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いまを生きる女性に寄り添う『夢訪庵』の表現 「京都できもの、きもので京都」vol.18

いまを生きる女性に寄り添う『夢訪庵』の表現 「京都できもの、きもので京都」vol.18

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都会的にきものを着たい人、シンプルシックに装いたい人、現代的で軽やかな着姿が想像できるのが、夢訪庵の真骨頂だと感じました。

2024.10.27

よみもの

『履物関づか』の草履と革足袋にひと目惚れ 「京都できもの、きもので京都」vol.17

よみもの

山崎陽子さんのコラム「つむぎみち」(全13回)はこちら!

私の周りにもファンが多い京都の帯ブランド・夢訪庵。

「あ、これだ!」と思える帯と出合いました

4月後半、東京代官山で開かれた展示会にはたくさんのお客様がいらして、みなさん楽しそうにくつろいだ時間を過ごしているのが印象的でした。

私もずいぶん長居して「あ、これだ!」と思える帯と出合いが!

仕立て上がった帯をおろして、京都の展示会に向かいました。

よみもの

帯に宿る、わたしだけの物語

手織り、草木染めにこだわりつつ視野はワールドワイド、桝蔵順彦さんの世界観に浸る

夢訪庵は染織作家・桝蔵順彦さんのブランド

『夢訪庵』は、染織作家・桝蔵順彦さんのブランドです。

お父様、お祖父様、母方のご親戚も含め、みな何かしら染織分野を生業にするお家に生まれた桝蔵さん。

小さな頃から西陣の技や脈々と受け継がれる京呉服の伝統を見聞きして育ちました。

桝蔵順彦さん
明るくてキュートな感性

一方で、桝蔵さんだけが持つ明るくてキュートな感性、マダガスカルの巨大な蚕やブラジル産の原木など素材への探究心は、既成概念を超えてどこまでも自由。

夢訪庵に集まる皆を多幸感で包んでくれます

いたずらっ子のように目をキラキラさせて面白いお話を聞かせてくれたり(中身は糸や染め、織り、図案に対する真摯な姿勢と豊富な知識に裏打ちされたお話)、心温まるホスピタリティに満ちた展示会を進行されたり、そのご主人ぶりは夢訪庵に集まるみなを多幸感で包んでくれます。

夢訪庵に集まる皆を多幸感で包んでくれます

草木染めのシンプルな八寸、ヨーロッパのエスプリを感じる九寸、古典柄を現代に生かした季節の文様、さりげなく気の利いた帯がずらり!

心が浮き立つようなセンスあふれる帯

春の代官山の展示会場には、心が浮き立つようなセンスあふれる帯が並んでいました。

ピアノとバイオリンの生演奏を聴きながら帯を眺め、バーカウンターでスパークリングをいただいたり、知り合いと歓談したり。そしてまた気になるコーナーを覗きに行って。

絵本の挿絵のような可愛い帯

絵本の挿絵のような可愛いブーケ、プードルと散歩するパリの街角、そんなファンタジックな帯があれば、古の梅や桜、松の文様もみつかる。

心が浮き立つようなセンスあふれる帯
松の文様

漆箔を使った吸い込まれそうな黒もあれば、愛らしい刺繍使いもある……

こんなにたくさんのバリエーションが、草木染めによって生まれるということに驚かされ、作家ではあるけれど作家性が表に出過ぎないさりげなさも好感が持てます。

心が浮き立つようなセンスあふれる帯
心が浮き立つようなセンスあふれる帯

都会的にきものを着たい人、シンプルシックに装いたい人、現代的で軽やかな着姿が想像できるのが、夢訪庵の真骨頂だと感じました。

風合いのよい無地紬の八寸は、カラーバリエーションも豊かで使いやすそう。

その八寸の中に、とても奥の深い紫やローズ、赤があり「この色は何で染めているのですか?」とお聞きしたら、「フェルナンブーコ」という聞き慣れない単語が出てきました。

心が浮き立つようなセンスあふれる帯
心が浮き立つようなセンスあふれる帯

2021.08.27

よみもの

「フェルナンブーコ」って、なあに? 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.1

フェルナンブーコはブラジルで成育する木。

弦楽器の弓のスティック部分に使われ、弦楽器奏者憧れの最高級品とのこと。弓の材として使われる以前は、赤く染まる染料としてヨーロッパに持ち込まれていたそうです。

心が浮き立つようなセンスあふれる帯

しかし残念ながら、過剰な伐採により、2007年にはワシントン条約の絶滅危惧種に認定され、輸出入禁止になってしまいました。

日本を代表するビオラ奏者・三原征洋氏とのご縁により、フェルナンブーコの端材をわけてもらい、さまざまな工夫と手法によって色の抽出に挑戦した桝蔵さん。

以来数年、この染料にぞっこんで、多彩な色使いを試み帯を制作しています。

2023.07.31

よみもの

人生をともにする”楽器の色”が見たい 〜夢訪庵・桝蔵順彦氏の世界〜 「帯に宿る、わたしだけの物語」vol.6

フェルナンブーコで染めた地色にモール糸で織られたオレンジの楓、私の琴線に触れた晩秋の帯

会場で目に飛び込んできたのが、紅葉と名前のついたシンプルな帯でした。

大好きな11月の帯

この3年ほど、季節感のある帯に目覚めたのですが、紅葉はなかなかこれというものに出合えていませんでした。

このオレンジ色の楓柄を見たとき「あ、私が求めていたのはこれだ」と直感的に思えたのです。

私は山に自生するハウチワカエデがことさら好きで、特に10月末から11月にかけて薄緑から薄黄色、オレンジと色を変えていく大きな葉っぱが気に入っています。

晩秋の空に手のひらをパーにして広げたような明るさがあり、葉を落として冬を迎える直前の灯のように感じます。

大好きな11月の帯

お太鼓に1枚、大きく描かれたモールの葉っぱはまさに私の好きな楓。真っ赤な葉がたくさん描かれた紅葉図も古典的で素敵ですが、私にはこちらがしっくりきました。

それから待つこと半年、ようやく出番が来て、秋の京都の展示会で桝蔵さんにお見せすることが叶いました。

ずっとベージュだと思い込んでいた地色は、締めてみると奥からピンクがかった色が浮かんできます。

大好きな11月の帯

「これがフェルナンブーコの色!」と糸に潜む赤味に感嘆しました。

合わせる着物によって地色のニュアンスが変わるのも面白く、そこに楓が大らかに高らかに秋を歌う。大好きな11月の帯となりました。

本日の着こなし

市松柄でところどころに花織が

知り合いの方のお下がりの小紋は、市松柄でところどころに絞りが。紅絹の胴裏がついていましたが、少々派手なので共の八掛に変えました。

夏ごろに「道明」で見つけて、この帯に合わせたいと思っていた三井寺の帯締めは、桝蔵さんにも「最高の組み合わせ」と褒めていただけてよかった!

三井寺の帯締め

黄色に紅葉の地紋のある帯揚げは近所の露店で500円、この季節によく使います。

ストラップ付きのポーチは、夢訪庵の代官山展示会でみつけた『キラトワニー』のもの。お太鼓の中にすっぽり入るサイズで、パーティのときなど、最低限の持ち物を入れて携帯します。

「最高の組み合わせ」と褒めていただけてよかった!

撮影/弥武江利子

2021.08.27

よみもの

「フェルナンブーコ」って、なあに? 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.1

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