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結城紬でおもてなし feat.和田明日香「きもの、着てみませんか?」 vol.7-1

結城紬でおもてなし feat.和田明日香「きもの、着てみませんか?」 vol.7-1

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着物スタイリスト・薬真寺香さんによるスタイリング連載の第7弾。今回は、料理家で食育インストラクターの和田明日香さんをお招きし、自宅でのおもてなしの際に装いたい、生活になじむ着物コーディネートを提案しました。

よみもの

きもの、着てみませんか?

お家でもてなす和田明日香さんの着物姿

和物や着物以外の分野で活躍中のゲストが、着物スタイリスト・薬真寺 香さんの手で着物との新たな出会いを果たす本連載。

パリ五輪へと架ける和製トリコロール feat.阿部詩』に続いて登場いただいたのは、レシピ本『10年かかって地味ごはん。』『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』(主婦の友社)の出版やテレビ朝日『家事ヤロウ!!!』のメディア出演などでもおなじみの和田明日香さんです。

料理愛好家・平野レミさんの息子さんと結婚後、まったく料理ができなかったにもかかわらず、修業を重ね、食育インストラクターの資格を取得。スーパーなどどこにでもある身近な食材を用いたレシピを信条とし、リアルな生活に寄り添った料理で人気を集めています。

近年ではさまざまな才能を開花させ、作家の村山由佳さんとNHK-FM『眠れない貴女へ』で、ラジオパーソナリティを務めることも。

発行部数が26万部を突破した『10年かかって地味ごはん。』に続き、2023年は続編となるレシピ本『楽ありゃ苦もある地味ごはん。』(主婦の友社)も発売となりました。

3児の母でもある和田さんは、入学式や七五三など着物を着られる機会が訪れるたびに「着物を購入するならば、早めに買った方が元を取れるのでは?」と、密かに思っていたと言います。

憧れがありながらも手が出せなかったため、「着物を着るお仕事ができたら……」と漠然と考えていたところ、『きものと』とのコラボレーションが舞い込んだとのこと。

「これはもう、引き寄せ案件と言いますか。お話をいただいて『ああ、神様!』と思いました(笑)」(和田さん)

結城紬を纏って。料理家・和田明日香さん

以前、着物姿の和田さんを拝見した薬真寺さんは「なんて着物の似合う方……」と感じたそう。撮影は、都会的なキッチンスタジオで行われました。

「今回は、和田さんがご友人など親しい方を招いてごはん会を催す”気軽なおもてなし”を想定してスタイリングをしました。お料理の下ごしらえは終わっているのだけど、最後の仕上げをされる状態といいますか。

こういうシチュエーションですと、訪問着などハレの日に着る着物ではなく、日常に溶け込むもののほうがしっくりくる。だから紬がすごくいいなと。亡くなられた俳優の大原麗子さんが出演していらしたサントリーのウイスキーのCMをイメージして選びました」(薬真寺)

「撮影場所のキッチンはどちらかというと無機質で、都会的な雰囲気でしたので、着物は風合いと色味がやわらかいものを選びました。温かみのある梅ローズ色の着物は、控えめながら華やかさもあり、生活に馴染むけれど決して地味にならない。もうすぐ春が来る感じを表現したかったですね」(薬真寺)

実際に袖を通した和田さんは、早速笑顔を見せてくれました。

結城紬を纏って。料理家・和田明日香さん

「着物を着る非日常の自分でいなくても、体に馴染んで、自然でいられる感じがいいですね。立っているときにお腹に力を入れなくていいので、着物を着ている感じがしないというか。

実際にキッチンに立って料理の所作をしていても、『ああ、こんなに動けるんだ』って思いました」(和田さん)

「普段着の着物ということで、自分で着付けをしたかのようなきちんとしすぎない、緩やかな感じを目指しました。ゆるっとしわが寄っているのも普段着ならでは。動きやすさがポイントです。袖の部分も腕を伸ばすと、タルっとしたドレープができます。やわらかい生地ならではの風合いですね」(薬真寺)

料理と着物の親和性。食材の名の付いた柄

今回、薬真寺さんが選んだのは、茨城県結城地方に伝わる結城紬でした。

真綿から手紡ぎで糸を引き、居座機(いざりばた)で織り上げた重要無形文化財技術使用の織物です。紬の中でも代表格で、1枚は欲しいと思わせる憧れの着物。少し寒い北関東のものなので、ほっこりとやわらかくて暖かいのが特徴です。

かつて、大店の女将さんが生地の風合いをやわらかくするために最初に女中さんに着せて、その後で自ら着るといったエピソードもあるほど。年月を経て、着心地の良さや魅力が増すものとして愛されています。風合いの変化を楽しみながら、洗い張りや仕立て直しを繰り返して、親子二代、三代にわたって親しんでいける着物ですね」(薬真寺)

※居座機(いざりばた)……織り手の腰に経糸(たていと)を固定し、体でテンションを調節しながら織る昔ながらの構造の手織り機。地機、腰機

そして縞模様も印象的です。和田さんが「かわいい」とおっしゃった縞は、なんという縞なのでしょう?

結城紬を纏って。料理家・和田明日香さん

”かつお縞”と呼ばれるもので、お魚の鰹の体色が背中からお腹にかけてだんだん薄くなっていくように変化をつけた縞です。

青系の色が用いられることが多く、江戸時代は浴衣の柄として人気だったそう。鰹を”勝つ男”にかけて縁起ものとされていることとも関わりがあるのかもしれません。

お料理と着物は親和性があって、ともに暮らしに直結するものだけに、やはり共通することが多いのでしょうね」(薬真寺)

「着物の模様にも、まさか食材の名前が付いていたとは。

ときどき、レンコンや唐辛子柄の着物もありますよね? 自分が作りたい料理と着物のアイテムを合わせるなどして遊び心を持たせたら、誰かの目に留まらなくても、着ている自分自身の気分がアガりますよね」(和田さん)

和田明日香さん

お料理と着物コーディネートをリンクさせるなんて、すごくおしゃれですよね。紬は産地が豊かなので、例えば結城紬だったら、結城地方で採れた食材と合わせても面白いですし。野菜モチーフの帯や帯留めもありますから、小物で遊んでみてもいいですよね。ちなみに今回の帯留めは、着物の色に合わせて“梅”です」(薬真寺)

結城紬は着ていると、ずっと暖かい。ふんわりと熱がこもる感じがしていて、本当に寒い地方ならではの着物だとわかりますね」(和田さん)

国際色豊かなパッチワークの帯

「帯は、おもてなしをするシチュエーションに合わせて動きやすい半幅帯を選びました。お家で過ごす着こなしなので、そのままコロンと昼寝ができるようなのんびりとした雰囲気を出せるよう意識しています」(薬真寺)

しかも今回の帯は、何でも日本で作られたものではないそうで……

神奈川県葉山町のアトリエ『PONNALET葉山の家』さんの半幅帯です。草木染の絹で、すべて手織り。ラオスとカンボジア、インドの布を組み合わせ、きりばめの技術が素晴らしい熟練の工房で仕立てられたものだそうです」(薬真寺)

結城紬を纏って。料理家・和田明日香さん

「今回の結城紬にしっくりと馴染みつつも、半幅帯ならではの軽やかさも表現できるという視点でセレクトしました。

ポンナレットさんの帯は自然の素材や染料によって生み出された素朴さもありながら、異素材の組み合わせ方や配色の妙がもたらすデザイン性の高さが魅力。個性的なようでいて、名脇役としてコーディネートに馴染みつつ、上質感を表してくれます。単調になりがちな半幅帯スタイルは、”布”としての帯そのものの魅力がものをいうと、改めて感じました」(薬真寺)

半幅帯の締め方には何か特徴があるのでしょうか。

結城紬を纏って。料理家・和田明日香さん

「PONNALETさんの帯はちょうどいい硬さのため形が決まりやすく、すごく結びやすいんです。

締め方に関しては即興なんですが、こだわった部分はアシンメトリーの動きを出したところ。半幅帯は着心地も楽で動作もしやすい分、着姿が地味になりがちなので、今回の帯の異素材ミックスやパッチワーク的な要素と呼応する動きのある結び方で、変化を付けました」(薬真寺)

「また、和田さんは背がとてもお高いので、帯がこじんまりとまとまってしまうと、全身の等身に対してバランスが悪くなってしまいます。やりすぎない程度に帯にボリュームを出して、全体のバランスが整うよう意識しました」(薬真寺)

自分らしさを活かす。着物でのショートカット

和田明日香さん

ヘアメイクのポイントは、“作りこまない”ことなのだそう。

「普段着として着物を着ている方の設定のため、パーティーに行くようなバシッとしたメイクをせずに、もともとの和田さんの美しさを出すナチュラル感を大事にしました。

お家ごはんに過度なツヤ肌はトゥーマッチなので、NARSの大人気パウダー、通称”リフ粉”でさらさらセミマットな肌に。余分なテカリはしっかり抑えつつ、粉っぽくならない、持ちも良い優れものです」(薬真寺)

そして、薬真寺さんは「まとめ髪こそ落とし穴」とパワーワードを発します。

結城紬を纏って。料理家・和田明日香さん

「着物を着るからといってキメキメにし過ぎると、コンサバ感が出てしまいます。すると、決まりきった定型の雰囲気に陥ってしまうので、自分らしさを出すにはショートカットの方はすごく有利なのかなと。それだけでも軽やかな雰囲気が伝わりますよね」(薬真寺)

「私、ショートカットだし背も高いから、着物はあまり似合わないんじゃないかと思っていました」(和田さん)

「『小柄な人の方が着物は似合う』というのもよく聞きますが、そんなこともなくて。その方の体型なり、髪型なりに合ったスタイルや着こなしがあると思います。実際は外見よりも内面が大きく影響するんじゃないか、と。生きざまや考え方が着方に表れるといいますか」(薬真寺)

「あはは! かっこいいですね」(和田さん)

「着物は型が同じだからこそ、お召しになったときに、その方の内面や嗜好が引き出されると思うんです」(薬真寺)

「洋服よりできることが限られているからこそ、センスなどが如実に出るんでしょうね。だからこそ憧れるし、難しい……」(和田さん)

結城紬を纏って。料理家・和田明日香さん

「着物を着る身近な方が少ないから、モデルケースが圧倒的に不足しているんですよね。
“今日はこういう天候で、出かける先はこの街で……”といった個々のシチュエーションに対しての最適解がわかりづらい。いわゆるハレの日の衣裳よりも普段着の着物のほうが、自由度が高い分難しいかもしれません。

そういった意味で、今回、和田さんの“お家で過ごす普段着の着物”をご提案できることは、ものすごく楽しみでした」(薬真寺)

「ありがとうございます。すごくうれしいですね」(和田さん)

インタビュー編もお楽しみに

次回は、インタビュー前編を2月中旬に公開予定。

和田さんが江戸文化に興味を持ったきっかけや、着物との関わりについてお伺いします。

半幅帯

メコンの国の手織り布 PONNALET
http://www.ponnalet.com/
https://www.instagram.com/ponnalet_hayama

構成・文/横山由希路 yukijinsky
撮影/坂本陽 minami.camera
ディレクション・スタイリング・着付け・ヘアメイク/薬真寺 香 ___mameka_

※帯揚げ、三分紐、帯留、長襦袢はスタイリスト私物

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