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屋形11年ぶりとなる、宮川町・君翔さんの衿替えに密着 「令和の芸舞妓図鑑」特別編

屋形11年ぶりとなる、宮川町・君翔さんの衿替えに密着 「令和の芸舞妓図鑑」特別編

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去る6月4日、京都祇園・宮川町の置屋『本城』にて、君翔さんの衿替えが行なわれました。きものとでは、君翔さんの「舞妓最後の日」と「芸妓初日」の両日に密着し、衿替えを決意した彼女の本音に迫ります!

2024.07.15

よみもの

『京おどり』ポスターに抜擢! 宮川町・君翔さん 「令和の芸舞妓図鑑」vol.11

舞妓から芸妓になる「衿替え」とは

見世出しから5、6年を経て二十歳頃になった舞妓さんは、そのまま芸妓として生きていくか、花街を去るかの選択を迫られます。

芸妓になるということは、芸と接遇のプロフェッショナルの道を極めていく決意をすること。

屋形のおかあさんやお師匠さんたちからお声がかりがあり、決心した舞妓さんが芸妓さんになることを「衿替ええりかえ 」といい、それまでの赤い衿が白い衿に替わるため、そう呼ばれています。

舞妓さんの象徴ともいえる赤い衿

舞妓さんの象徴ともいえる赤い衿

芸妓になると白い衿へと替わる

芸妓になると白い衿へと替わる

君翔さんが、女将さんから「そろそろどうや?」と持ちかけられたのは、昨年の秋のこと。

「芸事は好きやけど、プレッシャーや責任が大きくて……」

と、答えを先延ばしにしていた彼女が、いよいよ衿替えを決意したのは2024年の『京おどり』が始まる直前でした。またそれは、暑くなるまでに衿替えを行なえるギリギリのタイミングだったといいます。

『京おどり』を目前に控え、ただでさえ忙しいなか、鬘の手配や衿替え用の着物の準備等、バックアップする女将さんもてんてこ舞いだったそう。

君翔さん

――衿替えを決意されたきっかけは?

去年12月に同期ふたりが先に衿替えしたこともあって、自分に務まるやろかと不安が大きくて、ほんまに悩みました。

でも、家族やおかあさん、姉さん方の支えがあり、いましかできひんことなのでやってみよう!と思い、「やりたいです」とお伝えしました。もちろん、いつもうちを支えてくださるお客様方の存在も、大きな決め手でした。

2023.12.17

よみもの

衿替えを経て念願の芸妓へ 祇園甲部・美羽子さん「令和の芸舞妓図鑑」vol.4

舞妓最後の髪型「先笄さっこう」について

衿替えが正式に決まり、3月中から鬘合わせなどの支度が始まりました。

春の『京おどり』を挟み、4月下旬から、衿替えの時に舞う『黒髪』のお稽古がスタート。

6月2日、舞妓として最後の姿で『黒髪』を舞う君翔さん

6月2日、舞妓として最後の姿で『黒髪』を舞う君翔さん

――『黒髪』のお稽古はいかがでしたか?

曲が長く、いままでに経験したことのない振付で、正直「これ、舞えるかな……」と心配でした。

一か月で出来るようになる?!と思いながら、お稽古から帰ってきてからも自主練習を繰り返し、毎日反省しながらも日々舞っていたら今日(最終日)になってた、という感じどす。

後ろ姿

衿替え直前は、舞妓特有の「おふく」ではなく、特別な髪型になります。

普段の「おふく」から、「奴島田(やっこしまだ)」へ。3日間だけのこの髪型は、正装時やお正月、始業式、八朔(はっさく)などで結うもの

普段の「おふく」から「奴島田(やっこしまだ)」へ。正装時やお正月、始業式、八朔(はっさく)などで結う

その後「先笄(さっこう)」に。古くは、結婚したばかりの女性が結った髪型で、既婚者の証だったお歯黒をつけて一週間を過ごす

その後「先笄(さっこう)」に。古くは、結婚したばかりの女性が結った髪型で、既婚者の証だったお歯黒をつけて過ごす

――「先笄」を結った感想は?

実は、舞妓の髪型で一番重いのは「やっこ」どす。その次が「先笄」。

どちらも気を抜くとつい後ろに傾きそうになるので、身体の前側を意識してしまって、度々、「顔上げて」と注意を受けました(笑)。

代々の姉さん方が受け継いできた鶴の簪は、「おかあさんが衿替前につくらはったもの。30年経っても、えぇもんは長保ちするんどすなぁ」と君翔さん

鶴の簪は「おかあさんが衿替前につくらはったもの。代々の姉さん方がつけてきはったのを身につけてうれしおした」と君翔さん

芸妓初日のタイムスケジュール

舞妓最終日の夜、「先笄」の髷を切る断髪式が行なわれました。君翔さんの4人の同期も駆けつけて、賑やかなひとときに。

――どんな想いで断髪式を迎えましたか?

頭結うのも大変やし、早く終わってほしいと思てましたけど……これでもう髪を結うことはないんやなぁと、少し淋しおした。

高枕なしで寝たのは久しぶりで、その夜はぐっすり眠れました。

そして迎えた、芸妓デビューの朝。

芸妓デビューの朝

6月4日、芸妓としての初日、君翔さんの一日といえば―

8:30 起床、朝食
10:30 お拵え
11:30 鬘合わせ
12:00 着付け
12:30 お盃
13:00 ご挨拶歩き(全お茶屋、事務所、髪結いさんなど約30軒)
14:00 帰宅後、家族団欒のひととき
15:00 取材
18:00 お座敷回り

なんとも目まぐるしい!

着付けのようす
こしらえ02

――初めての鬘はいかがですか?

自分サイズにフィットしているので、つけるとスイッチが入ります。

鬘合わせのときに、すっぴんで鬘をつけた姿を見て、おかあさんたちにも「映えるわぁ」「似合てるえ」と褒めていただいて安心しました。

鬘だけやのうて、歴代の姉さん方が着てこられた特別なお着物を着させてもろて、気持ちが引き締まります。

芸妓としての初舞いは『寿』。たった2日であどけなさが消え、凛とした、少し大人びた雰囲気に

芸妓としての初舞いは『寿』。たった2日であどけなさが消え、凛とした、少し大人びた雰囲気に ※特別許可をいただき、衿替え直後の舞を撮影

大きく「寿」の文字が

大きく「寿」の文字が

弊社からのお祝いの目録と一緒に

弊社からのお祝いの目録と一緒に

2021.03.02

よみもの

衿替え、そして妹たちの見世出しのこと 「京都・祇園甲部芸妓、佳つ雛日記!」vol.12

芸妓としてのこれからの目標

――衿替え、おめでとうございます。いまの率直なお気持ちをお聞かせください。

寄り添ってくれた家族が感動してくれはったのが、うれしおした。

5年前の見世出しのときはおこぼでこけたので、今回はこけんように!って言い聞かせてました(笑)。

5年前の見世出しのときの一枚。いまとなっては貴重な君綾さんの芸妓姿(現在は引退)

5年前の見世出しのときの一枚。いまとなっては貴重な君綾さんの芸妓姿(現在は引退)

――本城さんでの衿替えは、実に11年ぶりとのことですが……

はい。11年前は、うちの直の姉さんやった君綾さん姉さんどした。

甲斐性ある姉さんの恰好良さには、いまでも憧れてます。衿替えすることを報告したら、会いに来てくれはって、ほんまにうれしおした。

――最後に、これからの目標を教えてください。

みんなが「姉さん、姉さん」って慕ってくれるような、頼りがいのある芸妓さんになりとおす。会ったら気軽に声をかけてもらえる存在を目指して、芸事ももっと頑張っていきます。

以前呼ばれたお茶屋さんで「あんた、お三味線弾くんやってな」って言うてもらえて、すごくうれしおした。一層、地方さんとしても精進せな!と思いました。

「かわいい」より「キレイ」って言われる芸妓さんになりとおす。

2024年「京おどり」の会場入口に設置されていた自身の等身大パネルと♡の記念撮影

2024年『京おどり』の会場入口に設置されていた自身の等身大パネルと♡の記念撮影

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