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和裁の基本「運針」をマスターしよう!ベテランが教える上達のコツとは?

着物と和裁の3つの学び <初級編> さくらおばあちゃん直伝!運針をマスターする~

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和裁をはじめてみたいと思ったら、まずは何から取りかかればよいのでしょうか。好みの反物を選ぶところから、仕立てるものの寸法を決めること、布を裁つこと、そして仕立てには欠かせない運針をマスターするポイントをご紹介します。

こちらは和裁歴70年にもなるさくらおばあちゃんの和裁帳です。
和裁を習い始めたころから使っているもので、年季が入っていますね。
それにしても物持ちがよいことに驚きます。
ずっと大切にしてきたものだからなのでしょうね。

さくらおばあちゃんは先生のお家に和裁を習いに行っていたそうです。
お教室は畳敷きの広いお部屋で、同じ年頃の女の子たちが50人も60人も学んでいたそう。
まるでちょっとした学校のようですね。
「もう何十年も前のことだけど、帳面を見ればなんでも思い出せるよ。」と、にこにこしながら話してくれるさくらおばあちゃんに、和裁の基本、そして和裁に欠かせない運針について聞いてみました。

1 和裁をやってみたい!まずは何から?

着物を仕立ててみたいと思っている方、まずは何からはじめたらよいのでしょうか。
着物には、袷と単衣(ひとえ)というものがあります。
袷は、裏地がついてるもので、単衣は裏地のないものです。
袷を仕立てるのは和裁ビギナーにはちょっと難しいので、単衣からチャレンジするのがよさそうです。
浴衣や夏の着物、ウールの着物などが単衣になります。
生地の種類もいろいろありますが、シルクやウールよりも綿の生地の方が和裁ビギナーには扱いやすいので、浴衣から仕立ててみましょう。

反物

さくらおばあちゃんも、「はじめは浴衣を何枚も縫ったよ。」と言っていました。
それでは、好みの反物を選んでみましょう。
反物はネットでも買えますが、和裁ビギナーの方はお店で色合いや手触りなどを実際に確認してから買う方がいいかもしれません。
浴衣用の反物でも絞りがあるものは和裁上級者向けなので、それ以外のものがおすすめです。

2 寸法を決める

寸法表

さて、仕立てる前に必要なのが、寸法を決めることです。
さくらおばあちゃんの和裁帳にはこんなページがありました。
「着物各部普通寸法表」と題されていて、子ども用から大人用までの標準的な寸法が書かれています。

着物はオーダーメイドの洋服と同じで、着る人にあわせて寸法を決めます。
さくらおばあちゃんの和裁帳によると、大人の女性の標準的な身丈は4尺1寸。
だいたい155㎝くらいですね。
最低でも着る人の身長より少し長めでないときれいに着付けるのは難しいので、この長さだと今の大人の女性にはちょっと短いようですね。
まずは着る人の身丈や裄の寸法をチェックしましょう。

女性の場合、身丈は多少長くてもおはしょりで調節できるので大丈夫ですが、裄はぴったりが一番きれいです。
「首のぐりぐりから手首のぐりぐりまでが裄の長さになるんだよ。」と話すさくらおばあちゃん。まっすぐに立って、腕を斜め下の方に伸ばして測るように教わったそうです。

裄が標準寸法よりも長いときには、袖巾や肩巾の長さで調節するそうですが、「袖巾ばっかり長くでもかっこ悪いし、肩巾だけ長くすると斜めになっちゃうから、身頃の巾も見ながらちょうどいいように考えるんだよ。」と話してくれました。

ただ長さを決めればよいというわけだけはなく、どの部分をどのくらいにしたらきれいに仕立てあげられるのかということも頭に置いておかないといけないのですね。
勉強になります。

3 布を裁つ

寸法が決まったら、いよいよ仕立てにはいります。

「まずは、地直しをして反物を中表にくるくると巻くんだよ。」と、さくらおばあちゃん。
買ったままの反物は、たいてい外側に柄が見えるようになっているので、それを仕立てしやすいように準備していくのですね。
しわがあることもあるので、アイロンをかけてから巻くとよいそうです。
縦と横の布目がしっかりしてないと、あとで歪みがでてしまうのだとか。
何事も最初が肝心なのですね。

準備ができたら、次はつもっていきます。
「つもる」というのは、寸法に合わせて反物を折りたたんで、長さや柄を見ていく作業のことを指すそうです。
はじめは反物の端から袖をとっていきます。
肩山のところで折り返して1枚分。もう1回同じ要領で折り返して袖を2枚分とります。
次に身頃を2枚分、最後に衽や衿という順番につもっていくそうです。
そして柄の具合をみて、大丈夫なら裁っていきます。
和裁ベテランのさくらおばあちゃんでも、いざ生地にはさみを入れるときはやっぱり緊張するそうです。

裁断後はこのような感じになります。
すべて直線裁ちなので、パーツは全部長方形になっています。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、1番上の段が身頃、2段目の左が袖、右の上が衿、下が共衿、3段目が衽です。
右下に折りたたまれているのが余った生地です。
余った生地は、肩あてにしたり浴衣とおそろいの巾着を作ったり、いろいろ活用できるそうですよ。

4 運針をマスターする

着物を仕立てるのに運針は欠かせないスキルです。
和裁をはじめる前に運針の基本を押さえておきましょう。
右手の親指と人差し指で針を持ちます。
右手の中指に指ぬきをして、そこで針のお尻を押すようにしながら縫います。
和裁ビギナーの方には針の持ち方がちょっと難しいかもしれませんね。
慣れるとはやく縫えるのですが、この持ち方ができなかったらふつうのつかみ針という持ち方でもよいそうです。

右手は針を押し進めて、左手は布を上下させるように動かして縫い進めていきます。
さくらおばあちゃんによると、両方の手で軽く布を引っ張るようにしながら縫うのが上手に縫うポイントだそうです。
適度な強さで布に張りを持たせことで、つれたりたるんだりせずに縫っていくことができるのだそうです。

「縫っていくと右手に布がたまってくるから、そしたら糸こきをよくするんだよ。」とさくらおばあちゃん。運針に慣れないうちは、ゆっくりでもひと針ひと針ていねいに縫えればよいそうですよ。

さくらおばあちゃんたちの世代では、小学校でもお裁縫の授業があって、運針はそこで勉強していたそうです。
だから和裁の先生について習うころには、基本的な運針はすでにマスターしていたのだとか。
では、どうやって運針をマスターしたのかと聞いてみると、「運針用布っていうのがあったんだよ。」というさくらおばあちゃん。
運針用布というのは手ぬぐいくらいの大きさの布で、赤で縫い方に合わせたいろいろな線が書いてあったそうです。
その線にそって縫いながら運針や糸こきの練習をしていたそうです。

力がかからないところだったらこのくらいの縫い目で大丈夫だそうです。
背縫いや脇など力がかかるところは少し細かめに縫ってしっかりとさせます。
まっすぐに、均等な間隔で縫えるようになることがプロへの第一歩。コツコツていねいにという姿勢が大切ですね。
もし途中で糸が終わってしまったら…と聞いてみると、「玉どめはせずに1寸5分くらい重ねて縫うんだって教わったよ。」と教えてくれました。玉どめをしてしまうと、糸こきがよくできていないときに生地がつれてしまうことがあるからだそうです。なるほど。ちょっとしたことに思えますが、ここも和裁のポイントですね。

縫い目

5 まとめ

和裁の基本のいくつかをピックアップしました。
洋裁とも通じるところもあれば、和裁ならではの内容もありましたね。
特に、運針は和裁の基本ですので、しっかりマスターしておきましょう。
反物を選ぶというのも和裁ならでは。
自分用なら、自分好みの色や柄を選べばやる気もテンションもあがります。
仕事としてだけでばなく、家族にも着物を仕立ててきたさくらおばあちゃんのように、上手にできるようになったら、あの人に仕立ててあげようという気持ちを持つこともすてきですね。
反物をつもったり柄の具合を見たり、縫う工程に入る前にも大切な準備があることもわかりました。
布をサイズに合わせて切って縫うということは機械的にもできてしまいます。
でも、人の手で仕立てるということは着物そのものや着る人への想いがひと針ひと針に込められているように感じました。

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