其処ではすべてが露呈する〜小説の中の着物〜 澤田ふじ子『宗旦狐ー茶湯にかかわる十二の短編ー』「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」第四十三夜
小説を読んでいて、自然と脳裏にその映像が浮かぶような描写に触れると、登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し、生き生きと動き出す。今宵の一冊は、澤田ふじ子著『宗旦狐 【茶湯にかかわる十二の短編】』。“茶湯(ちゃのゆ)”という、研ぎ澄まされた美意識が行き渡る静謐で美しい精神世界の裏側に透けて見えるのは、正と邪、善と悪、徳と欲とを併せ持つ、愚かしくも愛おしい“ひと”という生き物の姿。狐の悪戯などかわいいもの、よほどタチが悪いのは……?
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