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度肝抜く!前代未聞の“本能寺の変”『首』 「きもの de シネマ」vol.37

度肝抜く!前代未聞の“本能寺の変”『首』 「きもの de シネマ」vol.37

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銀幕に登場する数々のキモノたちは、着こなしやコーディネートの良きお手本。せっかくなら、歌舞伎やコンサートみたいに映画だってキモノで愉しみませんか。いよいよ!世界の巨匠・北野武監督が手掛けた最新作が公開。戦国乱世で繰り広げられる狂演乱舞の野心作です。

2023.01.27

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カンヌ絶賛!どストレートに愛憎を描いた時代劇

みなさま、ごきげんよう。
北陸から山陰にかけての日本海におけるズワイガニ漁が解禁したというのに、今年はまだ活カニにありつけていない椿屋です。

先般、秋の味覚が続々と店頭に並ぶに従ってわたくしを支配しようと巨大化する食欲魔人が束の間、居住まいを正すかのような作品と出合いました。

戦国史を破壊する衝撃作『首』でございます。

ⓒ2023 KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

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豪華(というより異色?)のキャストが集結した戦国スペクタクルとして注目される本作。

北野武監督の最新作とはもちろん承知でしたが、メインビジュアルに見る出演者以外の前情報を一切得ないまま、試写を拝見いたしました。

冒頭から切れ味抜群のバイオレンスが炸裂!……するのは承知の上で、シニカルな笑いが散りばめられているのも期待通り。北野ワールドのエッセンスが溶解度限界まで詰め込まれた時代劇――かと思いきや、いやはや、やってくれはりました、世界のキタノ!

ⓒ2023 KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

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観ている最中、幾度むせては仰け反ったことでしょう。

北野監督も出演していた大島渚監督作品『御法度』(1999年)が脳裏をよぎりましたが、それ以上にセンセーショナル&ショッキングなシーンがこれでもか!!と盛り込まれていて、群雄割拠の戦国時代に新たなイメージを打ち立てたといっても過言ではありません。

ⓒ2023 KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

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ポスターおよびメインビジュアルでもひと際目を引く加瀬亮扮するサイコパスな織田信長の色男っぷり、万歳!!

あれほどの“狂気”をあそこまで説得力をもって体現できる役者はそういないと思われます。『アウトレイジ ビヨンド』(2012年)ではボッコボコにされていた加瀬さんの豹変に魅せられてくださいませ。

南蛮好きで傾奇者としても知られる信長のエキセントリックな身なりの尖り具合もお見事というほかありません。

ⓒ2023 KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

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当コラム担当編集者のお気に入りは、黒田官兵衛(浅野忠信)の“ウラ有ほっこり紬”。

対して、わたくしの注目は明智光秀(西島秀俊)の桔梗紋の羽織。孔雀の羽根柄も洒落ていて、シュッとしたイメージの光秀が選ぶのも納得の衣装です。

戦支度とは異なる不断着、畏まった場での召し物に武将それぞれの趣味嗜好が表れているので、どうぞお見逃しなく。

ⓒ2023 KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

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見たことないけどあったかもしれない歴史の一幕

可能なかぎりフラットな状態でご覧いただかねば!という想いから、本作のご紹介は肝心なところにふれずに進めたい次第。

ⓒ2023 KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

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北野作品初期の代表作『ソナチネ』(1993年)と同時期に構想したという本作は、30年間に亘って温められるうちに、時代による価値観が変化し、適材適所の役者が揃い、当然のことながら映像技術も進化し、監督が思い描いた作品となってお目見えすることが叶いました。

生前、黒澤明監督に「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と言わしめた、念願の映画化だけのことはあります。

ⓒ2023 KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

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主役級の俳優陣が有名武将たちを魅力たっぷりに演じるのはもちろん、遠藤憲一さん、木村祐一さん、小林薫さん、大竹まことさんといった個性派の方々が、独自のキャラで歴史上の人物になり切っているのも見どころのひとつ。

ⓒ2023 KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

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羽柴秀吉(ビートたけし)に憧れる百姓・難波茂助として中村獅童さんが北野組に初参加しているのも注目です。個人的には、vol.36『おしょりん』でも重要な役どころを演じていた津田寛治さん(実は、このあと12月公開の作品にも登場されるので、津田ファンのみなさまは乞うご期待♡)の渋いお声にうっとりさせていただきました。

加えて大変印象深かったのが、千利休(岸部一徳)が光秀らをもてなす茶室のシーンでの、「わては毎朝、自分の首をよう洗うようにしております。天下平定まで、着物の襟はパリッと綺麗にしときたいもんですわ」という利休の言。戦乱の世でなくとも、日々、着物の襟をパリッと綺麗にして暮らせるよう心掛けたいものです。

ⓒ2023 KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

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最後に。ごくごく簡単にあらすじを記しておくとすれば、信長の跡目争いにおいて欲望と策略が入り乱れ、武将たちの野望と裏切りと生き様が、壮大かつ迫力のスケールで描かれた戦国エンターテインメント、といったところでしょうか。

恐ろしくざっくりとした説明で恐縮ですが、「お金と時間をかけた北野流“本能寺の変”の目撃者となる」くらいのお気持ちで、ぜひ劇場に足をお運びください。

ⓒ2023 KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd

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