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無名の町医者が叶えた奇跡の実話『雪の花　―ともに在りてー』「きもの de シネマ」vol.59

無名の町医者が叶えた奇跡の実話『雪の花　―ともに在りてー』「きもの de シネマ」vol.59

2025.01.23

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。注目するのは、知られざる無頼に続き、今回は名もなき町医者の話。未曾有の疫病に立ち向かった人々の挑戦を描く『雪の花　―ともに在りてー』です。

ごきげんよう、椿屋です。

前号でご紹介した入江悠監督、昨年2本の時代劇（『碁盤斬り』『十一人の賊軍』）を生み出した白石和彌監督、17年ぶりに復活したテレビ朝日ドラマプレミアム「新・暴れん坊将軍」を手掛けた三池崇史監督など……

名高い監督たちによる時代劇映画への進出はもちろん、巨匠・黒澤明監督の助監督を務め、『雨あがる』（2000年／東宝、アスミック・エース）でデビューを果たした小泉堯監督のように時代劇畑で映画づくりを続けてこられた方がコンスタントに新作を発表してくださることに感謝する日々です。

日本映画界のレジェンド熟練スタッフらを率いて丹精込めてつくり上げた『雪の花　―ともに在りてー』は、実在した福井藩の町医者である笠原良策（松坂桃李）が疫病から日本を救った物語。

死に至る病として恐れられていた疱瘡（天然痘）の治療法を共に探し求める仲間には、役所広司さん、三浦貴大さん、沖原一生さん、坂東龍太さんといったベテランからフレッシュまで幅広い俳優陣が顔をそろえています。

加えて、良策が蘭学に興味を抱くきっかけを与えた蘭方医の町医者・大武了玄に扮する吉岡秀隆さんは、小泉監督が絶大なる信頼を寄せる役者のひとり。

監督曰く、

「役所さんも吉岡さんも、演じる人物をきちんとつかんで、立ち上がらせてくれる俳優さん。お二人とも、役に対する取り組み方が非常に真摯で、安心して任せられる。そういう俳優さんってなかなかいないんですよ」

本作は、約2か月にわたって福井・京都を中心に撮影されました。

クランクアップ直前、良策一行が種痘（予防接種）の苗を福井に持ち込むため、吹雪の中、峠を越える過酷なシーンの撮影が行われました。

一昨日の日中までは雪がほとんど積もっておらず、撮れるかどうか分からない状態だったにもかかわらず、撮影前夜にロケ地となった福井県内のスキー場に60㎝以上の雪が降ったのです！

いくつかある良策のコーディネートの中でも、こちらの緑色の着物が出色でした。やわらかな色味で、清潔感のある着こなしは、良策のイメージそのもの。

なんでも、江戸時代の風俗画に描かれていた医者の身なりを参考に、松坂さんに似合うカラーを選んで誂えたものだとか。なるほど、ポスターもこの着物を着た（衿元しか見えていませんが）良策なのは、納得です。

映画と演劇が大好物で、年間250本もの新作を劇場で観る本の虫（雑食）。京都歴・キモノ歴ともに20数年。美酒美食に目がないのんべぇライターとしてKBS京都「SUNNY TIME」のコメンテーターをはじめ、関西テレビ「よ～いドン！」やMBS「魔法のレストラン」などメディアへの出演も多数。15年以上前から、国語講師との二足の草鞋を履いている。共著に『京都、朝あるき』（扶桑社）。