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和裁のプロが教える縫い方の3つのコツ。美しい着物を縫い上げるには?

着物と和裁の3つの学び <上級編>さくらおばあちゃん直伝!プロの技を知る~

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さくらおばあちゃんが着物の仕立てをする上で大切にしている3つの教えがあります。「柄合わせには時間をかける」「ばかの長糸、上手のまち針」「縫い手よりこき手、こき手より折り手」、これらの言葉とそこに込められた意味をご紹介します。

10代のころから和裁を習ってきたさくらおばあちゃんは和裁のプロフェッショナル。
浴衣や単衣の着物はもちろんですが、七五三の着物や訪問着や振袖など、子どもの着物から大人の着物、男性ものも女性ものまでさまざまな着物を仕立ててきました。
上級編では、そんなさくらおばあちゃんが大切にしてきた縫い方の3つの教えにスポットをあてます。

1 プロの縫い方を知りたい!

農家にお嫁にきてからは、農閑期に和裁の仕事をしてきたさくらおばあちゃん。
長い間、和裁のプロとして仕事をしてきたさくらおばあちゃんに、プロとしての縫い方のテクニックや大事にしてきたことがらを聞いてみました。
さくらおばあちゃんが和裁の先生から学んだたくさんのことの中から、着物の種類を問わず、すべての仕立てに役立つポイントを教えてもらいます。

2 縫い方のコツ① 「柄合わせには時間をかける」

和裁の工程のひとつに「柄合わせ」というものがあります。
柄合わせというのは、着物が仕立てあがったとき、着たときに一番美しく見えるように柄の配置を調整することです。
振袖や訪問着などは、着物に柄を描くときに柄合わせがされてます。
小紋の着物や浴衣は仕立てる人が柄合わせを考えなくてはいけません。

まず、上前に一番よい柄がくるように柄合わせを決めます。
ポイントは、胸元と裾の柄。
着たときに目にとまるところなので、ここが一番美しくなるようにします。
次に、背中側の柄合わせがきれいになるように身頃を合わせます。
それから、上前の胸元と左の内袖の柄を見ます。

ここで難しいのが、生地を裁つ前にここまでの柄合わせをイメージしなければならないこと。
基本的には、反物の端から袖を2枚分、身頃を2枚分、衽、衿をとっていきます。
けれど、一度裁ってしまうと、もうちょっとずらした方がいい柄がでたのに、と思ってももう元には戻せません。
そのため、反物を折り返してつもった状態で袖や身頃によい柄がきているか検討するのだそうです。
折り返したそれぞれの場所をめくったり横に並べてみたりして仕立てあがった状態をイメージしてみます。

どうしても柄合わせがうまくいかないときは、どうしたらいいのでしょうか。
疑問に思ってさくらおばあちゃんに聞いてみると、「例えば、端から袖を1枚にして、次に身頃を2枚、袖を1枚、衽、衿というようにとる順番を変えて出る柄を調節することもあるんだよ。」と教えてくれました。

「花の柄だったら、花柄がかたまったり全然なかったりしないように考えないといけないし、着る人によっても雰囲気がちがうからね。悩むときは半日とか1日とか考えることもあったよ。」と話すさくらおばあちゃん。
和裁では、柄の出る位置によって、仕上がりの印象が全然変わりますから、もしかしたら一番センスが問われるところかもしれません。

「縞の着物は柄合わせが要らないように見えるかもしれないけど、衿と共衿で縞がつながるように仕立てなくちゃだから、結構難しいんだよ。」とも言っていました。
和裁にはセンスだけではなく、技術も必要なんですね。
上前の裾と衽の柄を合わせたら、次に背中側の身頃の柄、それから上前の胸のところと左の内袖の柄を合わせます。
上前の胸から袖にかけては顔に近くよく目に留まるところでもあるので、ここも重要ポイントです。
こちらの浴衣の生地で柄あわせの印象をみていきましょう。

・柄合わせ例1

こちらは、ピンクのお花の数が多めにでているので、明るめで華やかな印象になります。

柄合わせ例1

・柄合わせ例2

こちらは、ピンクの花の柄が少ないので、落ちついたクールな印象になります。

・柄合わせ例3

こちらは、胸の柄とちょうど上下が逆さになったような柄がでています。
きちんと感や整った印象があります。

このように、柄合わせによって見た目の印象はさまざまに変わります。
セオリーのようなものはありますが、どういうものがいいのかというのは、和裁の経験によるところも大きそうです。

ちなみに、右の袖は、右の身頃の背中側と右の外袖(背中側)の柄がきれいに見えるように合わせます。
左の袖が決まったら、右の袖も合わせてみましょう。
両方の袖の柄の兼ね合いを見て、両方良ければ袖の柄合わせは完了です。

3 縫い方のコツ② 「ばかの長糸、上手のまち針」

さくらおばあちゃんが和裁の先生によく言われていたことのひとつが「ばかの長糸、上手のまち針」という言葉だそうです。

衿や背中側など縫うところが長い場所もあります。
途中で糸を継ぐのをめんどうがってはじめから長い糸を針に通すという縫い方をする人がいます。
長い糸を使った方が効率的のような気がしますが、あまり長い糸で縫っていると、途中で糸が絡まったり結ばれてしまったり、思わぬところで失敗してしまうことがあるそうです。
「そういうのを、ばかの長糸と言うんだよ。糸を長くするんじゃなくて、まち針を上手に使うんだよ。」とさくらおばあちゃん。

まち針は縫う方向に対して垂直にうちます。くけ台を使いながら2枚の生地にたるみがないように気を付けてうちます。
ただし、引っ張り過ぎてつれないようにも気をつけないといけません。
それから、まち針を打つ順番にもコツがあるそうです。
例えば、この一番右の待ち針のところにかんばりをかませてまち針を打つとすると、一番右の白、一番左の緑、真ん中の青、その右の赤、緑と青の間の青の順番でうっていきます。
そうするとゆるみやたるみがなく、きれいに縫えるそうです。
ある程度の長さを縫い進めたら、次に縫うところにまち針をうつ、というのをくり返して進めていくのが縫い方のポイントだそうです。

4 縫い方のコツ③ 「縫い手よりこき手、こき手より折り手」

和裁は、基本的にはすべて手縫いなので、縫い方や縫う技術がとても重要です。もちろんプロとして仕事をしていたさくらおばあちゃんは、まっすぐ均等な間隔で縫えますが、着物を美しく仕立てあげるためにはほかにもポイントがあるそうです。

まずは「糸こきをしっかりとすることが大事だよ。」と言うさくらおばあちゃん。

ある程度の長さを縫ったら、糸こきをしてから次を縫い進めます。糸こきがしっかりできていないと、縫い目がつれてしまうことがあるのだそうです。
いくらまっすぐにきれいに縫えていたとしても、糸がつれてしまっていては見た目も着心地もよくなくなってしまいますね。
だから、糸こきが大切という意味で「縫い手よりこき手」というそうです。

それからもうひとつ大切なのが「折り手」。
この折り手というのは、キセをかけることを意味します。
キセをっまっすぐに、ちょうどよい深さでかけられると、仕立てあがりがとても美しくなります。

もちろん、縫うスキルや糸こきをおろそかにしてよいということではありません。
どちらもきちんとできた上で、最後の仕上げとしてキセが重要なのだよ、ということで、「縫い手よりこき手、こき手より折り手」と和裁の先生によく言われていたそうです。

キセをかけるときは、まずはしっかりと指で折り目をつけます。
折り目が戻らないように押さえておいて、あて布をしてアイロンをかけます。

背縫いのキセ・手で折り目を付ける
背縫いのキセ・アイロン

アイロンがかけられたら、表にかえして確認します。

・背縫いと内揚げ1

・背縫いと内揚げ2

・背縫いと内揚げ2

・背縫いと内揚げ3

5 まとめ

最近では、海外で縫製されたり、洋服のブランドが着物を手掛けたりしているものも見かけます。
なかには、ちょっと柄のでかたがもったいないなと感じるものもあります。
「柄合わせには時間をかける」ことは、一枚の着物を美しく仕立てあげることや、着る人のことを考えて仕立てるのにとても大切なことなのだと実感しました。

「ばかの長糸、上手のまち針」、「縫い手よりこき手、こき手より折り手」といったことも、仕立てのスキルアップや仕上がりの美しさを極めるためには欠かせないものですし、ことわざのように語呂がよいので覚えやすいですね。

さくらおばあちゃんは、和裁の先生が合格をだしてくれるまで何回もやり直しになったこともあると話していましたが、そういう経験の積み重ねによってプロの技術と心構えを身につけていったのでしょう。
大切な教えを常に心がけて仕立てができるのがプロフェッショナルなのでしょうね。

「働き者のきれいな手」…さくらおばあちゃんの手には、やさしさと思いやりがあふれているようです。

さくらおばあちゃんの手

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