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用と美を兼ね備えた

用と美を兼ね備えた”肌着の銘品を作る 着物家・伊藤仁美さんの『ensowabi』から新商品誕生

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昨年、ライフスタイルブランド『ensowabi』を立ち上げた着物家・伊藤仁美さん。その「肌衣はだぎぬ」シリーズから、3月に新たなプロダクトがリリースされます。

着物家・伊藤仁美さんのブランドから新商品リリース!

「ensowabi」商品画像

京都祇園の禅寺に生まれ、東京でプライベートサロン『enso』を主宰する着物家の伊藤仁美さん。着物を通して日本の美意識の価値を紐解き、 未来へとつないでいくことをテーマに幅広く活動しており、メディアにも多数出演しています。

『きものと』でも、伊藤さんが幼い頃から触れてきた禅語とともに着物の楽しみ方や日々を軽やかに生きるヒントを届ける「現代衣歳時記」や、伝統文化に携わる方々との対談を通じて日本の美と健康について考える「温故知新ー日本の美と健康を巡るー」を連載中です。

よみもの

温故知新ー日本の美と健康を巡るー

よみもの

現代衣歳時記

伊藤さんは2023年に『ensowabi』(2024年3月にブランド名変更)を立ち上げました。削ぎ落とされた和の美で人々の心と身体に調和をもたらす商品を開発・販売するライフスタイルブランドです。

そんな『ensowabi』を代表する「肌衣はだぎぬ」シリーズから、3月に新たなプロダクトがリリースされます。

伊藤さんにブランド立ち上げの経緯や開発秘話、こだわりが詰まった新作の魅力を伺いました。

構想から3年の歳月を経て完成した肌着の銘品

着物を日常着とする伊藤さんには、あるものにまつわる悩みがありました。そのあるものとは、肌襦袢。

和装に欠かせないインナー(肌着)ですが、肌が弱い伊藤さんは汗をかいた日などに肌がかぶれて赤くなってしまうことが多々あったのです。また、肌着姿でいる時の心許なさも悩みの一つでした。

「せっかく着物という和の美しさを纏うのだから、着た瞬間からテンションが上がり、なおかつ肌に優しく心地よい肌着があれば……」

そんな時に知人からある織元さんを紹介され、その織元は”和紙布(わしふ)”と呼ばれる織物を製造していました。

紙布イメージ

和紙布とは、その名の通り、和紙を使った布のこと。

和紙でできているため、調湿性や吸水性に優れ、消臭抗菌作用もある。さらには、綿の3分の1の軽さ。また、最新の特許技術を駆使した和紙布は強度と伸縮性にも優れており、これ以上に、肌着に向いている生地はないと伊藤さんは思ったそう。

まさに“温故知新”を体現とするような和紙布に惚れ込んだ伊藤さんは、「この生地で機能性とデザイン性を兼ね備えた肌着の銘品を作る」と決意。そこから織元さんと二人三脚の挑戦がスタートしました。

和紙布

すでに和紙でできた肌着は存在するけれど、「せっかくなら着物のヘビーユーザーである自分のわがままを全て叶えたものを作ろう」と細部にまでこだわった伊藤さん。

縫製工場と何度も打ち合わせを重ね、サンプルを作っては改良することを繰り返すトライ&エラーの日々。思い通りにいかないことも多々あり、幾度となく心が折れかけたそうです。

木材から作る和紙布、特に染色には苦労しました。その中で、自然のものを意のままに操ろうとする自分のおこがましさにも気付かされたそう。それでも、伊藤さんは諦めませんでした。「自分のような悩みを抱えている人はたくさんいて、和紙布がそれを解決してくれるはず」とその可能性を信じていたからこそ、前に進み続けることができたのです。

そして構想から3年。ようやく和紙が持つ1300年の叡智と最新の特許技術、そして着物を日常着とする伊藤さんならではの視点が詰まったプロダクト第一弾が完成しました。

最初に作ったのはワンピースタイプの着物用肌着と、着物の袖を衣のデザインに残しつつ、日常着として気軽に使えるローブです。どちらにも糸の強度や伸度を高めるために糸の芯部に極細の再生ポリエステル糸を使用。そのため、とっても丈夫でメンテナンスも驚くほどに簡単なのだとか。

汚れが気になってきたら中性洗剤で洗うことも可能。ネットに入れた状態であれば家庭の洗濯機でお手入れすることもでき、なんと乾燥機もOKとのこと!柔らかい質感がお好みの方は乾燥機にかけるのがおすすめだそうです。

和紙には消臭抗菌作用があるので、本来ならば水洗いだけで十分。乾きも早く、洗った後に窓際などに干しておけば、翌日すぐ着ることができます。かつ軽量なので長期間の移動にもってこいで、伊藤さんも旅行や出張などでかなり重宝しているといいます。

また、糸の周りは和紙で覆っているため、肌に触れる繊維はほぼ100%和紙。

肌に優しいのはもちろんのこと、前述した通り、和紙には速乾や調湿の機能が備わっているので、サラサラとした質感を保ちながら、脱いだ後の不快感を軽減してくれます。汗が蒸発するときに熱が奪われ、身体がヒヤッとする、あの感覚ともおさらば。夏は涼しく冬は暖かく、一年中快適に過ごすことができます。

デザインを担当したのはスポーツウェアブランド『DESCENTE(デサント)』にて長年、スキーウエアのデザインを手がけていた服部あゆみさん。他にもヨガウェアブランド『スリア』ほか、様々なカテゴリーのスポーツウェアのデザインに携わってきた服部さんの知恵をもとに“機能美”はもちろんのこと、“タイムレス”なデザインにもこだわりました。

年齢を選ばないミニマルで無垢なデザインもそうですが、和紙布を使った肌着はまさに生き物で、着る人によって色や生地の風合いが絶え間なく変化し続けていくそう。

「この世は無常であり、変わり続けているということを改めてこの肌着に教えられている気がします」と伊藤さん。

人間もそう。自然と同じで、良くも悪くも変化していくものです。けれど、その移ろいを楽しむことの大切さを、肌着が自分の身体に馴染むごとに感じていただけたら――伊藤さんはそう願っています。

さらに使いやすくなった「肌衣はだぎぬ」シリーズ第2弾

「紙織-shiori-」シリーズ
「紙織-shiori-」シリーズより、「肌衣」セパレートタイプ

「肌衣はだぎぬ」ワンピースタイプも大変好評で、肌着を気に入ったからローブも……と両方購入される方もいらっしゃったそうです。

そんな大好評だったシリーズから今回新たに発売となるのは、上下に分かれたセパレートタイプの着物用肌着と、前回の商品から更に改良を加えたワンピースタイプの着物用肌着の3点。1つずつ商品を紹介していきます。

まずは、セパレートタイプの肌着の上衣から。

もともと発売されていたワンピースタイプの肌着は半袖でしたが、今回は7部袖に。肘裏の汗も吸収してくれるため、夏場も快適に過ごすことができます。襟ぐりもかなり広めにとってあるため、中から肌着が見えてこないのもうれしいポイントです。

道具感のないデザインにも凝っており、補正パットも目立たない仕様に。補正パットは筒状になっている衿裏ポケットに入っていて、着る人の身体に合わせて移動させることができます。

また裾の部分は角を削ぎ落とした丸みのあるデザインになっており、スカートみたいに膨らんでしまったりと不格好になる心配もありません。

また、もう一つこだわったのが、こちら。

「紙織-shiori-」シリーズより、「肌衣」セパレートタイプ

紐を通す穴にご注目を

以前から、紐を通す穴から肌がちらっと見えてしまうのが気になっていた、という伊藤さん。

それを防ぐため、上の布と下の布がしっかりと重なり合わさるような縫製にしました。人前で着替える時もこれなら恥ずかしさが軽減しますね。

「紙織-shiori-」シリーズより、「肌衣」セパレートタイプ

待望だったというパンツタイプの肌着は前下がりになっており、年齢を重ねるとどうしても気になってくるポッコリお腹のお悩みを解消。

速乾で調湿性に優れた和紙布は、蒸れやすく汗をかきやすい夏の股ずれも防いでくれます。上衣と同じく丸みを帯びた裾にはスリットが入っており、足さばきも良好です。

「紙織-shiori-」シリーズより、「肌衣」ワンピースタイプ(改良版)
「紙織-shiori-」シリーズより、「肌衣」ワンピースタイプ(改良版)

ワンピースタイプの肌着は胸元のつっぱりを防ぐべく、ホールド感がより増すように改良を加えました。身体の可動域が可能な限り広がるよう、こちらもデザイナーの服部さんと何度も試作を重ねたそうです。

また、紐を共布に変更。厚みのある共布で、身体を線ではなく面で抑えてくれるため、締め付け具合も軽減されました。紐を通す部分は肌が見えないように上衣と同様の縫製となっています。

着るだけで裾すぼまりになる削ぎ落とされた機能美はそのままに、さらに細かなアップデートが加えられた、まさに痒い所に手が届く”肌着の銘品”となりました。

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