着物・和・京都に関する情報ならきものと

神無月、秋こそ緑を取り入れて 「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.2

神無月、秋こそ緑を取り入れて 「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.2

記事を共有する

未生流笹岡の笹岡隆甫さんは、異なるジャンルとの掛け算による創造性豊かな活動で注目を集める若き当代家元。伝統的技法に西洋花を掛け合わせた「笹岡流盛花」をベースに、挑戦を続ける隆甫さんの花への姿勢から、“華やぎあるくらし”のヒントを学ぶ第2回は、いけばなにおける色の重要性を教えてもらいます。

2024.09.17

まなぶ

長月、月愛でる傍にはススキを 「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.1

掛け算となる異業種コラボに挑む

10月のいけばな作品は、「THE SODOH HIGASHIYAMA KYOTO」で開催されたフランク ミュラーによる「WPHH JAPON 2017 in KYOTO」でのコラボレーションから。

※「WPHH JAPON 2017 in KYOTO」……毎年1月にスイス・ジュネーブで開催されるフランク ミュラー ウォッチランド グループによる新作発表会「WPHH(THE WORLD PRESENTATION OF HAUTE HORLOGERIE)」の日本版。25周年のアニバーサリーイヤーとなった2017年、世界初となる一般公開が京都にて開催された。

印象的なモニュメントとのコラボとなった、幅9m×高さ3mにもおよぶビックサイズの作品は、八坂の塔を借景にライトアップによって花が浮き上がる趣向。

10月の作品/夜

イベントは3日間にわたり行なわれ、隆甫さんは毎朝いけ替えに会場へ足を運んだ

花材は、紅葉のグラデーションが見事なナナカマドをメインとし、

「一番高いところに紅葉を配し、その反対側に緑が欲しくて、タイサンボクを入れました」

と、隆甫さん。

その他、ウメモドキ・ツルウメモドキ・ストレリチア・ケイトウ・キク・マツなど。

「通常は空間ありきで器を選んでから花を決めますが、このときはモニュメントとのコラボ依頼だったので……いつもとは違った手順でいけ上げるのは、新たな挑戦となりました」

ほんの少しの緑が全体を活かす

ナナカマド=七竃は、7回かまどに入れても焼け残ると言われるほど丈夫な植物。粘りがあって、しなやかで。秋に重宝する花材だと、隆甫さんは言います。

逆境でも折れない心の強さを想わせるナナカマドは、白い花や赤い実がなければ、そこまで特長のない葉です。

が、ひとたび色づけば、深緑・黄・橙・赤・紅・茶といった濃淡さまざまな色合いで、見る者の心をしっとりと落ち着かせてくれます。

隆甫さん横顔

「その多彩な色彩に秘められた命の移ろいを慈しむ紅葉には、自然に親しむ日本人ならではの情緒がある」

と隆甫さん。そんな紅葉を、自宅でも愉しむためにはどうしたらいいのでしょうか。

「カットが美しいワイングラスなど、意匠が面白い洋の器がいいですね。そこに色づいた枝を一本挿すだけでも素敵だと思います。欲を言えば、アイビーといったような緑の葉を垂れ下げてあげると風情が出ますよ」

今月のお家元 ―神無月の華やぐ思い出

隆甫さん

先日、『京・富小路 天ぷら吉川』にお邪魔し、老舗の天ぷらをコースで堪能しました。

同店は、1952(昭和27)年創業の料理旅館。数寄屋造りの建物は大正初期に建てられたもので、本館はさらに歴史を重ねています。1964(昭和39)年の東京オリンピックに合わせて、屋敷の一部である茶室を改装されて、当時京都ではまだ数少なかった板前天ぷらを始められました。

あっさりとしていていくらでも食べられるのが、吉川さんの天ぷら。締めは天丼で。

「天ぷら吉川」写真

撮影:笹岡隆甫

カウンターで食事を愉しんだ後、お茶室で誕生日のお祝いをしていただきました。

小堀遠州が作庭した『退去園』は、街中とは思えないほどの静寂に充ちていて、束の間、通りの喧騒を忘れさせてくれる空間です。

手入れの行き届いた庭を眺めると、心が落ち着きます。みなさまもぜひ一度、体感してみてください。

笹岡隆甫

2021.10.05

よみもの

神無月、まだ見ぬ美を求めて 「現代衣歳時記」vol.9

2023.11.27

よみもの

妙心寺塔頭『桂春院』、紅葉狩りは静かにゆったりと 「京都できもの、きもので京都」vol.6

シェア

BACK NUMBERバックナンバー

LATEST最新記事

すべての記事

RANKINGランキング

  • デイリー
  • ウィークリー
  • マンスリー

HOT KEYWORDS注目のキーワード

CATEGORYカテゴリー

記事を共有する