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『岩﨑家のお雛さま』 静嘉堂文庫美術館 「きものでミュージアム」vol.32

『岩﨑家のお雛さま』 静嘉堂文庫美術館 「きものでミュージアム」vol.32

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三菱第四代社長・岩﨑小彌太が妻の孝子に贈ったのは、まあるくかわいらしい稚児雛に豪華な雛道具!小彌太の還暦祝いの《木彫彩色御所人形》や、岩﨑家に伝わる豪華な打掛も見どころです!

2024.01.30

よみもの

『ゴッホ・アライブ東京展』寺田倉庫G1ビル 「きものでミュージアム」vol.31

静嘉堂文庫美術館で雛祭り

今回は、静嘉堂文庫美術館で開催中の『岩﨑家のお雛さま』をご紹介します。

※本コラム内の美術作品の写真につきまして、各美術館プレスより撮影および掲載の許諾を得て使用しております。

岩﨑家のお雛さま

3月3日は、日本の伝統行事である五節句のひとつ「上巳の節句」

諸説ありますが、桃の節句(雛祭り)として雛人形を飾り女の子の健やかな成長を願う風習は、江戸時代に広まったと言われています。

本展では岩﨑家のために京都の人形司・丸平大木人形店(丸平)・五世大木平藏が制作した《岩﨑家雛人形》と《木彫彩色御所人形》が勢揃いしています。

丸平は当時皇室や上流家庭の子女に大変人気があり、丸平で人形を誂えることは一種のステイタスでした。谷崎潤一郎『細雪』に登場したことでも知られます。4姉妹の次女・幸子の娘の初節句に誂えた雛人形は丸平のものでしたね。

雛道具の衣桁と打掛を観る

人形だけでなく、雛道具も大変精緻に作られ、当時の技術を結集した美術工芸品と言っていいでしょう。その美しさに目をみはります。

また今回は、岩﨑家に伝わる豪華な紅白の打掛も初公開されています

岩﨑家のお雛さま「小さきものは、みなうつくし」

第1章のタイトルは「雛の世界 ─小さきものは、みなうつくし」。

清少納言の『枕草子』の一節です。

雛道具が並ぶ展示風景

平安時代の「うつくし」は、現在の「かわいらしい、愛らしい」という意味です。小さきもの──数々の雛道具がずらりと並ぶようすは、なんとかわいらしく美しいのでしょう!

なかでも目を引くのが《貝桶・合貝》

五世大木平藏 貝桶・合貝が並ぶ展示風景
五世大木平藏 貝桶・合貝

五世大木平藏 《貝桶・合貝》 昭和時代初期 20世紀 丸平文庫蔵

とても小さい貝は、蛤の稚貝だそう。一つ一つに細かく絵が描かれていることに驚き、思わず顔がほころびます。

布団と座布団の細緻な鹿の子絞りにもご注目ください。

五世大木平藏 貝桶・合貝

五世大木平藏 《布団》(奥)と《座布団》(手前) 昭和時代初期 20世紀 丸平文庫蔵

次の展示室には、岩﨑家のお雛さまが並びます。

三菱第四代社長・岩﨑小彌太(1879〜1945)が孝子夫人(1888〜1975)のために誂えた雛人形は、白くつややかで丸い顔が愛らしい稚児雛です。少し開いた口から見える歯は象牙でできているそう。とても小さいのですが精巧に作られています。

五世大木平藏 《岩﨑家雛人形 内裏雛》

五世大木平藏 《岩﨑家雛人形 内裏雛》 昭和時代初期 20世紀 静嘉堂文庫美術館蔵

男雛は、皇太子のみが着用する鴛鴦文えんおうもんの「黄丹袍おうにのほうを着ています。天皇のみが着用する「黄櫨染御袍こうろぜんのごほうは高いところで輝く太陽を象徴する黄色みがかった茶色ですが、明るい黄丹色は昇る朝日を表します。

女雛は五衣いつつぎぬ表着うわぎを着用し唐衣からぎぬを重ねています。衣裳や御簾など細かい部分もじっくりとご覧ください。

ポスター画像

少し気になったのが、女雛の豪華な冠。ポスタービジュアルでは頭部に装着していますが展示では脇に置かれています。

これは、髪の毛の部分を保護するためという理由もありますが、このような脇に置くのも正式な飾り方なのだそうですよ。

学芸員 浦木さんの説明を聞く

担当学芸員 浦木さんの説明を聞く

静嘉堂では女雛を向かって右に飾っています。地域によって配置は変わりますが、こちらでは東京・麻布の鳥居坂本邸に飾られていた時と同じ並べ方にしているとのこと。

ほかにも三人官女、五人囃子、随身も並びます。ひとつひとつ表情が違い、趣があります。

五世大木平藏 《岩﨑家雛人形 三人官女》

五世大木平藏 《岩﨑家雛人形 三人官女》 昭和時代初期 20世紀 静嘉堂文庫美術館蔵

五世大木平藏 《岩﨑家雛人形 五人囃子》

五世大木平藏 《岩﨑家雛人形 五人囃子》 昭和時代初期 20世紀 静嘉堂文庫美術館蔵

卯年の小彌太、還暦祝いはうさぎづくしの御所人形

《木彫彩色御所人形》

こちらでは、小彌太の還暦祝いに孝子夫人が贈った《木彫彩色御所人形》58体(61人)が並びます。これらも丸平に特別注文されたもので、五世大木平藏の傑作とされます。

岩﨑小彌太・孝子夫妻

岩﨑小彌太・孝子夫妻 東京・麻布の鳥居坂本邸庭園にて

小彌太は卯年のため、宝船の船首や人形たちがかぶるお面など、随所にうさぎがデザインされています

《五世大木平藏木彫彩色御所人形 宝船曳》

五世大木平藏 《木彫彩色御所人形 宝船曳》 昭和14年(1939)静嘉堂文庫美術館蔵

《五世大木平藏木彫彩色御所人形 輿行列》

五世大木平藏 《木彫彩色御所人形 興行列》 昭和14年(1939)静嘉堂文庫美術館蔵

宝船に乗る布袋様は小彌太に、そのあとに続く弁天様は孝子夫人に似せて作られているそう!ご夫妻の写真とぜひ見比べてみてください。

宝船に乗ったお宝は接着されているわけではなく、飾るたびにひとつひとつ並べられています。

また人形の衣裳はすべてが異なり、細かい部分まで美しく彩色されています。どれほどの手間がかかったのだろう……と気が遠くなるほどです。

初公開の岩﨑家ゆかりの打掛と《曜変天目(稲葉天目)》の競演

左:《白綸子地松竹梅鶴模様打掛》 明治時代末期(20世紀) 個人蔵、右:《紅綸子地御簾薬玉柴垣菊模様打掛》 明治末期 個人蔵

左:《白綸子地松竹梅鶴模様打掛》 明治時代末期(20世紀) 個人蔵、右:《紅綸子地御簾薬玉柴垣菊模様打掛》 明治末期 個人蔵

今回初公開となったのは、岩﨑家に伝わる紅白の豪華な打掛。

《紅綸子地御簾薬玉柴垣菊模様打掛》(部分)

《紅綸子地御簾薬玉柴垣菊模様打掛》(部分) 明治末期 個人蔵
撮影/akemi

展示の人形や雛道具、打掛には岩﨑家の家紋「隅切り角に重ね三階菱紋」と替紋である「花菱文」が各所にあしらわれています。

宝探しのように探しながら鑑賞するのも楽しそうです。何個見つかるでしょうか?

同じ展示室に、静嘉堂の顔とも言える国宝《曜変天目(稲葉天目)》建窯も展示されています。

豪華な競演は見応え抜群ですね!

国宝 《曜変天目(稲葉天目)》 建窯

国宝 《曜変天目(稲葉天目)》 建窯 南宋時代(12~13世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵

この他、菱川師宣《十二ヵ月風俗図巻》(上巻、3月の場面)、重要文化財 野々村仁清《色絵吉野山図茶壺》など春らしい作品も展示されており、雛祭りを満喫できます。

重要文化財 野々村仁清《色絵吉野山図茶壺》

重要文化財 野々村仁清《色絵吉野山図茶壺》 江戸時代(17世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵

菱川師宣 《十二ヵ月風俗図巻》上巻 元禄期(1688~1704)前期 静嘉堂文庫美術館蔵

菱川師宣 《十二ヵ月風俗図巻》上巻 元禄期(1688~1704)前期 静嘉堂文庫美術館蔵

写真撮影や明治生命館の見学も

ホワイエの風景

重要文化財・明治生命館の建築としての美しさを味わえるホワイエの風景

今展は、第4章(打掛と曜変天目)と一部の作品を除き、スマホで写真撮影が可能です。

館内の注意事項を守り撮影もお楽しみください。ホワイエ(入口を入ったところ)は絶好のフォトスポットです!

エントランスの風景

静嘉堂文庫美術館エントランス付近の趣ある風景
撮影/akemi

静嘉堂文庫美術館が入る明治生命館は、1997年に、昭和の建造物としては初めて国の重要文化財に指定されました。

東京大空襲を乗り越え、1945年から56年まではGHQに接収されアメリカ極東空軍司令部として使用された歴史的建造物です。

外観もすばらしく、また2階では当時の会議室や執務室が無料で一般公開されています。2階から静嘉堂のホワイエを垣間見ることもできますので、ぜひあわせてご観覧ください。

この日の装い

この日の装い1

お雛さまと言えば、桃の節句。桃色の地色に黄金繭で唐草文様を織り上げたお召の着物に、桃の代わりに梅の染め帯で。

この日の装い2

帯揚げ、帯留、根付も梅で揃えました。

この日の装い 帯回り
この日の装い 生地感

撮影/五十川満

今回ご紹介の展覧会情報

ポスター画像

岩﨑家のお雛さま

静嘉堂文庫美術館(明治生命館1階)
https://www.seikado.or.jp/

日 時:2024年2月17日(土)~3月31日(日)
    10:00~17:00 (毎週土曜日は18:00まで、第4水曜日は20:00まで)
    ※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日 ※ただし、3月4日(月)はトークフリーデーとして開館

※詳細は展覧会公式サイトをご覧ください。

その他、おすすめの美術展

※日時など変更になる場合があります。おでかけ前に公式サイトなどで最新情報を確認してください。

ポスター画像

京都市美術館開館90周年記念展 村上隆 もののけ 京都

京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
https://takashimurakami-kyoto.exhibit.jp/

日 時:2024年2月3日(金)~9月1日(日)
    10:00~18:00
    ※入場は閉場の30分前まで
 
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)

ポスター画像

展覧会メインビジュアル

マティス 自由なフォルム

国立新美術館 企画展示室2E
https://matisse2024.jp

日 時:2024年2月14日(水)~5月27日(月)
    10:00~18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで開館
    ※入場は閉館の30分前まで

休館日:毎週火曜日 ※ただし4月30日(火)は開館

ポスター画像

建立900年 特別展「中尊寺金色堂」

東京国立博物館 本館 特別5室
https://chusonji2024.jp/

日 時:2024年1月23日(火) ~ 2024年4月14日(日)
    9:30~17:00  ※金・土曜日は19:00まで
    ※最終入場は閉館時間の30分前

休館日:月曜日 ※ただし3月25日(月)は開館

◆ 読者プレゼント ◆

ポスター画像

さて、恒例の招待券プレゼント!
今回は『岩﨑家のお雛さま』静嘉堂文庫美術館の招待券を3組6名の方にプレゼント!
ぜひ、きものでお出かけくださいね!

下記リンクより、お使いのSNS経由にてご応募くださいませ。

◆インスタグラム
https://www.instagram.com/kimonoichiba/?hl=ja
◆Twitter
https://twitter.com/Kimono_ichiba

※応募期間:2024年3月3日(日)まで

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