
うららかな春の装い 「光をはらむ、季節の着物コーディネート」 vol.1
季節の移ろいを着姿に反映させることは着物コーディネートの醍醐味の一つであると言われています。今の時期に皆さまはどのようなストーリー、どのようなイメージで着物を纏いたいですか。古典を守りつつ現代の感覚や要素を取り入れた自分らしい着物スタイルを一緒に見つけましょう。
どの季節に、どの場所で、どの時間帯に、どなたと、どのようなシーンであるかを想像し、
また当然自分との調和、そして着物、帯、小物類との調和を考えます。
着物は自己演出に偏らず、他者を思いやる、自然を愛でるなどの感性を自然と身に着けることができる日本の伝統的な民族衣装です。
なんだか難しいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、一番大切なことは纏う自分がドキドキわくわく楽しくあることです。
もちろん招く、招かれる立場の時や冠婚葬祭の場合は着用のルールがありますが、調和美を知っていれば安心です。
そしてそれ以外の時は型や枠にとらわれず自由に、自分らしい美しい装いでお出かけしましょう。

着物コーディネートのコツ
着物コーディネートを決める際、まず調和美を考えます。
その上で着物や帯の時代的な印象と自分が纏いたい雰囲気を考えます。
時代的な印象はアンティーク、古典、モダン
雰囲気は可憐(かわいい)、優美(きれい)、粋(かっこいい)
さまざまな考え方がありますので、参考程度にしていただければと思います。
今の私は古典だけどモダンな要素が入っていて、粋だけど優美さもあるような雰囲気が好きです。
その時によって纏いたい雰囲気は変わります。
自身は優美な感じと思ってコーディネートしても、他者に粋に見られることもあります。
それらもコーディネートの面白さのひとつだと考えています。
ぜひどのような感じがお好きか自由に想像し、お手持ちの中から工夫してコーディネートを楽しんでください。
調和美という概念の中で、季節も考えるとお伝えしましたが、
今回は春を連想させる柄が無い着物3枚に帯1本で3パターンご紹介します。
お好みに近い感じはありますでしょうか。
着物コーディネート1

・白の印伝の花柄の染帯
・淡いピンクの三分紐の帯締め
・芝翫茶色(ややくすんだ渋い赤茶色)の帯揚げ
・白のパールの帯留め
桜の控えめな甘さとリンクするように、淡く優しげで大人かわいい
着物コーディネート2

・白の印伝の花柄の染帯
・左右でデザインが異なる淡い紫の丸組の帯締め
・鈍色(鈍い鼠色)の帯揚げ
春の透明感ある光を優しく纏うような、品よく柔らかでエレガント
着物コーディネート3

・白の印伝の花柄の染帯
・黒の三分紐の帯締め
・純白(完全な白色)の帯揚げ
・シルバーのスクエアスタッズの帯留め
春の穏やかな優しい空気感の中で
江戸の粋を感じさせるような黒と白の無彩色でまとめて、ハンサム綺麗
季節の先取りとは
四季を通して、季節の移ろいを感じるときはどのようなときですか。
見る景色や照らされる日の光、花の香りを嗅ぐときや旬の野菜を味わうときなどでしょうか。
四季に恵まれた日本の気候風土で生まれ育った私たちはとても自然に五感また全身で感じることができます。
季節を先取りするとは、四季折々の植物や花々の紋様や色柄を先駆けて着物や帯、小物に取り入れることです。
季節を先取りし着姿に反映させるという感性は、日本人が太古の昔からもっていた文化のひとつが影響しております。
「予祝」という、あらかじめ祝う文化です。
目下桜の時期ですが、早い方は桜が咲く前の3月初旬から桜のモチーフが入った着物、帯、帯留、小物等で楽しんでいらっしゃる方々を目にします。
この時期のお花見はまさしく予祝文化の代表的な行事のひとつです。
桜を愛でる宴でもありながら、太古の昔は桜をお米に見立てて五穀豊穣をあらかじめ祝うことでした。
よって季節を先取りし着姿に反映させるという感性は、自然を愛でながらそして未来を前向きに想像し、あたかもそうであるかの様にお祝いするというとても繊細かつ強い日本人の精神性が表れています。
季節の先取りの仕方
着姿に反映させたいけれど、季節を現す柄や文様の着物、帯、小物を持ちあわせていないという方もいらっしゃるかと思います。
でも大丈夫です。
柄や色だけでなく、全体の雰囲気で見せることができます。
着物、帯、小物にとらわれることなく、春の透明感のある光や柔らかな空気感に合わせて、
例えばヘアカラーを変えたり、リップを明るめに変えたり、艶感のあるファンデーションに変えるだけでもトータルコーディネートという点で春らしい雰囲気を纏うことができます。
いずれもご自身がどうなりたいかのイメージや纏いたい雰囲気に合わせて、ご自身がドキドキわくわくする工夫を行ってみてください。
もちろん季節を表す柄、今でしたら桜のアイテムをお持ちの方はこの時期にたくさんお召しになってください。
なお春を表す桜と秋を表す菊は日本の国花でもありますので、お花単体の柄であれば年中お召しになれます。



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