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戦後の沖縄を描く、魂震える圧巻の191分!『宝島』 「きもの de シネマ」vol.69

戦後の沖縄を描く、魂震える圧巻の191分!『宝島』 「きもの de シネマ」vol.69

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銀幕に登場する数々の着物たちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だって着物で愉しみませんか。この秋の注目作は、戦後のアメリカ統治下の沖縄を懸命に生き抜いた若者たちの物語『宝島』です。激動の時代を駆け抜けた彼らの生きざまを、とくとご覧あれ。

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©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

描かれるのは、故郷を奪われた少年少女たちがアメリカ統治下の混沌と暴力に満ちた世の中で反旗を翻し、自分たちの手によって未来を切り拓こうとする姿。

そこには、泥臭くも眩しい青春と壮大なる革命の心意気があります。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

戦後の貧しさのなかで、“戦果アギヤー”となった孤児たち。

彼らはフェンスを越えたり穴を掘ったりして米軍基地や倉庫に忍び込んで、薬莢や鉄屑や食糧を盗むことで生きていました。

そんな戦果アギヤーのリーダー的存在だったオン(永山瑛太)が、ある日の夜、姿を消してしまいます。

友は刑事に、実弟はヤクザになり、コザの英雄の行方を捜します。また、小学校の先生となって彼の帰りを待つ恋人。それぞれが自らの選んだ社会で、各々の役割を背負いながら英雄を求め、生き抜いていきます。

監督が熱望した見事なキャスティング

戦後の沖縄を生々しく映し出す本作ですが、戦争映画に非ズ。大友監督は曰く、「喜びも悲しみも追体験できるような、あの時代の沖縄の青春映画を作りたかった」。

監督が以前、演出を担当したNHK朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」は1972年の沖縄返還後の物語で、歴史的要素に踏み込むことを抑えた作品でした。

その撮影中から、「返還前の沖縄を描かないと本当の意味で物語は完結しないのではないか」と考えていたといいます。

20年以上の時を経て、日本とアメリカの狭間で血と汗と涙と流してきた沖縄の人々の生きざまを、圧倒的な熱量と共にスクリーンに焼きつけることが叶ったのです。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

オンの親友である主人公・グスクを演じたのは、妻夫木聡さん。

映画『涙そうそう』(2006年/東宝)と同じコザの町を舞台とする本作への出演には「運命的なものを感じている」と、思い入れも一入ひとしおだったよう。

グスクの20年間を体現するにあたっては、「44歳という年齢をひしひしと感じるシーンもあって(笑)」という言葉どおり、妻夫木さんに限ったことはでないですが、かなり体を張ったシーンも多く、その迫力は、さすが!大友組、と唸らずにはいられません。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

広瀬すずさんが演じた、オンの恋人で、グスクの幼馴染・ヤマコは、オンが戦果アギヤーの戦果で建てた小学校の先生となって最愛の人の帰りを待ち続ける一途な女性。基地反対・祖国復帰運動に積極的に参加していくようになります。

今回は泣くお芝居も多く、彼女の感情あふれる場面は本作の魅力のひとつ。

「毎日がヤマ場でした」と振り返るなか、最も印象に残っているデモシーンについて、

「沖縄という土地のパワーを感じながら、沖縄の人たちの感情を語り継いでいく映画なんだと実感するシーンでした」

と語る映像は、ぜひ劇場で。

2025.07.31

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終戦80年、長崎に想い馳せる夏『長崎―閃光の影で―』『遠い山なみの光』 「きもの de シネマ」vol.67

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

そして、オンの弟であり、グスクとヤマコの幼馴染・レイ役には、窪田正孝さん。

戦果アギヤーとして忍び込んだ嘉手納基地で捕まり、凶悪犯として刑務所へ。出所後はヤクザとなって独自に兄を捜します。

変化していくグスクやヤマコとの関係性を通して、ときに暴力的にときに繊細に見せる彼の葛藤や本音が、胸を打ちます。

琉球文化・ロケ地・衣裳から見どころ3選!

本作の見どころは、3つ!

まずは、沖縄の文化的な視点から、カチャーシーのシーンです。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

クランクイン前日、妻夫木さんの知り合い宅を訪れた広瀬さんは、「手首の所作ができれば、あとは自由に踊っていいんだよ」とアドバイスを受けたとか。

そのときの教えは撮影に活かされ、うちなんちゅの気風そのものを表している、戦果アギヤーの面々が浜辺でカチャーシーを踊るシーンの解放感やヤマコの家に集まって大勢で踊るシーンの温かさは必見です。

次に、嘉手納基地内でグスクとレイが烈しくぶつかり合うクライマックス。

最も印象的なシーンについては、番外編のインタビュー記事で詳しくお伝えしますが、妻夫木さんと窪田さんの熱演はもとより、そのロケーションにも注目してください。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

実際の基地では撮影できないため、こちらの基地シーンは、和歌山の南紀白浜空港の滑走路がロケ地になりました。

対峙するふたりの会話は、台本にしてなんと約10ページ!
約5分間のお芝居にほとばしる彼らの感情の焔をしっかりと受け止める、絶妙なロケーションです。

そして、最後はオンの衣裳。
「きものと」読者に是非とも観てほしい、物語の核となる羽織です。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

メインキャストは10代から30代までの20年間を演じているため、衣裳もその年月の変化を映し出します

10代の彼らの衣裳には琉装の名残りが見られるものの、戦後から1970年代にかけては和洋混合のハイブリットな洋服に。とくにヤマコのファッションには時代の流れが色濃く出ています。

物語の重要な局面で登場するオンは琉球の雰囲気をまとっていて、その存在感も相まって、ひと際目を引きます。

彼の命の象徴ともいえる衣裳がどんなふうに登場するのか、どうぞお楽しみに。

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