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気品と気さくさが同居する妙 祇園甲部・小扇さん 「令和の芸舞妓図鑑」vol.15

気品と気さくさが同居する妙 祇園甲部・小扇さん 「令和の芸舞妓図鑑」vol.15

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京都の寺社仏閣や芸舞妓さんの美しい写真を得意とする写真家・小見直人さんの作品で構成する、きものと版「令和の花街図鑑」。普段はなかなかお目にかかれない芸舞妓さんたちの姿をお届けします。今回は、祇園甲部の芸妓・小扇さん。凛々しさが際立つ表情や所作とは裏腹に、ざっくばらんなトークで多くの人を魅了する自前さんです。

ふ小扇さん01

小扇こせん

 出身地:静岡県
  屋形:祇園甲部・廣島家
見世出し:2006年5月11日
ひとこと:テスト前に部屋の掃除をし出すのと同じやと思うんどすけど……舞台前は断捨離ブームが来て、ボッコンボッコンいろんなものを捨ててます(笑)。超インドアなので、最近は意識的に身体を鍛えななと思って、ホットヨガやピラティスを始めました。

小扇さん02
小扇さん03
小扇さん04
小扇さん05
小扇さん06

ご本人コメント

栄摂院さんでは、大好きなお着物で撮影してもらいました。“お姉さん”なイメージの銀鼠の色に憧れて、そこに「鷺を入れたいです」ってお願いしたら、「じゃあ、柳も配置しましょう」って提案してくださって。裾のぼかしもご主人のアイデアです。いまはもうない呉服屋さんで誂えた、思い入れのあるお着物どす。

すごく気に入っているので、それこそ今年の五花街の舞台でフィナーレにも着さしてもらいました。この着物が好きすぎて、時期が合えば目立つところではいつもこれを着ています。合わせた帯の御所解文様も、着物でも持っているくらいお気に入りの柄。タッチによっては重くもなって、お祝いの黒紋付にも大丈夫な柄やし、品もあるのでとても好みなんどす。

※今年の五花街……第31回京都五花街合同公演「都の賑い」。1994(平成6)年に平安建都1200年記念催事としてスタートし、総勢約70名もの芸舞妓たちの技芸が一度に愉しめる人気の舞台。

色合わせや柄合わせに気を配るのはもちろんのこと、正座すると膝の裏に皺がいくのは仕方ないんどすけど……舞を舞わしてもらうときに、目立つところにうっかり皺があったら不細工やさかい、お袖や胸元などなるべく綺麗に直してからお座敷に寄せていただくように気をつけてます。

普段のお衣装はもちろん、実は「おばけ」で色々な扮装をするのも割と好きで……。以前、おばけで鳴神なるかみの恰好をして2人の雲絶間姫くものたえまひめを両手に、鼻の下を伸ばしてるときに小見さんとばったりお会いしたことがあります。2日間で80~90軒ほどのお席を回り、いつも仲良くしている美女ふたりにお姫様の扮装で囲んでもらって幸せどした。

※おばけ……例年節分に行なわれる仮装行事。これはかつて節分の夜に、老婆が少女の髪型を真似たり、少女が島田に髪を結ったりして鬼をやり過ごした「お化髪」の風習を受け継ぐもの。

※鳴神……歌舞伎十八番のひとつ。朝廷への恨みから竜神を封じ込め、雨を降らせなくした高僧鳴神上人(なるかみしょうにん)のこと。

※雲絶間姫……鳴神上人に色仕掛けで近付く宮仕えの絶世の美女。「雨を降らせる」ことをを役目とする「雲の絶間」が、見事なネーミング。

小扇さん07

渉成園にて。からげ姿でも隠し切れない美が漂う

小扇さん08

舞の最中に見せる、キリリとした目力ある表情も魅力

小扇さん09

茶屋辻文様の単衣に、秋草柄の夏帯を合わせて。「パーティでも着させてもらう機会の多いお着物どす」

小扇さん10

小扇さんの私物の鼓を小道具に

撮影後記

今回の撮影時に、芸舞妓さんを見たことないまま花柳界に飛び込んだと聞いて、「なんてファンキーな!」とビックリしました。なんでも、幼い頃に夏祭りで浴衣を着た際に「舞妓さんみたいやねぇ」と言われたことがあったそうで。その褒め言葉でだけしか“舞妓”を知らず、中学3年生のときに進路を考えるなかで、ある日朝起きたら「そうだ、舞妓になろう!」思って、自前さんにまでなったという異色の経歴です。

小扇さんを初めてお見掛けしたとき、あんまりにもキレイやから撮影をお願いするにしても一回ごはん食べに行ってからアレせな……と、初見でいきなりごはん食べに行ったんですが、めっちゃ緊張したのを覚えています。それ以来、緊張を思い出す場所になってしまって、そのときにお邪魔した中華屋さんに行けてないくらいの緊張っぷりでした(苦笑)。

淡々と日本酒を呑んでそうやのにお酒を嗜まないとか、カラオケが恐ろしくお上手とか。ニャンコ愛が強くてプライベートで保護猫活動もしてはったり、僕が通ってるヨガスタジオで小扇さんはピラティスをしてはったり……話せば話すほど気さくな顔が見えて、ますます虜になってしまう芸妓さんです。

2023.01.30

よみもの

是枝裕和監督が描く花街の文化 Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』〈前編〉

2023.02.27

よみもの

小紋屋主人と現役芸妓も納得! Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』〈後編〉

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