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『徳川美術館展 尾張徳川家の至宝』サントリー美術館 「きものでミュージアム」vol.37

『徳川美術館展 尾張徳川家の至宝』サントリー美術館 「きものでミュージアム」vol.37

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尾張徳川家ゆかりの徳川美術館から刀剣、甲冑、茶道具、香道具、能装束など名品の数々が!国宝「源氏物語絵巻」、国宝「初音の調度」も特別出品。お見逃しなく。

2024.06.27

よみもの

「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」東京国立博物館 「きものでミュージアム」vol.36

尾張徳川家の至宝がサントリー美術館に

今回は、サントリー美術館で開催中の『徳川美術館展 尾張徳川家の至宝』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

展示風景

尾張徳川家は、徳川家康(1543-1616)の九男・義直(1600-1650)を初代とする御三家筆頭の大名家。

名古屋市にある徳川美術館は、その尾張徳川家に受け継がれてきた宝物の数々を所蔵し公開している美術館です。

家康の遺品「駿府御分物」をはじめ、歴代当主や夫人たちの遺愛品など、一万件あまりの貴重な大名道具・美術品のコレクションを所蔵しています。

左: 《徳川家康画像(東照大権現像)》 伝 狩野探幽筆 江戸時代 17世紀徳川宗春(尾張家7代)所用、右:《徳川義直画像 模本》桜井清香模写(1937、昭和時代) akemi撮影

左: 《徳川家康画像(東照大権現像)》 伝 狩野探幽筆 江戸時代 17世紀徳川宗春(尾張家7代)所用、右:《徳川義直画像 模本》桜井清香模写(1937、昭和時代) akemi撮影

所蔵品には国宝9件・重要文化財59件が含まれます。大多数が尾張徳川家が名古屋城の中で大切に保存してきたもので、今日まできわめて良い状態で保存されているのと、その来歴の確かさは特筆すべき点です。

今回、国宝《源氏物語絵巻》と、三代将軍家光の長女千代姫が婚礼調度として持参した国宝《初音の調度》も特別出品され、刀剣、茶道具、香道具、能装束など華やかで豪華な展示となっています。

尾張徳川家の歴史と格調の高い大名文化をぜひご堪能ください。

※作品はすべて徳川美術館所蔵

国宝《源氏物語絵巻》場面を入れ替え4場面展示

国宝《源氏物語絵巻》は、紫式部が著した『源氏物語』を絵画化した現存最古の作品です。

「引目鉤鼻」の人物描写、平安貴族の衣裳や生活様式の繊細な描写と色彩がみごとです。絵と書、料紙装飾が一体となった絵巻は華麗で美の結晶と言えます。

取材時は、《柏木(三)》が展示されていました。

光源氏の妻である女三の宮と、亡き柏木の不義の子・薫の五十日(いか)の祝いの様子が描かれています。光源氏は薫を抱き、過去の因縁におののきます。《柏木(三)》は現存する中で唯一、光源氏の姿を正面から描いているそうです。

本展で絵巻は傾斜して、展示ケースのかなり手前に展示されています。自分の手元で絵巻を観るような距離感で鑑賞できます。

表情や衣裳、室内の設えなどの描写、また書と料紙の美しさをじっくりとご覧ください。

本展では、4場面が2週間ずつ展示されます。展示期間を確認してお出かけください。

【各場面の展示期間】
・柏木(三):7月3日~7月15日
・横笛:7月17日~7月29日
・橋姫:7月31日~8月15日
・宿木(二):8月16日~9月1日

国宝 源氏物語絵巻 横笛 一巻 平安時代 12世紀 展示期間:7/17~7/29 広報画像より

国宝 《源氏物語絵巻 横笛》  平安時代 12世紀 徳川美術館 展示期間:7/17~7/29

国宝《源氏物語絵巻 橋姫》

国宝 《源氏物語絵巻 橋姫》 平安時代 12世紀 徳川美術館 展示期間:7/31〜8/15

国宝 《源氏物語絵巻 宿木(二)》 平安時代 12世紀  徳川美術館 展示期間:8/16~9/1

まなぶ

源氏物語の女君がきものを着たなら

刀は研がず江戸時代の刃文を

泰平の世にあっても、大名は武士として常に備えを怠らず、江戸時代を通して刀剣などの武器や甲冑を揃えました。

国宝《太刀 銘 長光》は、織田信長が所持し、明智光秀が安土城から接収、前田家から徳川綱吉に献上され、その後、尾張家四代吉通が徳川家宣より拝領しました。

国宝《太刀 銘 長光》 名物 津田遠江長光 鎌倉時代 13世紀 akemi撮影

国宝《太刀 銘 長光》 名物 津田遠江長光 鎌倉時代 13世紀 akemi撮影

最初を観たとき、刀の光が弱いように感じたのですが、徳川美術館では刀は研がず、あえて江戸時代の刃文をそのまま伝えているそうです。なるほど、確かにみごとな刃文です。歴史上の人物がこれを所持したと考えると、その重みを感じますね。

《刀 銘 村正》

《刀 銘 村正》室町時代 16世紀 徳川家康・徳川義直(尾張家初代)所持

「妖刀」伝説のある《刀 銘 村正》も展示されています。こちらも刃文がみごとです。

家康の祖父と父がこれで暗殺され、長男信康が切腹時にこれで介錯されたという「妖刀」伝説は、近年検証され後世の創作であった可能性が高いそうです。

展示風景

2023.03.23

よみもの

ハードボイルドなカフェで日本刀を握る!? 「都留詩織のきもので下町おでかけ帖」vol.11

武家の嗜み ー茶・能・香ー

大名には礼法や教養が求められ、特に茶・能・香は、儀礼や外交といった公的な場で行われ、必修の芸道でした。それらの道具類もみごとなものがそろっています。

茶道具の展示風景

茶道具の展示風景

江戸時代、茶の湯の道具は家の格を表したため、大名家では名物茶器を蒐集しました。ずらりと並ぶ茶道具の数々にため息がもれます。

重要文化財《 織部筒茶碗 銘 冬枯》

重要文化財《織部筒茶碗 銘 冬枯》江戸時代 17世紀 岡谷家寄贈

重要⽂化財《織部筒茶碗 銘 冬枯》は、桃山時代から江戸時代初期にかけて着物や漆工品の意匠として流行した「片身替わり」を思わせるように、黒釉をななめに掛けた茶碗です。色分けされたそれぞれに幾何学的な文様が描かれ印象的です。

《唐物茶壺 銘 金花》

《唐物茶壺 銘 金花》大名物 南宋-元時代 13-14世紀 六角氏・織田信長・豊臣秀吉・松井有閑・徳川家康・徳川頼宣(紀伊家初代)・松平頼純(伊予西条松平家初代)所持

《唐物茶壺 銘 金花》は古来名高い名物の茶壺であり、大きさと形に威厳があり、灰釉が黄金色に輝くさまが大変美しいです。

『信長公記』には、天正4年(1567)の安土城天守完成時に、「唐物茶壷 銘 松花」(大名物、重要文化財。徳川美術館蔵)とともに祝賀の品として信長へ贈られ、信長が喜んだことが記されています。その後秀吉が所持したのち、家康へと……来歴を知ると畏れ多くなります。

この他、《千利休竹茶杓 虫喰》や《油滴天目(星建盞)》など錚々たる茶道具の数々が並びます。

《千利休竹茶杓 虫喰》

《千利休竹茶杓 虫喰》 桃山時代 16世紀 徳川綱誠(尾張家3代)・松平義行(高須松平家初代)・松平義真(梁川松平家3代)所持 前期展示(7/3〜7/29)

《油滴天目(星建盞)》

《油滴天目(星建盞)》 南宋時代 12-13世紀

まなぶ

茶筅師の手しごと

能装束の展示風景

能装束の展示風景

能は、足利将軍家の庇護を契機として武家に愛好され、江戸時代には武家の正式な音楽すなわち式楽になりました。大名たちは、面や能装束を誂えました。

展示風景

まなぶ

気になるお能

左:《香木 手鑑香 銘 蘭奢待 十種名香の内》源頼政・太田道灌・東福門院和子ほか所用

左:《香木 手鑑香 銘 蘭奢待 十種名香の内》源頼政・太田道灌・東福門院和子ほか所用
上:《香木 羅国 仮銘 初春》蜂谷宗由仮銘、右:《香木 真那賀 銘 一声》徳川光友(尾張家2代)命銘、左:《香木 伽羅 銘 大伽羅》後西天皇勅銘後

室町時代に成立した香の文化は、江戸時代にも引き継がれました。上質な香木とともに、贅を凝らした香道具が求められました。

《蘭奢待(らんじゃたい)》は正倉院に伝来する特に名高い香木で、聖武天皇の遺愛品とされます。

歴代の権力者たちが欲しがり、足利義満や織田信長などが切り取りました。これほど小さなものが大切に大切に扱われてきたのですね。思わず、ここで深呼吸してしまいました。

秋の野蒔絵十種香箱》

《秋の野蒔絵十種香箱》 江戸時代 18世紀 智岳院邦姫(尾張家8代宗勝4女)所用 前期展示(7/3〜7/29)

《秋の野蒔絵十種香箱》は、十種香に用いる諸道具一揃いです。

密に金粉を蒔いた梨子地で、様々な技法で秋草が描かれています。こちらは、尾張家八代宗勝(むねかつ)の四⼥の婚礼調度でした。

《銀檜垣に梅図香盆飾り》

重要文化財《銀檜垣に梅図香盆飾り》江戸時代 17世紀 霊仙院千代姫(尾張家2代光友正室)所用

《銀檜垣に梅図香盆飾り》は、香盆に木が用いられているほかはすべて銀無垢です。各所に葵紋があり、唐草文や花菱亀甲文に桧垣と美しく装飾されています。

本展では、香道具もたくさん展示され、江戸時代にいかに香道が重視されていたかがわかります。

2023.12.23

よみもの

『山田松香木店』で私だけの“匂ひ袋”体験を 「京都できもの、きもので京都」vol.7

奥道具も逸品ぞろい

左: 重要文化財《 純金葵紋蜀江文皿》江戸時代 寛永16年 霊仙院千代姫(尾張家2代光友正室)所用、右:《純金葵紋牡丹唐草文盃》 江戸時代 寛永16年 霊仙院千代姫(尾張家2代光友正室)所用

左: 重要⽂化財《純金葵紋蜀江文皿》江戸時代 寛永16年 霊仙院千代姫(尾張家2代光友正室)所用、右:重要文化財《純金葵紋牡丹唐草文盃》 江戸時代 寛永16年 霊仙院千代姫(尾張家2代光友正室)所用

大名自身やその家族が「奥」とよばれる私的な生活の場で使用した道具、また教養を高め、趣味や遊びに用いた道具は「奥道具」と言われます。

衣裳

《白綸子地鼓に藤・杜若文打掛》江戸時代 19世紀 貞徳院矩姫(尾張家14代慶勝正室)着用 前期展示(7/3〜7/29)

こちらでは、奥で使われた衣裳や書、絵画、楽器など様々な道具がならびます。

《松橘蒔絵貝桶・合貝》

《松橘蒔絵貝桶・合貝》 江戸時代 安永9年 聖聡院従姫(尾張家9代宗睦嫡子治行正室)所用 前期展示(7/3〜7/29)

ぜひみなさまも会場にて、豪華な奥道具の数々をじっくりとご覧ください。

徳川美術館展 尾張徳川家の至宝

《朗詠屛風》近衛信尹筆 江戸時代 17世紀 前期展示(7/3〜7/29)

国宝《初音の調度》が最後を飾る

国宝《初音蒔絵旅眉作箱》

国宝《初音蒔絵旅眉作箱》 江戸時代 寛永16年(1639) 前期展示(7/3〜7/29)

寛永16年(1639年)、三代将軍徳川家光の長女千代姫(1637〜98)が、数え3歳で尾張徳川家二代光友に嫁ぎました。その際の婚礼調度は「初音の調度」として知られています。

「初音の調度」には、『源氏物語』第二十三帖「初音」に基づく「初音蒔絵調度」47件、第二十四帖「胡蝶」に基づく「胡蝶蒔絵調度」10件、その他の蒔絵調度や染織品、刀剣など13件、計70件が含まれ、平成8年(1996年)に国宝に指定されました。

国宝《初音蒔絵旅眉作箱》

国宝《初音蒔絵旅眉作箱》 江戸時代 寛永16年(1639) 徳川美術館蔵 前期展示(7/3~7/29) 

本展では前期に《初音蒔絵旅眉作箱》が、後期に国宝《胡蝶蒔絵将棋盤・駒箱》が展示されます。

さすが将軍の長女の婚礼調度だけあり、豪華で素晴らしく、当時最高峰の蒔絵の芸術作品です。葦手文字を散らした文学的意匠にもご注目ください。

鑑賞を終えて

展示風景

徳川美術館の所蔵品は、家康の遺品「駿府御分物」に始まりますが、それを記録した台帳に記載される道具の多くを四百年を隔てた現在でも現物と照合できるそうです。

明治維新後、多くの旧大名家がその財を散逸させていくなかで、きちんと後世に伝えようと財団を設立し、その後昭和10年(1935)に徳川美術館が開館しました。その結果、質が高く、保存状態がよく、伝来が明らかなすばらしいコレクションが今に伝えられることになりました。

尾張徳川家の至宝を館外で鑑賞できる貴重な機会です。ぜひお出かけください。

純金の調度に目を奪われる

この日の装い

この日の装い_帯回り

『源氏物語』と言えば牛車がつきもの。牛車の車を水に漬ける様子を描いた、片輪車文様の成謙の絽の付け下げ。

この日の装い_柄アップ
この日の装い2

そして《初音の調度》は婚礼道具ですから鏡は必需品と言うわけで、加納幸の鏡裏文様の夏帯を合わせました。

帯締めは道明の高麗組・信解品です。

この日の装い_お太鼓

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

ポスター画像

徳川美術館展 尾張徳川家の至宝

サントリー美術館(東京ミッドタウン ガレリア3F)
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2024_3/

日時:2024年7月3日(水)~9月1日(日) 10:00~18:00(金曜は10:00~20:00)
※8月10日(土)、11日(日・祝)、31日(土)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで

休館日:火曜日 ※8月27日は18時まで開館

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。
※会期中展示替えあり

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

ポスター画像

モネ&フレンズ・アライブ

日本橋三井ホール
https://monetalivejp.com/tokyo/

日時:2024年7月12日(金)~9月29日(日) 10:00~18:00 ※最終入場は閉館の60分前まで

ポスター画像

和のあかり×百段階段2024 ~妖美なおとぎばなし~

ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財 「百段階段」
https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/wanoakari2024

日時:2024年7月5日(金)~9月23日(月・休)
   11:00~18:00(最終入館 17:30)※8月17日(土)は17:00まで(最終入館 16:30)

休館日:会期中無休

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

◆ 読者プレゼント ◆

ポスター画像

さて、恒例の招待券プレゼント!
今回は『徳川美術館展 尾張徳川家の至宝』サントリー美術館の招待券を2組4名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/?hl=ja
◆X
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2024年7月29日(月)まで

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