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私だけのノートと筆記具 『THE WRITING SHOP』 「京都できもの、きもので京都」vol.12

私だけのノートと筆記具 『THE WRITING SHOP』 「京都できもの、きもので京都」vol.12

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革張りのジャーナルノートは、さまざまなデザインや仕様があり、ずいぶん迷いましたが、私がクラッチバッグのように持った姿を見て、花恵さんが「あら、この色、陽子さんの着物にとっても似合うわ」と勧めてくれたムラ染めの深いグリーンのカバーに決めました。

2024.04.13

よみもの

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よみもの

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『THE WRITING SHOP』

仕事柄、さまざまな文具を使ってきましたが、個人的な覚え書き、私信のための筆記具とノートが欲しくて『THE WRITING SHOP』を訪ねました。

THE WRITING SHOP

特別なペンと革張りのノートが、日々を彩ってくれます。

手紙を書くのに適した、味わいのあるペンが欲しくて

最近の編集者やライターは皆さん、iPadで音声を録音して即座に文字起こしをしたり、タッチペンやキーボードでメモしたりと、ハイスペックを駆使していてすごいなあと感嘆します。

ボールペンとノートの手書き派

私はいまだにボールペンとノートの手書き派で、インタビューの際にも録音を取らないと言うと、同業者たちは「信じられない」と、その前世紀っぷりに呆れられます。

そんな私が長年取材で使っているのは、銀座伊東屋から賞品として贈られた名入りの『ロメオNo3』というボールペン。

書き味はいいけれど、筆跡が男性的で、私的なものを書くのにはちょっとビジネスっぽいなあ……と感じていました。

THE WRITING SHOP

そんなとき、Instagramでフォローし合い、呉服店のイベントでお会いしたことのある素敵なマダムが、『THE WRITING SHOP』のペンを愛用していることを知りました。

調べてみたら、以前に覗いたことのある美しいお店、「やっぱりあそこだわ」と確信。すぐさま、訪問することを決めました。

ボディの素材や色を選んでオーダーすることができるイタリア製のペン

花恵さん

オーナーの花恵さん

ショートカットにシックな黒い服、真っ赤な口紅がお似合い。

オーナーの花恵かえさんは、その佇まいと詩を口ずさむようなお話の仕方が優美で、お店という舞台に立つ女優さんのよう。

ペンの書き味を試す

ひとつひとつの商品について丁寧にご紹介くださり、ペンの書き味を試すころには、すっかり花恵さんの世界に引き込まれ、魅了されていました。

ペンの書き味を試す

イタリアの職人の手仕事によるレジン(樹脂)製のローラーボールは、筆跡に繊細な味わいがあり、万年筆の趣きとボールペンの機能性を持ち合わせています。

ボディは18色、オーダーするお客様が多いそうですが、私は現品のなかに好みの色合いと仕様のものを見つけ、その場で購入しました。

大人っぽい赤とゴールドの組み合わせ

大人っぽい赤とゴールドの組み合わせ

軸の太さやボディの重さのバランスが私の手にちょうどよく、キャップを左手に握り込ませ、紙にペンを走らせるとき、大人っぽい赤とゴールドの組み合わせが目を楽しませてくれます。

他にも万年筆やペンシル、ボディも革製や水牛製、名前が入れられるシルバーキャップなど、オーダーメイドの愉しみが詰まっています。

オーダーメイドの愉しみが詰まっています

「きもの帖」を作るために革張りのノートをセレクト

革張りのジャーナルノートは、さまざまなデザインや仕様が

革張りのジャーナルノートは、さまざまなデザインや仕様があり、ずいぶん迷いましたが、私がクラッチバッグのように持った姿を見て、花恵さんが「あら、この色、陽子さんの着物にとっても似合うわ」と勧めてくれたムラ染めの深いグリーンのカバーに決めました。

ムラ染めの深いグリーンのカバー

赤いベルトがポイント、まるで帯に効かせた帯締めのようで、洒落ています。

ノートの紙は100%コットンのイタリア・アマルフィーの手漉き。ローラーボールのインクの乗りもよく、和紙にも通じるテクスチャーは温かみがあります。

ノートを手にして

私が着物のはぎれを貼って記録にしたいと話したら、花恵さんが「この紙なら糸で縫い付けることもできるのよ」とアドバイスをくれました。

花恵さんと相談

赤い糸ではぎれを縫いつけたらいい感じ。糊やテープで貼るより、気持ちがこもります。

はぎれのない着物や帯は、色鉛筆で絵を描こうかな?と考えています。

赤い糸ではぎれを縫いつけたらいい感じ

撮影/山崎陽子

思うところがあり、「わたしのきもの帖」を作ることにしました。

私が亡くなった後に、遺したものがどんな由来伝来なのかを記録しておけば、処分の際に役立つだろう、頭がしっかりしているうちに書き留めておかなければ……と。

「わたしのきもの帖」を作ることにしました

4人の父母を見送ったいま、そして自身が前期高齢者となったいま、やるべきことのひとつだと思い立ちました。

そんなときに、このハンドメイドのジャーナルノートと出合ったのです。そっと背中を押してくれたように感じました。

そんなときに、このハンドメイドのジャーナルノートと出合った

「この指とまれ!」とお店を開いて25年、花恵さんは70歳になります

名刺やカード、便箋封筒類、ノートや筆記具は、ヨーロッパの職人による手仕事とショップオリジナルのハンドメイドがミックス。

商品はヨーロッパの職人さんによるハンドメイド
商品はヨーロッパの職人さんによるハンドメイド

私の求めたノートは、ヨーロッパのコットンペーパーを使い、ショップの工房で装丁し、手染め、手縫いした革のカバーがつけられています。

どのような伝手があったのでしょうか?とお聞きしたら……

花恵さん

「きれいなグリーティングカードがほしくてヨーロッパの見本市に出かけたのが最初。そこで出会った工房の職人さんと個人対個人の関係性を築いてきました。なんの伝手もない45歳からのスタートでした。

いま活版印刷で名刺を作っていますが、それも『花恵さん、お名刺いただける?』と言われたのがきっかけ。名刺を作るなら活版の文字がいいなと思って、古い機械を買ってメンテナンスして使っているんですよ」

愛用しているものだけを選りすぐり
商品はヨーロッパの職人さんによるハンドメイド
商品はヨーロッパの職人さんによるハンドメイド

自分が心から好きで愛用しているものだけを選りすぐり、お客様のオーダーを彼の地へ依頼し作ってもらう。

時間も手間もかかるけれど、お客様は待つ時間も楽しみにしてくれるそうです。そうして手にしたものだから、愛着もひとしおでしょう。

「数字は勲章よ」と、年齢を隠しません。

「この指とまれ」とお店を開いて25年、花恵さんは今年70歳に。「数字は財産よ」と、年齢を隠しません。

花恵さん

お店に来られる方も、商品を見るだけではく花恵さんとお話するのがうれしい様子。私も、お店を出るときには、これからの人生がほんのり薔薇色に染まったように感じました。

これからの人生がほんのり薔薇色に染まったように感じました。

本日の着こなし

シックなショップに合わせて、洋の雰囲気

ヨーロッパの香りのするシックなショップに合わせて、洋の雰囲気を演出。

芝崎圭一さんによる深いグレーの座繰り紬は、単衣に仕立てたので5月に大活躍。染め分けの帯はフォリア工房・甲斐凡子さんの作。

結城紬に染めた八寸帯で、モンドリアンの『コンポジション」を思わせる幾何学的な柄が洒落ています。

こんな組み合わせなら、ヨーロピアンな空間にも似合うかしら?と。

結城紬に染めた八寸帯

帯留めは、ナンタケットバスケット作家の@handvaerker365さんが作ってくださったもの。

地味な色の着物と帯に初夏らしいアクセントを

『道明』の三分紐と『貴久樹』のトランプ柄の帯揚げは、どちらも縹色。地味な色の着物と帯に初夏らしいアクセントを添えたくて。

フランス製のウール生地で作られたバッグ

祇園『緙室 sen』で見つけた、フランス製のウール生地で作られたバッグは、和と洋のミックス感覚が気に入っています。

撮影/弥武江利子

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