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見て話して感じて、ますますファンに!『久米島紬の里 ユイマール館』琉球染織ツアー2025「京都できもの、きもので京都」番外編

見て話して感じて、ますますファンに!『久米島紬の里 ユイマール館』琉球染織ツアー2025「京都できもの、きもので京都」番外編

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今年1月に京都きもの市場「琉球染織ツアー」に参加し、久米島紬の里「ユイマール館」を訪ねました。 産地の風景、染織の工程に触れ、織り子さんたちとお話しし、ますます愛着がわいた産地訪問でした。

2025.07.28

着物でおでかけ

”私だけの宝尽くし”の帯が仕上がりました! 「京都できもの、きもので京都」vol.22

エッセイ

山崎陽子さんのコラム「つむぎみち」(全13回)はこちら!

那覇空港から40分、琉球一美しいと称された「球美の島」へ

那覇空港で各地からお見えのお客様やスタッフと待ち合わせて、一同久米島へ飛びました。

初日はあいにく雨でしたが、それでも止む時間帯があり、まずは「ミーフガー」(久米島の言葉で「女岩」)と呼ばれるパワースポットへ。この岩を拝むと子宝に恵まれると言われる岩壁。沖縄といえば出生率が高いことで知られていますが、その沖縄県内でも久米島はトップクラスだそう。

ちなみに別のところに「ガラサー山」というパワースポットがあって、そちらは「男岩」。二つの聖地を巡ると御利益も倍増?かもしれません。

久米島紬の象徴である黒は、この「ウザ池」の泥から

島の植物や泥によって染められた糸を使う

久米島紬の特色は、島の植物や泥によって染められた糸を使うこと。

島の植物や泥によって染められた糸を使う

ユウナ(淡い灰色)やヤマモモ(黄色)などのやさしい植物の色とともに、久米島紬を代表するのが「久米島ブラック」と呼ばれる泥染の色です。この褐色を秘めた黒に、多くの着物通が惹かれる。私もその一人でした。

島の植物や泥によって染められた糸を使う

その泥を産するのが阿嘉にあるウザ池。山々から流れ込んだ水がここに溜まり、泥田は豊富な鉄分を含み、酸化して赤みを宿します。

褐色を秘めた黒に、多くの着物通が惹かれる

「思ったより小さな池ですね」と尋ねたら、減反政策や温暖化の影響で手入れがゆき届かなくなり、かつての三分の一ほどになったそう。

京都きもの市場バイヤーの野瀬さんが、泥を取るボートに乗ってみました。外から見ると小さなボートに見えますが、深さ5メートルのところから泥を取り、いっぱいに積むと重さ200kgにもなるという力仕事です。

2025.07.06

カルチャー

バイヤー野瀬の、きもの産地巡り

グール、ティカチ、泥で染め重ねること100回以上。2ヶ月かけて黒となる

久米島ブラックに使う染料は3種類。

グール(サルトリイバラ)の根っこ
ティカチ(オキナワシャリンバイ)の幹

久米島ブラックに使う染料

グールで50回、ティカチで50回、泥で50回と染め進めるにつれて、糸は赤茶から濃い褐色、そして黒となります。

天気にもよりますが、その間、1ヶ月半〜2ヶ月ほど。糸の束を干す景色は秋の島の風物詩だといいます。

久米島ブラックに使う染料

日本の紬絣技法の起点、久米島紬の里「ユイマール館」を訪ねて

15世紀頃に生まれた久米島の紬。その技法は沖縄本島、奄美大島を経て本土に伝えられました。いわば、久米島は日本の紬のふるさと。

そんな久米島紬の事業協同組合が運営する工房「ユイマール館」では、歴史や作業工程を詳しく展示しています。

ユイマール館

「ユイマール」とは「相互扶助、助け合い」を意味する沖縄の方言。いっしょに頑張ろう、ともに成し遂げよう、そんな感じの言葉でしょうか。

ユイマール館

また、織り手を育てる後継者育成にも取り組んでいます。久米島紬は一人の織り手が、染色から製織まで一貫して担当します。ここで手技を学び、研修後も引き続きここで制作を続けることが応募の条件。毎年定員6名で、年齢や経験は問いません。

織り手を育てる後継者育成

ちょうど機に向かっていた方に話しかけてみましたら、

「定年退職後、8年前に東京から移住しました。それも久米島紬のことは知らず、住み始めてから知り合った方に教わり、手芸が好きだったこともあり、研修生になったんです。卒業して6年目に入りました」と。

伝統的な色柄とはちょっと雰囲気の違う、モダンな久米島紬を手がけていらっしゃいました。

織り手を育てる後継者育成
織り手を育てる後継者育成

絣糸の括りをされている方はベテランの織り子さんですが、

「各工程、ひとつも気が抜けません。まあいいかで済ませると、その皺寄せが織りに出る、自分に返ってきます。10年、20年やっても検査の前は眠れないんですよ」

とお話ししてくれました。

久米島紬の特徴のひとつ、仕上げの砧打ちも実演してくれました。男の人でも「意外に重くて難しい」という最後の工程、これも女性たちがやってのけます。

いい空気が久米島紬に織り込まれている

ベテランも若手も、80代も20代も、みながそれぞれのペースで、デザインし、糸を括り、染色し、機にかけて織り、砧で叩く。

一人が最初から最後まで一貫してやり抜く孤独な作業かと想像していたら、隣にも向かいにも仲間がいて、ユイマールな空気が流れている。「ああ、このいい空気が久米島紬に織り込まれているんだ」と感じました。

ユイマール館

私の久米島紬の織り手さんのことも教えていただきました!

工房を案内してくださった比嘉さんに、私の久米島紬の証紙をお見せしたところ、

「わあ、私がユイマールに入ったときに、すでにベテランだった前原和子さんですね。とても器用できれいな絣を織られていました。引退されましたがご存命なら100歳近いかと」

と教えていただきました。

夜は組合理事長・松元徹さんと認定織り子さんたちとの懇親会

さり気ない十字絣、その絣足の美しさ、やわらかさ。グールが見え隠れするなんとも奥深い久米島ブラック……作者を近しく感じられ、ますますこの着物に愛着がわきました。

久米島紬ユイマール館

織り子さんたちのパワーを感じる懇親会も

今年は久米島紬重要無形文化財国指定20周年。夜は組合理事長・松元徹さんと認定織り子さんたちとの懇親会が開かれました。

夜は組合理事長・松元徹さんと認定織り子さんたちとの懇親会
夜は組合理事長・松元徹さんと認定織り子さんたちとの懇親会

作品を拝見しながら、飲んで歌って踊ってのひととき。織り子さんたちの明るいパワーに、旅の疲れも吹き飛びました。

今日の着こなし
夜は組合理事長・松元徹さんと認定織り子さんたちとの懇親会
夜は組合理事長・松元徹さんと認定織り子さんたちとの懇親会
夜は組合理事長・松元徹さんと認定織り子さんたちとの懇親会

今日の着こなし

2020年に出会った久米島紬は、色柄のバランスに惹かれました。泥染の色合いはグールを感じる黒がやわらかく、柄も伝統的な琉球柄の着物をすでに持っていたので、このくらいの十字絣がいいなあと気に入って。

とても着やすく帯も合わせやすく、ついこればかり着るほどのヘビーローテーションで5年経ちました。

紅型作家・阿部遼さんの「あぜ道の眺め

帯は沖縄本島糸満市に「紅型工房あしび」を構える、紅型作家・阿部遼さんの「あぜ道の眺め」。糸満から読谷山に向かうあぜ道の、紫かたばみとたんぽぽを写生して柄に起こしたという私の大好きな春の帯。

2025.07.05

エッセイ

早く締めたい!紅型の名古屋帯 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.52

帯締めや帯揚げにも春の色を使い、沖縄の季節に合わせました。

紅型作家・阿部遼さんの「あぜ道の眺め

出発の5日前に利き手の手首を骨折し、ギブスで固定した状態で参加したツアー。みなさんの暖かなサポートに助けられて、思い出に残る旅となりました。

撮影/草村愛

2023.09.17

イベント

作り手の思いに触れる ~和宇慶むつみさん、玉那覇有勝さんを訪ねて~ 「琉球染織ツアー2023」レポート(前編)

2023.09.20

イベント

着物への愛で繋がる ~段上育子さんを訪ねて~ 「琉球染織ツアー2023」レポート(後編)

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