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『加地金襴』 織手・坂田雄介さん(後編)【YouTube連動・インタビュー編】「紗月がみつけた!和の新風」vol.8

『加地金襴』 織手・坂田雄介さん(後編)【YouTube連動・インタビュー編】「紗月がみつけた!和の新風」vol.8

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2023年11月、『加地金襴株式会社』織手・坂田雄介さんの手がけた西陣織が宇宙へと飛び立ちました。世界的アーティストMasa Hayamさん発信による宇宙アートNFTプロジェクト。そこにはどんな意義があるのか。今回は協力企業スギエシルクプランニングの杉江啓吾さんもお迎えし、お話を伺います!

2023.10.31

まなぶ

『加地金襴』 織手・坂田雄介さん(前編)【YouTube連動・インタビュー編】「紗月がみつけた!和の新風」vol.7

日本の伝統文化と宇宙を掛け合わせた壮大なプロジェクト

『加地金襴株式会社』自社工場にて金襴姿の紗月さん

世界中の人々から愛される和の文化が集結する京都。そこには伝統を守りつつ、新しい風を吹かすべく挑戦し続けている方々がいます。

「紗月がみつけた!和の新風」は伝統文化の新たな担い手たちにその活動内容や決意をうかがうYouTube連動企画。

祇園甲部の元人気芸妓・紗月さんがMCを務めます。

京都の西陣に自社工場を構える『加地金襴株式会社』を訪問中の紗月さん。

今回は同社の織手・坂田雄介さんと共にとあるプロジェクトに参加したスギエシルクプランニングの杉江啓吾さんをお迎えし、お話をうかがいます。

注目のワードはなんと「宇宙」。その驚きの内容とは?

金襴の羽織物をまとって

宇宙空間を浮遊させた西陣織は半年後どうなる?

宇宙に西陣織を飛ばした杉江さんと坂田さん

宇宙に西陣織を飛ばした杉江さんと坂田さん

30歳で建設業界から伝統産業へと大きなキャリアチェンジを果たした坂田さん。これまで『加地金襴株式会社』の織手として、通常は袈裟や仏具に使われる金襴を用いた新たな製品づくりに努めてきました。

そんな坂田さんの新たな取り組み……

それは「宇宙に西陣織を持っていく」ということ。全ては、杉江さんからとある壮大な実験について聞かされたことが始まりでした。

宇宙プロジェクトのきっかけについてお話しする杉江さん

みなさまは、世界的に活躍するアーティストMasa Hayam(マサ・ハヤミ)さんをご存知でしょうか。

マサさんは、NFT(非代替性トークン)という最先端のデジタルアートを駆使した活動をされています。

その一環として現在、宇宙ビジネスのSpace BD社とコラボし、進めているのが『宇宙アートNFTプロジェクト』。

壮大なプロジェクトに紗月さんも驚き

これはアート作品を国際宇宙ステーション『きぼう』の船外に取り付け、半年間に渡り宇宙空間を浮遊させたのち、地球に帰還させてその変化を観察する実験的なプロジェクト。

杉江さんはマサさんから「日本の伝統文化も一緒に宇宙に打ち上げたい」という相談を受け、宇宙に持っていく西陣織の生地をつくってくれる織手を探し始めたそうです。

坂田さんに協力を申し出た理由について明かす杉江さん

たくさんいる職人の中で、坂田さんに依頼したのは「唯一理解を示してくれそうだったから」。

西陣織を宇宙に打ち上げるというこれまでにない取り組みに、チャレンジ精神旺盛な坂田さんなら乗ってくれるのではないか?という期待を込め、声をかけた杉江さん。すると、坂田さんからは「面白そうですね!」という期待通りの言葉が返ってきたといいます。

杉江さんは坂田さんのチャレンジ精神を信じて声をかけたそう

杉江さんは坂田さんのチャレンジ精神を信じて声をかけたそう

こうして始まったプロジェクトでしたが、想像以上の困難が坂田さんを待ち受けていました。

特に大変だったのが、マサさんから挙がってきたデジタルアートを西陣織で再現すること。まずは、実際に完成したこちらの作品をご覧ください!

Masa Hayamさんのデジタルアートをもとに作成した西陣織の生地

日本の伝統ということで、神社をイメージしたマサさんのデジタルアート。

見ていただくとお分かりいただけると思いますが、赤・青・緑以外にもたくさんの色を用いて緻密に表現された作品となっています。

何万色も使い、神社が描かれている

Masaさんのデジタルアートを調べたところ、使われている色の数は万単位。対して、西陣織の織機で表現できる色の限界は15〜16色。

このギャップを埋めるべく、坂田さんは組織を変えたり、色の組み合わせを工夫しながら試作を重ねました。

土台の生地には天然素材のシルクが使われています

ちなみにサイズ感はこれくらい。

膨大な色の数に驚く紗月さん

膨大な色の数に驚く紗月さん

船外の装置に取り付けられるサイズには限界があるため、片手に収まるぐらいの小さい生地ではありますが、日本の伝統である西陣織が世界を飛び越えて宇宙にまで届くこととなりました。

半年間宇宙を浮遊した西陣織の変化について想像を膨らませる杉江さんと坂田さん

果たして半年間、宇宙にさらされた西陣織はどのような姿になっているのか。

「もっと蛍光色のむちゃくちゃ派手な色になって戻ってきたらおもしろいな」と想像も膨らませる杉江さん。

かたや坂田さんは「ふぁーと消えちゃうんではないか」と予想するなど、何もかもが初めての取り組みであるため、地球に戻ってくるまで結果は全くの未知です。

取材では、「宇宙人がもっていくかもしれないですね」という紗月さんの一言でさらに話が盛り上がりました。

2023年11月にロケットで打ち上げられた西陣織

2023年11月、ロケットの打ち上げは成功し、国際宇宙ステーションに到達したとのこと。

今後、西陣織は約6ヶ月間宇宙を浮遊し、地球に戻る予定です。みなさま、ぜひ夢のあるプロジェクトの続報を楽しみにお待ちください!

京都全体を盛り上げたい!西陣織を宇宙に持っていく意義

京都全体を盛り上げたいという思いから宇宙プロジェクトに参加した杉江さん

職人の高齢化に伴う担い手の不足や需要の低迷などで、存続の危機に立たされている京都の伝統産業。京都を代表する伝統工芸品の西陣織もその一つであり、日本人であっても魅力を知り尽くしているとは言えない状況です。

そんななかでも、「まだまだ世に知らしめるチャンスはあると思います」とその伸び代を信じている杉江さん。宇宙プロジェクトの意義はまさにそこにあり、世界を飛び越えて宇宙に西陣織を届けることで話題性を集めたいと考えています。

杉江さんは今回のプロジェクトを通じて、世界が西陣織に注目してくれることを願っている

今回打ち上げに使われるロケットは、X(旧Twiitter)のCEOであるイーロン・マスク所有の「スペースX」。世界中が注目する宇宙船で打ち上げられた西陣織が、京都全体を盛り上げてくれたら。

そんな思いでお二人は宇宙プロジェクトの行く末を見守っていらっしゃいます。

質問の答えを色紙に書く坂田さん

最後に、恒例の質問を坂田さんに投げかけました。

坂田さんにとって、金襴とは?

それは「心の原動力」。

坂田さんにとって金襴とは「心の原動力」

全くの未経験からこの世界に踏み出したのは坂田さんの心が動いたからであり、今なお、金襴の生地を作りながら心が高ぶるという坂田さん。

それと同じように「少しでも多くの人の心を動かしたい」と、まだ誰も挑戦していないことにチャレンジし続ける坂田さんのお話に早速、取材クルー一同、心を動かされたのでした。

坂田さんの新たな取り組みについて伺う紗月さん

今回の訪問を受けて、紗月さんはーー

「伝統文化を新たなチャレンジを交えつつ、後々に残していく素晴らしさも聞くことができましたし、金襴を海外の方にどうやったら知ってもらえるかという努力も見させていただき、とても楽しかったです。なにより、宇宙から帰ってくる西陣織を楽しみに半年待ちたいと思います!」

紗月さんと坂田さんのツーショット

夢があふれるお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!

紗月さんファン必見!オフショット

織機の前で羽織る

西陣の機場に花開いたかのよう

織機をみつめる視線もやわらかに

織機をみつめる視線もやわらかに

チャレンジングな作品も多数!

チャレンジングな作品も多数!

それを見事に着こなす紗月さん

それを見事に着こなす紗月さん

今回の打ち合わせ風景

撮影前。真剣な打ち合わせ風景です

信頼し合っているお二人の空気感が印象的でした

信頼し合っているお二人の空気感が印象的でした

紗月さんの真剣な横顔も素敵です!

真剣な横顔も素敵な紗月さん

撮影中も楽しいお話がたくさん聞けました

撮影中も楽しいお話がたくさん聞けました

半年後、宇宙に戻ってくる西陣織がどうなっているのか。ワクワクが止まりません!

半年後、宇宙に戻ってくる西陣織がどうなっているのか。ワクワクが止まりません!

文章/苫とり子
撮影/弥武江利子

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