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『履物関づか』の草履と革足袋にひと目惚れ 「京都できもの、きもので京都」vol.17

『履物関づか』の草履と革足袋にひと目惚れ 「京都できもの、きもので京都」vol.17

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「まず試してみてください」と出されたのが、ウルトラスエードに羊革の花緒をすげた草履で、もともとは男性用だったものをリデザイン。あまりにぴったりしっくりした装着感で、そのまま履いて帰りたいくらい。ついついその場ジャンプまでしてしまいました。もう即決です!

2024.09.27

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脱ぎやすく履きやすい、左右同型の単純さ、日本の履物にみる合理性

『岩倉AA』

真っ赤な革の台に白い花緒もいいなあ、友だちがあつらえたスエードの草履も素敵だったなあ。冬用に革の足袋も欲しい、同色の草履を合わせて洋服にも合わせたいなあ……

イメージを膨らませて岩倉を訪ねました。

住宅街の坂道をずんずん登った先に、『岩倉AA』があります。

※関づかでは、鼻緒はあえて「花緒」と書きます。草履に花緒、草と花、きれいですね。

『岩倉AA』

かなりハードな坂道でした。

木材倉庫を改装したショップ&ギャラリーには、店主の関塚真司さんが選んだおしゃれなワークウェアや小物、質実剛健な道具などが置かれ、その奥にガラスで仕切られた畳の空間。

そこが『履物関づか』のアトリエになっています。

『履物関づか』のアトリエ

「日本の履物ってきれいでしょう?型が完成されているんです。

左右同型の台に花緒がついているだけ。日本の住居に合わせ、脱ぎやすく履きやすい。傷んだら修理をし、花緒をすげ替えれば、ガラッと印象が変わり蘇る。とても合理的なんです」

と、関塚さん。

『岩倉AA』の小物

その極めてシンプルな履物にどれだけ美しさを出せるかが、関塚さんの履物づくりの根本です。

関塚さん

「まず試してみてください」

と出されたのが、ウルトラスエードに羊革の花緒をすげた草履で、もともとは男性用だったものをリデザイン。

ウルトラスエードに羊革の花緒をすげた草履

あまりにぴったりしっくりした装着感で、そのまま履いて帰りたいくらい。

ついついその場ジャンプまでしてしまいました。もう即決です!

ぴったりしっくりした装着感

商品を選んだら、素足を計測台に載せて、足の形とサイズを測ってもらいます

足の形とサイズを測ってもらいます

底面は柔らかめのヴィブラムソールにし、台の高さをほんの少し高くしてもらうようお願いしました。

「どうしてこれを最初に勧めてくれたんですか?」

とお聞きしたら、私がお店に入ってきたときの印象で、とのこと。そのセレクトの確かさにも感動しました。

セレクトの確かさにも感動

羊革の足袋”tanhi”で冬の足もとも暖かに、ニットパンツとも合わせたい

”tanhi”という革製の足袋

もうひとつの私の目的は、”tanhi”という革製の足袋を作ることです。

関塚さんによると、足袋はもともと革製だったそう。耐久性に優れ足先を守ってくれて、草履での歩行が安定する。綿の足袋が普及したのは近代になってからです。

草履との組み合わせも暖か

今まで真冬の外出には足袋ソックスとブーツで出かけていましたが、この”tanhi”があれば草履との組み合わせも暖か

そして、冬のパンツと組み合わせて、洋装でも楽しみたいなあと妄想しています。

「足放せない」だろうなあと確信

黒かベージュか悩み、まずはベージュにして、足首を留めるスナップは2つ付けてもらうことに決めました。

試し履きしましたが、羊革がやわらかく足なじみもよく、これはきっと手放せない、いえ「足放せない」だろうなあと確信。

冬前には届くので、今から楽しみです。

草履と合わせて外出するだけでなく、冬はルームシューズとして履く人、インナーソックスと合わせて重ねばきする人など、使い方はいろいろだそう。

冬前には届くので、今から楽しみです。

スニーカー収集、パリのシューズブランド、京都祇園の履物匠を経て独立

スニーカー収集、パリのシューズブランド、『祇園ない藤』を経て独立

新潟県の下越、福島県に近い町に生まれ育った関塚さんは、スニーカーが好きで収集するような少年でした。

靴好きが嵩じてフランスの老舗シューズブランドに就職。その後、食や住に関わる仕事を経て、京都祇園の履物匠に入ります。

『岩倉AA』の小物

スニーカー、ヨーロッパの革靴、そして日本の履物へ。

関塚さんは仕事を覚えるに連れ、草履や下駄の持つ機能性、合理性、そこから生まれる美に気づきました。

『岩倉AA』の小物

履物だけでなく、最近はバッグも制作しています

『岩倉AA』の小物

今から10年ほど前、私は東京青山にあるソニア・パークさんのお店『ARTS&SCIENCE』で開催された草履展で畳表の装履をあつらえたのですが、思い返せばそのとき接客してくれたのが関塚さんでした。

花緒に白地銀を選んだことを関塚さんが思い出してくれ、こうして岩倉で再会できたことにもなんとなく運命を感じました。

岩倉AAは気持ちのいいショップ&ギャラリー

2020年の4月26日、独立してこの地にアトリエを構えたとき、背中を押してくれたのはソニアさんだったと振り返ります。

コロナ禍の最中、オープンを前に悩んでいた関塚さん、ひとりビールを飲んでいたら同じ店にソニアさんがいた。

いろんな話をして、腹を決めたといいます。

忘れもしない4月10日の夜のこと。

それから4年半が経ち、いまこの岩倉AAは気持ちのいいショップ&ギャラリーに育っています。次は2月、草履の仕上がりを受け取りに来ます。

私も大笑いしました

「関塚さんは和服も似合いそう、お召しにならないんですか?」

と尋ねたら、

「うーん、僕、ちょっと似合いすぎるんですよ」

と笑いました。

たしかに! あまりに似合いすぎると近づき難くなりますね。私も大笑いしました。

本日の着こなし

暑くもなく寒くもないこの季節は、木綿の単衣が気持ちよく着られます。

木綿の単衣
館山唐桟の崩し縞

今日は関塚さんにお会いするならこんな感じがいいかな?とイメージして、齊藤裕司さんの作、館山唐桟の崩し縞にしました。

松原伸生さんの藍染め九寸

帯はぜんまい紬に蔦の柄、松原伸生さんの藍染め九寸です。

全体的にメンズライクになるように、デニムのワークウエアを着るような気分でコーディネート。

『ロエベ』のアマソナ

バッグもあえてヨーロッパの革製に。

『ロエベ』のアマソナは私にとって「スペインの利休バッグ」。この形とサイズ感が和装にぴったりで気に入っています。

撮影/弥武江利子

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