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時の移ろいに寄り添う―  大河内愛加さん率いる『renacnatta』より、”一生着られる振袖”誕生 「きものと編集部の注目アイテム」vol.2

時の移ろいに寄り添う― 大河内愛加さん率いる『renacnatta』より、”一生着られる振袖”誕生 「きものと編集部の注目アイテム」vol.2

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Forbes JAPAN「NEXT U30」「カルチャープレナー30」選出のほか、さまざまな起業家アワードを数多く受賞する大河内愛加さんがディレクター・デザイナーを務めるブランド『renacnatta』が、”一生着られる振袖”をリリース。袖を短くして訪問着としても長く愛用できる「タイムレス」なデザインをご紹介します。

2024.03.12

まなぶ

用と美を兼ね備えた"肌着の銘品を作る 着物家・伊藤仁美さんの『ensowabi』から新商品誕生

長く愛用できる“タイムレス”なデザインを目指して

renacnata「振袖【黄昏】」

華やかな振袖姿の女性たちで街が彩られる「成人の日」。各ブランドから新作が発表される時期に差しかかり、そろそろ振袖を選び始めた方も多いのではないでしょうか。

この度、“文化を纏う”をコンセプトに掲げた『renacnatta(レナクナッタ)』からも初の着物コレクションとなる”一生着られる振袖”シリーズが発表されました。

renacnata「訪問着【黄昏】」

かつては成人のお祝いとして親が子に購入、あるいは子が親から譲り受けるケースが多かった振袖。しかし、現在はレンタルの割合が増えており、購入の機会が少なく生産も減っている状況です。

せっかく日本の伝統衣装に触れるチャンスなのに、それが購入体験につながらないのは惜しい。

そう考えた『renacnata』のディレクター・デザイナーの大河内愛加さんが、約3年前から制作を進めてきたのが”一生着られる振袖”でした。

金彩で型とった吉兆文様

振袖の購入を多くの人が思いとどまる理由の一つとなっているのが、着る機会の少なさ。

振袖は未婚女性の第一礼装で結婚式や卒業式にも着られますが、出番はそう多いわけではありません。

「たった数回しか着ないのなら、レンタルで十分」「その数回のために数十万〜数百万も払えない」というのが正直な気持ちでしょう。

renacnata「振袖【暁】」

いずれの振袖でももちろん、袖を短くして訪問着に仕立て直すことはできます。

ですがやはり、振袖としての華やかさを追求したお色柄のものがメインとなっているため、結局は着ていく場所がなかったり、年齢とともに似合わなくなったりでタンスに眠らせたままという人も。

renacnata「訪問着【暁】」

そこで大河内さんは、振袖としても訪問着としても成立する着物を作ろうと考えたのです。

未婚女性の第一礼装として相応しい配色や柄でありつつ、年齢を重ねても美しく着続けられる“タイムレス”なデザインを目指し、大河内さんは2年以上も試行錯誤を重ねました。

訪問着

空のうつろいを表現した2色展開の着物

そしてついに、配色を変えた2種類の着物が完成。

ひとつは裾が紅からピンクに移り変わり、胸部分がブルー、肩が淡い黄色へと続くデザイン。朝焼けの空をイメージしたもので、【黄昏】と名付けられています。

もうひとつは裾が紫からイエロー、薄紫へと変わり、胸元がイエロー、肩へと緑が移ろうデザイン。夕焼けの空をイメージしたもので、【暁】と名付けられています。

どちらも引染めの職人さんが手がけたグラデーションによって空の移ろいが表現されており、その色彩はハッとするような美しさ。

まさに“タイムレス”なデザインで、成人を迎えたその日から絶えず移ろいゆく人生に寄り添ってくれそうです。

引き染めの様子

引き染めの様子

デザインのヒントになったのは、丹後ちりめんの織元・田勇機業が手がけた雲柄の生地。

大河内さんはこの生地に出会った瞬間、「着物を空に見立てて、空のうつろいを表現したグラデーションに仕上げたら、とても映える生地になるだろう」と直感したそうです。

生地は緞子ちりめんを採用

生地は緞子ちりめんを採用

丹後ちりめんは表面にシボと呼ばれる細かい凹凸があり、丈夫でシワになりにくいのが特徴。今回はその中でも緞子(どんす)と呼ばれる美しい光沢感と重量感を持つ生地が採用されています。

挿し友禅で柔らかな雲を表現

挿し友禅による雲柄は、京友禅伝統工芸士の細井智之さんが手がけました。

柔らかく美しい白色が特徴の顔料・胡粉(ごふん)を贅沢に使い、熟練の技術が必要な「胡粉ぼかし」という技法で雲を表現。白を基調としつつも、グラデーションの色も拾った柔らかい雲柄となっています。

金彩で型とった吉兆文様

金彩加工で鶴や鳳凰など、おめでたい柄を入れ、ハレの日に相応しい華やかな一枚に。

さらには「筒描き」「型押し」「砂子」という3種の技法を駆使し、雲の輝きもより一層引き立てられました。

この着物には丹後ちりめん、引き染め、挿し友禅、金彩、和裁と、京都の職人さんの手仕事が結集しており、着ることで日本の伝統に触れることができます

日本の伝統

新章に突入したrenacnataの今後にも乞うご期待

大河内さん

大河内さんは横浜市に生まれ、15歳の時にイタリア・ミラノに移住。

長いイタリア生活の中で感銘を受けた、自分が本当に良いものだと思ったものを選び、長く愛し続ける文化がブランド運営の大切な基盤となっているそうです。

そんな大河内さんが2016年に立ち上げたブランド『renacnatta(レナクナッタ)』は、日本とイタリアのデッドストックや伝統工芸品などの素材を組み合わせたアイテムを展開しています。

renacnata「振袖【暁】」

ブランド名は使わ「れなくなった」生地や、以前より作ら「れなくなった」素材や技術を使うところに由来しており、大河内さんは斜陽産業の伝統工芸を継承する企業や職人とタッグを組んで様々な「れなくなった」に命を吹き込んできました。

振袖

そうしたこれまでの知識や経験を活かしつつ、ゼロからの着物づくりに挑戦した大河内さん。

この着物コレクションの発表をもって新章に突入した『renacnata』の今後にも乞うご期待です。

renacnata「振袖【黄昏】」

構成・文/苫とり子

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