まってしまい、だんだんと長襦袢の半襟が見えなくなってしまいます。
着物ベルトの役目は、襟が開いたときにゴムが引いて襟の崩れを戻してくれることです。同時に胸紐の「撤去」をすれば胸元がラクですね。

つまり、ひとつの補正、一本の腰紐、一本の伊達締めなどに複数の目的を与えることができるので、その役割を知って使うと無駄なものがなくなり、紐類の数が減ると手数も減って時間短縮となります。

自分で工夫し、考えているという自信をつけていくことで、どんどんきものを着ることが楽しくなってきます。
何事もトライ&エラーで、回数を重ねていくうちに「自分の着方」を確立できていきます。ぜひ参考にしてください。

第四回は、「そばに置き、使えるモノへ」です。
鋏を入れる勇気と、捨てる前に生かすことについて考えます。

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