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お能のススメ ~女流能楽師・田中春奈さんに聞く~ 「気になるお能」vol.3

お能のススメ ~女流能楽師・田中春奈さんに聞く~ 「気になるお能」vol.3

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無表情な面、聞き取れない言葉、古い価値観——能楽へのハードルは高く感じてしまいがち。室町時代から受け継がれてきた日本を代表する舞台芸術への扉を、一緒に開いてみませんか? 伝統芸能の世界に足を踏み入れるべく、もう少しだけ能への理解を深めましょう。

2023.06.13

まなぶ

能楽堂解体! ~女流能楽師・田中春奈さんに聞く~ 「気になるお能」vol.2

初心者向け演目はこれ!

能舞台

春奈さん曰く、初心者でも愉しく観られる曲は「長すぎず、分かりやすく、おもしろい」もの。

「そもそも能には5つの種類があり、それを「五番立て」といいます。ものすごく簡単に説明すると、以下のような分類になります。

一 が出てくる話
二 武士が出てくる話
三 キレイどころが出てくる話
四 狂気系(雑能物:他のジャンルに入らないもの
五 鬼、天狗、獅子、龍神などが出てくる話 ※強烈な舞などあり

多くの人がイメージする能は、三の”三番目物(さんばんめもの)”。例えば、ベーシックで有名なのが『羽衣』です」

羽衣

提供/田中春奈

これは、『竹取物語』の終盤「かぐや姫昇天」に出てくる「天の羽衣」や、七夕伝説とリンクした羽衣伝説をもとにしたシンプルな物語。

昔話では、羽衣を隠されてしまった天女が泣く泣く人妻となりますが、能では人のいい漁師・白龍(はくりょう)がすぐに羽衣を返してくれます。当然、天女の舞が最大の見どころです。

作中、『羽衣』が披露される映画

2023.04.21

よみもの

孤独に寄り添い心静める能の力『ヴィレッジ』 「きもの de シネマ」vol.28

ゆっくりとした曲が多い三番目物は、バレエ文化があるロシアなどでも人気だといいます。

謡本

撮影/きものと編集部

「またこれらは海外公演などでもよく選ばれる曲なのですが、一番目物なら、スピーディな神舞が見どころの『高砂』

四番目物であれば、ドラマチックな『葵上』。これは源氏物語をご存じであれば、そう難しくないと思います。

獅子が登場する五番目物の『石橋(しゃっきょう)』はアクロバティックで見応えがあります」

流派の違いは演出の違い

春奈さんは、金剛流のシテ方(主役)

能は、役割によって担当が異なる完全分業制です。

シテ方以外にも、ワキ方・狂言方・囃子方という役があり、それぞれに流派が存在します。

シテ方の流派は、5つ。

観世流(かんぜりゅう)
金春流(こんぱるりゅう)
宝生流(ほうしょうりゅう)
金剛流(こんごうりゅう)
喜多流(きたりゅう)

春奈さんは、金剛流のシテ方(主役)

それぞれの歴史や特長については割愛するとして……

昔は各流派によってオリジナルの演目があったり、レパートリーにも差が見られたりしたようですが、現在ではほぼ同じ演目を上演しています。

とはいえ、台詞や謡い、舞の演出はそれぞれ。

通常は、同一流派でプログラムが構成されますが、ときには各流派のいろんな演目が少しずつ観られる「立会能」と呼ばれる”バトル能”も上演されます。

お得なアソートのような舞台から能楽にふれるのもいいでしょう。

「一期一会」の力を体感せよ

「お能のココ最高!」と思うところを教えてくださいとお願いしてみたところ、

「やっぱり、一期一会。これに尽きます」

と、春奈さん。

お能は他の演劇と違って演者が揃っての稽古は行われません。

あるのは、本番前のリハーサルが一度だけ。

連続して同じ演目をやらないので、どの演目も「その日だけ」のものです。

金剛能楽堂

「リハーサルも、本番ではこういう感じでやりましょう、というアジャスメント(調整)のための合わしといった感覚です」

装束を身に着け、面をかけるのも、基本的には本番のみ。

「そのめぐり合わせは、一生に一度きり。その一瞬のために心血を注ぎ込んで準備したものを刻み込む
——本番はまさに真剣勝負です。どんな観方であれ、その一瞬をとことん感じる、愉しむ。演者だけでなく、客席も一体となって舞台上の世界に浸る。

私たちは観客の想像力を引き出すために全力で演じる。その一期一会こそ、お能の素晴らしさのひとつだと心から思います

田中春奈さん

撮影協力/金剛能楽堂
撮影/スタジオヒサフジ

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