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堀内將平さん INTERVIEW ”自分らしい”表現とは。「千紫万紅」vol.4

堀内將平さん INTERVIEW ”自分らしい”表現とは。「千紫万紅」vol.4

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バレエには確固たる美の基準がある。いまはそれをどうやったら壊せるか、自分らしさをどう表現できるかというフェーズにあるんだ。

2024.07.12

インタビュー

Episode Summer― 堀内將平さん 「千紫万紅」vol.3

堀内將平さん02

――『BALLET TheNewClassic 2024』という大事な公演前のお忙しい中、お時間をとっていただきありがとうございます。スタッフ一同ワクワクしています。

きもののモデルはずーっとやりたかったんです! 100の目標のうちのひとつなので、念願叶ってうれしいです。

――目標が100もあるのですか? 常に書き留めていらっしゃる?

そうなんです(笑)。

きもののモデルをやりたいと思ったのは日本に帰ってきてからかな。歴史があるし、きれいだし、現代の生活の中ではとても不便なものなのに、みんなが憧れる。生き抜いてきているもの、それこそクラシックなのでとても興味があります。

それと、僕を応援して下さっている方の中に毎回演目に合わせた帯をしてきてくださる方がいて、素敵だなってずっと思っていました。

堀内將平さん03

――目標の中にきものを入れていただいてとてもうれしいです。ほかにはやりたい役とか、行きたい場所とか、でしょうか?

やりたかったロミオ役は6年前くらいに叶ってしまいましたし、行きたい場所もだいぶ制覇しましたね。

去年かな、インドに行ったら”チャレンジングなことをする”のが好きになったんです。なので、次の目標はスカイダイビング(笑)。本当はやりたくないんですけど、やりたくないことをやりたいなと。

――インドに行ったら、チャレンジングな気質になってしまったのですね?

そうなんです。

『BALLET TheNewClassic 2024』もある意味そうで、もう、たいへん過ぎるし、挑戦すぎだなと思いながらも、やっぱりやりたくなっちゃうんです。

――『BALLET TheNewClassic 2024』では出演だけでなく舞踊監修もされていらっしゃいますね。

実際は舞踊監督に限らずさまざまなことをやっているので、海外含めダンサーとのやりとりとか、人との付き合い方みたいなものを学んでいますね。

バレエは総合芸術と言われるように、自分ひとりのチカラではできなくて、助けてくれる人たちにどう気持ちよく仕事してもらえるかがすごく大切。スタッフさんも出演者も『BALLET TheNewClassic 2024』にかける想いはそれぞれですし。

堀内將平さん04

――そういった経験、挑戦によって何か変化みたいなものは感じていますか?

バレエには「これが美しいです」という“美の基準”があるんです。

そこに収まろうと一生懸命がんばってきたんですが、いまは、それをどうやったら壊せるか、自分らしさをどう表現できるかというところにシフトしてきています。

やっとそんなフェーズに到達したかなという感じです。

――きものにも通じますね。着慣れてくると、どう自分らしさを出すかという段階になります。

伝統文化ってそういうものですよね。自分らしさだけでいいのか、その先にどうなるのかわからないですけど……

5年後にはまた違うことを言っているかもしれません(笑)。

――バレエダンサーは日々の身体づくりがとても大変なのではと思いますが、ルーティーンでなさっていることはありますか?

忙しくてできないこともありますが、普段は朝起きるとアイスバスに入って、瞑想して、ストレッチして……いいと言われることはいろいろやっていますね。食事も、お肉は食べないです。

――ペスカタリアンなのですよね、それはバレエのためにですか?

そうですね、お肉は身体の中で炎症を起こすそうなので。

アイスバスはアスリートの間ではかなり流行っていますね。瞑想は集中する時間をつくるためなのですが、編み物をしている時間もすごく集中できますね。

※ペスカタリアン(pescatarian)……肉類は食べないものの、魚介類は食べる菜食主義者

――編み物をなさるんですか?!

ちょっとだけ。あと、ビーズとか。

小さい頃から折り紙も好きでしたし、手作業は好きですね。日本に帰ってきてから茶道や和裁など、和の習い事にも行きました。

――茶道に和裁?! 意外な一面ですが、多才なのですね! 今日の浴衣は、堀内さんをイメージして染めてもらった綿紅梅です。とてもお似合いでした。着てみていかがでした?

墨流しという技法ははじめて知りましたが、おもしろいですね。手仕事の世界で、まさにオートクチュールですよね。

「こうやって着ないと見え方がよくないな」など、きもの姿での撮られる側の視点は考えたことがなかったので、新鮮でいろいろな学びがありました。

堀内將平_着物アップ

――初心者向けに『BALLET TheNewClassic 2024』の見どころを教えていただけますか?

バレエって台詞がないのでわかりづらいという方がいらっしゃるのですが、今回はガラ公演で特にストーリーがあるわけではないので、それぞれの視点で楽しんでいただければと思います。

ファッションを見ていただくのもいいし、音楽が好きな方は音楽を楽しんでいただいて、もちろんバレエダンサーの表現力なども。肩肘張らずに好きなところを好きなように見ていただけたらと。

――『BALLET TheNewClassic 2024』のコンセプトは「現代の価値観で表現するバレエ」ということですが、具体的にどのような趣向なのでしょう?

たとえば衣装があんなにキラキラしているのも200年前の照明下に必要だったから。今の時代はどうだろう?とか、格式ある王立バレエ団には壮大なフルオーケストラが似合うかもしれないけれど、そこをピアノとチェロだけにしてみたら?というような試みをやっています。

僕が普段スタジオで稽古するときはピアニストさんが弾いてくれるのですが、ピアノだけだとこんなにロマンチックなんだ!と気づいた瞬間があって。

――そういう意味で新しい解釈ということなのですね。それはとても楽しみです!

お姫様と王子様だけじゃない世界。

照明もフォトグラファーの方が入っているので、ダンサーの肉体を照明でどうやってきれいに見せるかにこだわっています。陰影が強くでていたり。

いままでのバレエとは違うものを見ていただけるのではと思います。

――とくにファッションは趣向を凝らしたものだとか?

衣装、素敵ですよ!

今回は全部アップサイクルで、古い衣装にハサミを入れてパッチワークみたいに作り直したのですが、たぶん世界初なんじゃないかな。僕が小さい頃に着ていた衣装も箪笥から出して渡しました。

『BALLET TheNewClassic 2024』2幕はバレエブラン(全員白い衣装)で、デザイナーの方が僕の着る衣装は全部僕のものでつくってくれました。

小さい頃に母がお金も手間もかけてつくってくれた衣装を蘇らせ、プリンシパルになった僕が着る、というストーリーごと仕立ててくれて。

――なんと! お母さまはさぞかし喜ばれたのではないでしょうか。

デザイナーさんから「お母さんが直した刺繡の跡とか、汗のシミとかって、どんなビジューよりも輝いていて価値があるんじゃないか」って。

それを隠すのではなく、デコレーションとして使いたいというのがあって、裏表逆に使ったり。すごく素敵にできました。

――きものに通じるものがありますね! 最後に、バレエをやっていてよかったと思うことは?

祖母が観にきてくれたり、家族に喜んでもらえるのはとてもうれしいです。

それと、あるとき「スポーツ選手は何故あんなに高額報酬なのか」という話をしていたときに父が「打率や数字だけじゃなく、子供たちに夢を与えていることに価値があるんだ」と。

それはバレエにも言えることで、もちろん大人もですが、子供たちが何かを感じてくれたり、誰かに何かを与えることができたらうれしいなと思います。

堀内將平さん05

――今日はお話をうかがってすっかり堀内さんのファンになりました。公演を楽しみにしています。お忙しい中本当にありがとうございました!

公演チラシ01
公演チラシ02

BALLET TheNewClassic 2024

「TheNewClassic=新しい定番」を提案するプロジェクト。全公演完売した舞台、待望の第2弾!

2024年8月2日(金)~3日(土)
新国立劇場 中劇場

公式ホームページ
チケット購入はこちら

浴衣

堀内將平_着物アップ

創作/恭平
髙橋孝之氏に師事し、現在は新潟県長岡市で墨流しブランドを展開。
今回の墨流しの綿紅梅は、スタイリングを手掛けた大竹恵理子さんが堀内将平さんをイメージして「墨流しに白いボーダーを入れたい」とリクエストして制作いただいたもの。

「千紫万紅」撮影チーム

堀内將平さん撮影チーム

撮影/笹口悦民
ドラマティックなライティング・表現力は各界より強い支持を受け、カルティエ、グッチ、ミキモト、ピアジェ、資生堂、トヨタなどの広告、ヴォーグ、ELLE、家庭画報、きものSalonなどの雑誌といった幅広い分野において第一線で活躍。

スタイリング・着付け/大竹恵理子
フリーランスの着物スタイリスト、着付師として、広告、CM、雑誌などの媒体を中心に活動中。『半幅帯の本(河出書房新社)』など著書多数。5歳から17歳までバレエを習う中で、衣装づくりに目覚めたという。

ヘアメイク/Eita
1990年単身渡仏。20年以上にわたりパリコレクションにて、シャネル、ディオール、イヴ・サンローランなど一流メゾンで活躍。カトリーヌ・ドヌーヴ、テイラー・スウィフトなどセレブリティを多く担当。母は日本舞踊の家元で自身も舞踊家。

取材・文/古谷尚子
編集者歴35年、元家庭画報特選『きものSalon』の編集長。現在は編集・ライター・商品プロデュース・プランニング・講演なども行う和文化コンシェルジュとして活動。

2022.11.03

よみもの

筆一本で魅せる線のぬくもり 「古谷尚子がみつけた素敵なもの」vol.11

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