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嵯峨釈迦堂前の名店『嵯峨 おきな』の昼餉 「京都できもの、きもので京都」vol.13

嵯峨釈迦堂前の名店『嵯峨 おきな』の昼餉 「京都できもの、きもので京都」vol.13

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京都でお世話になっている方から「とても居心地よくておいしいお料理屋さんがあるのでいきましょう」とご一緒させていただいたお店。着物ファンには堪らない、隠れた名店です。

2024.05.20

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よみもの

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真夏日が続く京都

今年もすでに真夏日が続く京都、それでも嵐山までいくと、涼しい風が通り抜けひと息つけます。

嵐山散策のあとは、人混みを避けて数年ぶりに京料理の『嵯峨 おきな』へ。素晴らしいしつらえと夏の美味に、身も心も満たされました。

6月は私にとっての京都ハイシーズン

滴り満ちる木々の緑はこの季節ならでは

行楽シーズンが終わって、本格的な夏が来る前の6月は、毎年何かしら用事をつくって京都へ向かいます。今年は嵐山へ足を伸ばしました。

桜も紅葉も素晴らしいけれど、山の間を抜け川を渡ってそよぐ涼風と、滴り満ちる木々の緑はこの季節ならでは。

母を連れて天龍寺や野宮神社、竹林の小径を歩いたことは、数少ない親孝行の一つでした。コロナ禍前に福田美術館に駆け込んだことも懐かしい思い出。

そして、京都でお世話になっている方から、

「とても居心地よくておいしいお料理屋さんがあるのでいきましょう」

とご一緒させていただいたお店がこちらです。

京料理の『嵯峨 おきな』

10年前よりミシュラン一つ星を獲得、着物ファンには堪らないエッセンスもたくさん。お料理もお酒も麗しく、カウンターでお隣になったお客様とも楽しく過ごさせてもらい、つくづく佳き夜になりました。

また伺いたいと思っていたらコロナ禍で旅も会食もままならず。今年ようやく再訪が叶いました。

京料理の『嵯峨 おきな』

しつらえは目に心地よく、季節の一品料理が五臓六腑に沁みます

人間国宝の志村ふくみさんの書

玄関の表札のやわらかな書は、染織家でありこの地に芸術学校『アルスシムラ』を開校した人間国宝 志村ふくみさんの書。

暖簾は志村ふくみさんのお嬢さんである染織家・志村洋子さんの藍の染織り。看板の木は大好きな木工作家・佃眞吾さんの手によるもので、まずは玄関先だけで感動しました。

暖簾は染織家・志村洋子さんの藍の染織り

店内は、以前来たときより広々と開放的に。

店内は以前来たときより広々と開放的に。

「建物は祖父の代から変わらずですが、2020年に改装したんです。いまは一人で切り盛りしているので、厨房を対面にして、席から近いところで調理できるようにしました」

と店主の井上洋平さん。

店主の井上洋平さん

『嵯峨 おきな』店主 井上洋平さん

使い込まれた色合いがカッコいい耐火煉瓦は、唐津の窯元で長年使われてきたもの。棚やカウンターの折敷は佃眞吾さんの作です。

折敷は佃眞吾さんの作

とっておきのお軸は、お客様でもある細川護煕さんの『蓮子』、裂は志村ふくみさん。思わず手を合わせて拝みました。

細川護煕さんの「蓮子」、そして裂は志村ふくみさん
志村ふくみさんの箱書き

ひと心地ついたところに出されたのが、夏の定番「じゅんさいに長芋素麺」

夏の定番「じゅんさいに長芋素麺」

シャンパングラスに供されたつるりんぷちっとしたじゅんさいと、ごく細く長く素麺のように切られた長芋のシャキッとしたなめらかな舌触りで、一気に汗が引いていきました。

シャンパングラスに供されたつるりんぷちっとしたじゅんさい

「夏野菜の冷たい炊き合わせ」も、程よく冷えた野菜の滋味が胃の腑に染みわたり、生き返るような心地に。

「夏野菜の冷たい炊き合わせ」

こうして夏の絶品をいただくと、京都の暑さはおいしいものをよりおいしくする脇役なのかも?と思うくらいです。

夏の絶品をいただく

いつか友人の織った着物を着て、一緒に訪ねたいなあ

いつか友人の織った着物を着て、一緒に訪ねたいなあ
いつか友人の織った着物を着て、一緒に訪ねたいなあ

今年は春に『アルスシムラ』の卒業展が京都文化博物館で開催されました。

かつて仕事仲間でもあった関西在住の友人が2年間の本科過程を修了し、その作品が展示されるとのことで観にいきました。

同世代の彼女から「毎日2時間以上かけて嵯峨に通うことにした」と聞いたときはびっくりしたと同時に、大いに勇気をもらったものです。

店内は以前来たときより広々と開放的に。

それから2年、卒業展の作品もとても好みでした。その友人も『おきな』の常連さん。

いつか彼女が織った着物を着て、おいしいお料理とお酒をご一緒したいな!というのが私のこの先の夢でもあります。

おきなの面
びっくりしたと同時に、大いに勇気をもらったものです
おいしいお料理とお酒をご一緒したいな

店主 井上さんがしたためるお品書き。文字のユニークさに、お人柄が垣間見えます

今日の装い

今日の装い

夏日の嵐山に選んだのは、信州上田『まつや染織工房』小山憲市さんの「絹の風」です。

小山さんは伝統の上田紬を受け継ぎながらも、現代にマッチした糸づくりにこだわり、特に単衣から夏にかけてどうしたら心地よく美しい紬ができるかをここ数年考えてこられました。

4種の絹糸を経緯に組み、シャリ感と透け感を出した薄い紬は軽くて涼しく快適。

半衿はサークル柄の刺繍入り

6月ですので、透け感があまり出ないように、下に濃色に染めた麻の長襦袢を。

半衿はサークル柄の刺繍入り、水を思わせる色と柄に季節感をそれとなく感じさせました。

帯は紗合わせ、いわゆる無双帯。

帯は紗合わせ、いわゆる「無双」の帯。帯地に川に泳ぐ鮎の姿が描かれ、上に重ねた紗の生地には笹が描かれています。

二枚の生地を重ねることで一幅の絵になる。見た目に涼しく軽やかで、この季節ならでは。嵐山と桂川の景色にも似合うかな?と選びました。

切子の帯留め

三分紐に通した切子の帯留めは、夏のお気に入り。小川郁子さんの切子を松原智仁さんが銀で仕上げたクリアな作品。

バッグはナンタケットバスケット

バッグはナンタケットバスケット、日傘は『栗山工房』の麻地、和染紅型です。ちょっと個性的な色柄に一目ぼれ、この夏はこの傘の出番が増えそうです。

はきものは長時間はいても疲れない『神田胡蝶』の高反発下駄
、メンテナンスから戻ってきてすっかりきれいになりました。

撮影/弥武江利子

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