
ニューヨークで着物を着るということ 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
ニューヨークでの着付けの仕事や日本画家の大竹寛子さんとの出逢いについて、また、中国メディアからのインタビューを受けて感じたことなどを綴ります。
とある着物イベントで知り合った日本の会社のニューヨーク支社長の男性でしたが、ご自身もステキな着物を着ていらしてとてもカッコよかったのを覚えています。
後日マンハッタンにあるオフィスにお邪魔させていただくことに。
残念ながら現在はクローズされておられますが、オフィスの中に畳の部屋があって和の空間が広がり、ニューヨークとは思えない本当にステキな場所でした。
日本にはたくさんいらっしゃいますが、ニューヨークでは、着付け・ヘア・メイクの3点セットをプロフェッショナルにこなせる技術を持った方が少ないそうで「手伝ってくれないか」とお声がけくださいました。
ふたつ返事でお受けしたのは、社長のお人柄、オフィスの空間のすばらしさ、そしてニューヨークではなかなかお目にかかれない上質なお着物を揃えていらっしゃったからでした。
その着物や帯に触れられて誰かにお着付けさせてもらえるだけで、こんなにうれしいことはないと思ったのです。
その後、初めて私がお着付けさせていただくことになった方が日本画家の大竹寛子さんでした。
現在は日本とニューヨークで大活躍中の寛子さんですが、当初1年間はニューヨークに住んで活動をされており、その間に個展を開催されました。
そのオープニングのお着付けとヘアセットをお任せくださったのです。
寛子さんにオフィスに来ていただき、畳のお部屋で試着をしながらコーディネートを考えるのですが、いつも間に入る社長自らがアドバイスをくださっていました。
お若い頃から上質な着物やスタイリングを見ていた社長はセンスが磨かれていて、その迷いのないアドバイスに私はいつも驚かされていました。
今でも本当に良い経験をさせていただいたと感謝しております。

寛子さんの個展の着物は、桜の花が一面に描かれた日本らしい華やかな着物に、それを引き立てるシンプルな帯、そこに帯揚げのグリーンをのぞかせることで春らしさを演出しました。
広くて明るい会場で一段と華やかに引き立っていました。
その後も、寛子さんがお着付けとヘアセットが必要な時にはお声がけいただき、お着物の雰囲気とヘアスタイルなどで微妙に着付け方を変えたりして、とても楽しい経験でした。

こちらはグレーの生地に作家さんが筆で素描きにて絵を入れたシンプルかつ大胆なお着物。
小物を紅色でまとめメイクもリップを赤にしていただいたので、ちょっとカッコよく着付けを。
ユニークな茶道家さんのイベントにてお手伝いされるとのことでしたので、主役を引き立てつつ紅色でさりげなく存在感を出したコーディネートです。
もちろん、こちらも社長の秀逸なアドバイスにて決定されました。

こちらは鯉のぼりが描かれたお着物。
ちょうど5月の節句の時期だったのでこの着物をお選びになりました。
ヘアスタイルも日本髪風にして着物の雰囲気に合わせてみました。
ニューヨーカーが大勢集まる場面でいつもお着物を選んでくださる寛子さんに感謝です!
その他にもありがたいことに、オフィスで中国のテレビ局からインタビューを受けしたりもしました。

着付けの技術を習得するのにどれくらいの修行が必要か、どんな時にニューヨークで着物を着るのかなどひとしきり聞かれ…なかでも印象的だったのが「中国では伝統的な民族衣装は現在ほとんど着る人はいないけれど、日本人は今でもよく普段から着物を着ている。それはどうして?」という質問でした。
なんだか、ハッとさせられました。
私たちは、結婚式や国際的なパーティなど特別なシチュエーションの時はもちろんのこと、カジュアルなお着物を日常に着る方もいます。
NYでは独立記念日に花火のイベントがあり、その際には浴衣の日本人もよく見かけます。
もちろん毎日着ているわけではないですが、私たちのご先祖たちがすばらしい技術をつくり上げ、それを現代まで引継ぎ、今もその伝統衣装を着続けていることはどんなに稀有なことか…日本で育ち、当たり前のようにその光景を見てきた私は、その質問をされるまで気づきませんでした。
振袖や訪問着を特別な日に着たり、小紋を普段ちょっと着てみたり、夏には浴衣を着て花火をみている日本の文化が、世界の人からするととても特別でどんなに尊いものかと、中国のインタビュアーに教えていただいたのです。
日本人の古き良きものを守ろうという気持ち、伝統に対する想いや愛情なのでしょう。

日本から着付け師のお友達がきた時にはみんなで浴衣に着替えてタイムズスクエアやブライアントパークあたりを歩きましたが、本当にいろんな人に声をかけていただきました。
今でも私たちがこうやって着物に当たり前のように触れ着られることはありがたいことで、それをニューヨークで着て世界の人に喜んでもらえるなんて、本当にステキなことですよね。
今は世界中が大変な時ですが、夏には落ち着き、浴衣を着てお出かけできるくらいになっていることを願っています。
シェア
BACK NUMBERバックナンバー
-
2021.04.30
連載記事
パリの着物屋、チャレンジングなフォトシュート! 「WORLD KIMONO SNAPS」 – FRANCE –
-
2021.04.30
連載記事
ドイツ式クリスマス・アドベントのための和洋折衷コーデ 「WORLD KIMONO SNAPS」 – GERMANY –
-
2022.04.20
連載記事
非日常にも日常のひとコマにも 「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –
-
2021.04.30
連載記事
スタイリングでより着物を愉しむ 「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –
-
2021.04.30
連載記事
「”KIMONO”商標登録にNo!」署名運動について 「WORLD KIMONO SNAPS」 – FRANCE –
-
2022.08.17
連載記事
地元福岡が繋ぐ博多織とニューヨーク 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2022.04.20
連載記事
着物にまつわるルールとは 「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –
-
2021.04.30
連載記事
保養地・Bad Langensalzaの日本庭園を着物で 「WORLD KIMONO SNAPS」 – GERMANY –
-
2022.09.20
連載記事
NYのアーティストから学ぶkimonostyling、着物の未来の形 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.04.30
連載記事
パリの着物屋、その後 「WORLD KIMONO SNAPS」 – FRANCE –
-
2021.04.30
連載記事
着物を”敬遠させるもの”と”奥深さ”「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –
-
2021.04.30
連載記事
Miki Yamanaka ”10日間着物チャレンジ” in NY! 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.04.30
連載記事
Kimono de Jazz!! Miki Yamanaka Jazzライブ配信 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.04.30
連載記事
着物を着ることが自分の世界を広げていく「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –
-
2021.04.30
連載記事
Brooklynスタイルvol.2 着物リメイク・3パターン「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.07.12
連載記事
オトナの夏着物 装いに涼をあらわす 「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –
-
2021.04.30
連載記事
Brooklynスタイル 腰紐アレンジ・3パターン 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.04.30
連載記事
伝統とカワイイが詰まった街・ブレーメンを浴衣で散歩 「WORLD KIMONO SNAPS」 – GERMANY –
-
2021.05.20
連載記事
ゆかたからはじめた海外着物生活 「WORLD KIMONO SNAPS」 – TAIWAN –
-
2022.04.20
連載記事
洋服と着物のコラボレーション 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.04.30
連載記事
マスクがファッションの一部になる日 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.04.30
連載記事
パリで着物の総合店をオープン! 「WORLD KIMONO SNAPS」 – FRANCE –
-
2021.04.30
連載記事
人生を変える成人式フォトシュート in NY! 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.04.30
連載記事
DIYの国・ドイツ流おうち時間の過ごし方 「WORLD KIMONO SNAPS」 – GERMANY –
-
2021.04.30
連載記事
NYファッションとkimono・夢が叶う時 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.04.30
連載記事
着物ウェディング Kimono Wedding in NY 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.05.29
連載記事
パリでひきこもり!自分のスタイル探し 「WORLD KIMONO SNAPS」 – FRANCE –
-
2021.04.30
連載記事
ニューヨークで着物を着るということ 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
-
2021.04.30
連載記事
着物で過ごすイースター Frohe Ostern! 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ GERMANY ‐
-
2021.04.30
連載記事
繋がって行く渡米2日目の出逢い 「WORLD KIMONO SNAPS」 ‐ NEW YORK ‐
LATEST最新記事
-
よみもの
特別展『蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児』東京国立博物館 平成館 「きものでミュージアム」vol.47
-
よみもの
ミスコンを通して日本文化を世界へ― ミス・スプラナショナルジャパン ナショナルディレクター 清田彩さん 「今、きもので輝くひと」vol.6
-
よみもの
着物好きで知られる東山アキコさんの自伝的エッセイが映画化!『かくかくしかじか』 「きもの de シネマ」vol.64
-
インタビュー
奈良×沖縄によるケミストリー。映画作家 河瀨直美さんの愛用品
-
まなぶ
皐月、元気をくれる緑と共に 「未生流笹岡家元に学ぶ、華やぎあるくらし」vol.9
-
よみもの
境内に立つホテルで心和やかに過ごす『ホテルオークラ京都 岡崎別邸』前編【YouTube連動】「紗月がゆく!着物で行きたい京の宿」vol.7
RANKINGランキング
- デイリー
- ウィークリー
- マンスリー
-
まなぶ
しびれるくらい粋でカッコいい!半幅帯の帯結び 「着物ひろこの着付けTIPs」vol.5
-
よみもの
大人の可愛らしさと、垢抜けたセンス。 ~夢訪庵・桝蔵順彦氏の世界~「帯に宿る、わたしだけの物語」vol.10
-
まなぶ
着物は「右前」「左前」どっち?覚え方のコツや注意点を解説!
-
コラム
今さら聞けない!アニメ『鬼滅の刃』に登場する柄・模様と、込められた意味
-
まなぶ
初心者でも一人でできる!旅館やお祭りなど簡単な浴衣の着付け方をご紹介!
-
まなぶ
浴衣帯の上手な合わせ方・結び方とは?簡単な帯合わせ・コーディネートのコツを解説!
-
よみもの
幕末好きの歴女でお三味線の名取 宮川町・とし真菜さん 「令和の芸舞妓図鑑」vol.6
-
よみもの
明るい日差しに映える、黄八丈の”まるまなこ” 「つむぎみち」 vol.2
-
よみもの
【Q3】帯の柄の格がよくわかりません 「いまさんの着物お悩み相談室」
-
よみもの
大人の可愛らしさと、垢抜けたセンス。 ~夢訪庵・桝蔵順彦氏の世界~「帯に宿る、わたしだけの物語」vol.10
-
よみもの
境内に立つホテルで心和やかに過ごす『ホテルオークラ京都 岡崎別邸』前編【YouTube連動】「紗月がゆく!着物で行きたい京の宿」vol.7
-
まなぶ
しびれるくらい粋でカッコいい!半幅帯の帯結び 「着物ひろこの着付けTIPs」vol.5
-
まなぶ
着物は「右前」「左前」どっち?覚え方のコツや注意点を解説!
-
インタビュー
奈良×沖縄によるケミストリー。映画作家 河瀨直美さんの愛用品
-
よみもの
幕末好きの歴女でお三味線の名取 宮川町・とし真菜さん 「令和の芸舞妓図鑑」vol.6
-
コラム
今さら聞けない!アニメ『鬼滅の刃』に登場する柄・模様と、込められた意味
-
まなぶ
着物の下着は何を着ればいい?おすすめのブラ・ショーツ・下着を紹介!
-
まなぶ
和服を普段着に!着物を着るメリットやおすすめの着物、選び方を紹介
-
よみもの
幕末好きの歴女でお三味線の名取 宮川町・とし真菜さん 「令和の芸舞妓図鑑」vol.6
-
よみもの
黒留袖をフォーマルから解放する 「きくちいまが、今考えるきもののこと」vol.95
-
よみもの
大人の可愛らしさと、垢抜けたセンス。 ~夢訪庵・桝蔵順彦氏の世界~「帯に宿る、わたしだけの物語」vol.10
-
よみもの
芸妓であれる日々に感謝 宮川町・千賀遥さん 「令和の芸舞妓図鑑」vol.18
-
まなぶ
着物は「右前」「左前」どっち?覚え方のコツや注意点を解説!
-
まなぶ
しびれるくらい粋でカッコいい!半幅帯の帯結び 「着物ひろこの着付けTIPs」vol.5
-
よみもの
世界遺産の西本願寺で宮川町・とし夏菜さんのスペシャルな撮影会に密着! 「令和の芸舞妓図鑑」特別編
-
よみもの
たくさんの感謝と愛に包まれて。人気芸妓・紗月さん、引き祝いを終えて祇園街を巣立つ
-
よみもの
【おうし座】ありのままで愛される華やいだ魅力 「12星座で選ぶ、わたしに一番似合う着物」vol.11