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「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」東京国立博物館 「きものでミュージアム」vol.36

「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」東京国立博物館 「きものでミュージアム」vol.36

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東京国立博物館・表慶館で開催中。カルティエが日本に最初のブティックを開いてから50年を記念し、メゾンと日本を結ぶさまざまなストーリーが展開されています。

2024.06.19

よみもの

『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』 東京都庭園美術館 「きものでミュージアム」vol.35

2つの絆を通して見える、美と芸術の世界

カルティエが日本に最初のブティックを開いてから50年を記念した展覧会が、東京国立博物館・表慶館を舞台に開催されています。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

表慶館前

カルティエは、1847年にパリでルイ・フランソワ・カルティエによって創立されたラグジュアリーメゾン。世界各国の王室や世界中のセレブリティから愛されています。

またカルティエ現代美術財団は1984年にカルティエによって創設され、あらゆる分野の現代美術を世界に広めることをミッションとしています。

本展では、

「メゾン カルティエ」と日本

「カルティエ現代美術財団」と日本のアーティスト

という2つの絆を通して見える、美と芸術の世界を展示。日本の伝統的な建築や工業デザインを反映させた作品を多く観ることができます。

会場となる表慶館は、1909(明治42)年、当時の皇太子(後の大正天皇)のご成婚を記念し建築されました。

東京国立博物館 表慶館

東京国立博物館 表慶館 会場オフィシャル写真より © Cartier

中央と左右に美しいドーム屋根をいただくネオ・バロック様式の建築で、左右対称の構造を持ちます。東博の敷地内にある展示館の中でも、最も古い建物となります。

会場装飾は、Studio Adrien Gardère(スタジオ アドリアン ガルデール)が手がけました。右側の展示室では、畳や和紙、木材など日本の素材が多く使われ、床の間に飾られているかのような演出もあります。メゾン カルティエの日本の文化に対する敬意が感じられるとともに、歴史的建造物である表慶館をうまく活かしています。

澁谷翔《日本五十空景》

左右の展示エリアをつなぐ中央の広間の展示風景 (澁谷翔《日本五十空景》 2024年 )

伝統的な日本の文化に着想を得た「カルティエ コレクション」(メゾンのヘリテージコレクション、1983年創設)やこの展覧会のために貸与されたジュエリーや貴重な資料などが展示され、その煌びやかな世界に目を奪われます。

展示風景

かわいらしい動植物モチーフの作品が並ぶ展示風景

左側の展示室には、カルティエ現代美術財団と国内外のアーティストたちの作品が。財団が多くの日本人アーティストと深くかかわってきたことがわかります。

170 点を超える「カルティエ コレクション」と個人蔵のジュエリーや貴重な資料、150点以上の現代アーティストによる作品が展開されています。

展示風景

170 点を超える展示品

カルティエの日本へのまなざし

Room 1の展示風景

ルイ・カルティエは、美術愛好家でコレクターでもあり、日本の美術や書物も蒐集していました。そしてメゾンのデザイナーたちは、それらからインスピレーションを得た作品を多く生み出したのでした。

ルイ・カルティエの日本びいきがわかる展示風景

ルイ・カルティエの日本びいきがわかる展示風景(《ルイ・カルティエ夫人のためのオークションカタログ》やジークフリート・ビング 『芸術の日本』第1巻など)

印籠やヴァニティーケースなど日本から影響を受けた作品

印籠やヴァニティーケースなど日本から影響を受けた作品

最初の展示室には、印籠から着想したヴァニティーケースや手鏡の形の置時計など日本から影響を受けた作品がならびます。鳥居に想を得たミステリークロックの上にはなんとビリケンさんが!

ビリケンさん

《大型の「ポルティコ」ミステリークロック》1923年

《時計付きデスクセット》は、神社風の建物に狛犬も。

時計付きデスクセット

《時計付きデスクセット》 1931年

こんなものまでカルティエが!と思うような作品も並び、思わず頬が緩みます。もちろんそれらも非常に美しく、細かな細工が施されている点はさすがカルティエ!とうなります。

そして日本の型紙もまた、カルティエのデザイナーたちにとってインスピレーションの泉となったよう。

《ブローチ》 カルティエ パリ

《ブローチ》 1907年

青海波のブローチには和風の美しさがあり、きものにも似合いそうです。帯留にしたら素敵ですね。

ほかにも鱗模様や波模様など、きもの好きにとってお馴染みの模様も陳列作品の中に発見することができます。

日本古来の藤は、19世紀末にヨーロッパに紹介され、カルティエの作品づくりにも影響を与えました。

《2本のフジ ブローチ》 カルティエ

左:《ブローチ》 1903年

《ブローチ》は、連結構造により非常にしなやかに動きます。宝石のセッティングに定評のあるカルティエならではの完璧な技術が、ここで生きています。

展示会場では、デザインの元になったと思われる藤の絵があるジークフリート・ビング著『芸術の日本』第1巻とともに展示され、なんとその向かいには、杉本博司の『春日大社藤棚図屏風』(2022年)が共鳴するように展示されており、幻想的です。

《2本のフジ ブローチ》 カルティエ

《ブローチ》の展示風景

杉本博司 《春日大社藤棚図屛風》

杉本博司 《春日大社藤棚図屛風》 2022年

日本におけるカルティエの展覧会は、東京スパイラルホールでの開催(1988年)を皮切りに、過去5回開催されています。今回は、それらの展覧会で展示されたアイコニックな作品も展示されています。

ウィンザー公爵夫人来歴の《「 パンテール」クリップブローチ》や、モナコ公国グレース公妃来歴のネックレスなど……まばゆいばかりのコレクションも並びます。ぜひお近くでじっくりご覧くださいね。

「 パンテール」クリップブローチ カルティエ パリ

《「パンテール」クリップブローチ》 1949年
カルティエからウィンザー公爵に販売された立体的なパンテール作品の2作目。来歴:ウィンザー公爵夫人(1896-1986)

《ネックレス》 カルティエ パリ

左上:《ネックレス》 1953 Monaco Princely Palace Collection 来歴:A. モナコ公国グレース公妃(1929–1982)

《ネックレス》 カルティエ パリ

《ネックレス》 1953 Monaco Princely Palace Collection
来歴:A. モナコ公国グレース公妃(1929–1982)

「スクロール」 ティアラ カルティエ パリ

上:「スクロール」ティアラ 1910年
来歴:ベルギー王妃エリザベス(1876-1965)
下:ソートワール カルティエ パリ、 1928年( ペンダント)/1929 年(チェーン)

こちらのソートワールタイプのネックレスは、分割して、チョーカー型ネックレスとブレスレットとしての着用もできるように作られています。流行によって、別の使い方もされたのですね。

「スネーク」ネックレス カルティエ パリ

「スネーク」ネックレス 1968年

マリア・フェリックスの「スネーク」ネックレスは、過去に日本で開催されたカルティエの全5回の展覧会で展示されました。象徴的な作品として今回も再び展示されています。

煌びやかなジュエリーの中には、カルティエ タンク ウォッチの100周年を祝福する展示の際に香取慎吾さんが制作した作品や、2018年にカルティエのイベントにて発表された《Frozen Cloud 》の一部なども展示され、カルティエの世界を彩ります。

左:香取慎吾 《時間が足りない》 2017年 作家蔵

香取慎吾《時間が足りない: need more time》 2017年

レアンドロ・エルリッヒ 《Frozen Clouds 》2018年 作家蔵

レアンドロ・エルリッヒ《Frozen Cloud 》展示風景

右側の「メゾン カルティエ」の展示エリアにおいても階段ホールには、束芋のデジタルインスタレーションや杉本博司の彫刻のアートが展示されいます。

束芋《flow-wer arrangement-》

束芋《flow-wer arrangement-》 2018年

本展が「メゾン カルティエ」のジュエリー類と「カルティエ現代美術財団」とゆかりのあるアーティストの作品がひとつの展覧会で初めて一堂に会することを象徴しています。

カルティエと日本人アーティスト

写真作品が並ぶ展示風景

ウィリアム・エグルストン(左)と森山大道(右)の作品が並ぶ展示風景

カルティエ現代美術財団は、多くの日本人アーティストと密接な関係を持ってきました。

展覧会の開催から出版物の刊行、カルティエ財団のための制作依頼から作品の購入にいたるまで、財団がさまざまな分野のクリエイションをどのように結びつけてきたのか、そのユニークな手法を垣間見ることができます。

横尾忠則、杉本博司、三宅一生、森村泰昌、村上隆、北野武……と大御所が並ぶと同時に、松井えり菜など新進アーティストの作品も。そしてその作品群も、絵画・写真・建築・デザイン・あるいは映像などと、実にさまざまなジャンルが並びます。

松井えり菜の作品展示風景

松井えり菜の作品展示風景

横尾忠則が描いたポートレートシリーズ20点には、カルティエ財団が長年にわたってコラボレーションを続けてきた日本人アーティストを中心に描かれています。

横尾忠則 ポートレートシリーズの展示風景

横尾忠則 ポートレートシリーズの展示風景

さまざまなタッチと色遣いによるポートレートはモデルの個性をよく表現していますね。

1998年開催の『Making Things』展について三宅一生は、「私はここで生まれ変わりました。カルティエ財団が、変わる可能性や、考える自由をもたらしてくれたからです」と後年コメントしたそう。財団の基本理念がよくわかるものと言えます。

三宅一生の作品が並ぶ展示風景

三宅一生の作品が並ぶ展示風景

さまざまなアーティストによる、さまざまな手法の作品群。

その多様性は鑑賞者の気持ちを明るくするものが多く、普段は現代アートになじみのない人でも純粋に楽しめることでしょう。

Room5の展示風景

Room5の展示風景

ビートたけし作品展示風景

ビートたけしの作品展示風景

杉本博司 《数理模型》

杉本博司 《数理模型023 回転楕円面を覆う一般化されたヘリコイド曲面》 2023年

荒木経惟の作品の展示風景

荒木経惟 Hi-Nikki (Non-Diary Diary) 2016

ビートたけし「Untitled」

ビートたけし《Untitled》 2023年

ポートレートが並ぶ展示風景

横尾忠則、荒木経惟、森山大道のポートレートが並ぶ展示風景

中央:村上隆 「オレたち、四角い、ひょうきん族」2018年 作家蔵

中央:村上隆 「オレたち、四角い、ひょうきん族」2018年

最後に

本展では、左右対称の構造をなす表慶館を舞台に、カルティエと日本、そしてカルティエ現代美術財団と日本のアーティストという2つの絆をめぐる様々なストーリーが展開されていました。

表慶館内にて

表慶館内にて

カルティエの作品に日本がどのような影響を与えたのかがよくわかり、大変興味深いものでした。また、カルティエ現代美術財団が、多くの日本人アーティストと友好な関係を築いてきたことをも知ることができました。

2つの方向からのアプローチにより、カルティエのことをよりよく知ることができる展覧会。日本でブティックを開いて50周年を記念するのにふさわしい内容でした。ぜひお出かけください。

ミュージアムショップ

この日の装い

この日の装い

カルティエと言えばジュエリー、ジュエリーと言えばダイヤ。

……というわけで、ダイヤ柄の加納幸の紋紗の着物と日本刺繍の帯でコーディネート。道明組紐教室で組んだ唐組の帯締めもダイヤ柄です。

この日の装い 帯回り
この日の装い 帯回り

根付けはハンドメイドで、コットンパールとジルコニアで作ったキラキラのものにしました。

この日の装い

撮影/五十川満

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今回ご紹介の展覧会情報

ポスター画像

カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話

東京国立博物館 表慶館(東京・上野) 
https://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=5&id=11080

日時:2024年6月12日(水)~2024年7月28日(日)
    9:30~17:00 金・土曜日は19:00まで ※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日、7月16日(火)※ただし、7月15日(月)は開館

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

『ロートレック展』ポスター画像
《ディヴァン・ジャポネ》

トゥールーズ=ロートレック 《ディヴァン・ジャポネ》 1893年 The Firos Collection

トゥールーズ=ロートレック 《『ラ・ルヴュ・ブランシュ』誌のためのポスター》 1895年 リトグラフ The Firos Collection

フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線

SOMPO美術館
https://www.sompo-museum.org/

日 時:2024年6月22日(土)~9月23日(月・祝)
10:00~18:00(金曜日は20:00まで)
※最終入場は閉館30分前まで
休館日:月曜日(ただし7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館)

※画像写真の無断転載を禁じます

111年目の中原淳一

渋谷区立松濤美術館
https://shoto-museum.jp

日時:2024年6月29日(土)~9月1日(日) ※会期中、一部展示替えあり
前期:6月29日(土)~8月4日(日)
後期:8月6日(火)~9月1日(日)
10:00〜18:00 (金曜日は20:00まで)
※最終入場は閉館30分前まで

休館日:月曜日(7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)、8月13日(火)

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

◆ 読者プレゼント ◆

『ロートレック展』ポスター画像

さて、恒例の招待券プレゼント!
今回は『フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線』SOMPO美術館の招待券を5組10名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/?hl=ja
◆X
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2024年7月1日(月)まで

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