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黒染屋 柊屋新七 5代目 馬場麻紀さん【YouTube連動・インタビュー編】「紗月がみつけた!和の新風」vol.3

黒染屋 柊屋新七 5代目 馬場麻紀さん【YouTube連動・インタビュー編】「紗月がみつけた!和の新風」vol.3

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平安時代末期に崇徳院の御所があった京都・柳水町。良水に恵まれたこの土地で代々染色業を営むのが『馬場染工業』です。前編では、5代目・馬場麻紀さんにインタビュー!黒染めに人生を賭けるその想いに迫ります。

まなぶ

紗月がゆく!祇園・人気芸妓が訪ねる京の技

まなぶ

元芸妓 紗月が聞く!京都、つなぐ世代

親子が二人三脚で伝統を守る老舗の黒染屋へ

MCの紗月さん

世界中の人々から愛される和の文化が集結する京都。そこには伝統を守りつつ、新しい風を吹かすべく挑戦し続けている方々がいます。

「紗月がみつけた!和の新風」は伝統文化の新たな担い手たちにその活動内容や決意をうかがうYouTube連動企画。祇園甲部の元人気芸妓・紗月さんがMCを務めます。

第2弾の舞台は、京都市内を南北に走る西洞院通三条下ル柳水町。

ここは平安時代末期に崇徳院の御所があった場所で、かねてより良質な水に恵まれ、それを利用した染色業が発展しました。

西洞院通三条に本拠地を置く『馬場染工業』

西洞院通三条に本拠地を置く『馬場染工業』

そんな柳水町に本拠地を置くのが老舗の黒染屋『馬場染工業』です。

五つ紋入りの第一礼装である黒紋付をはじめ、着物や洋服を染めている黒染師“五代目柊屋新七”こと、馬場麻紀さんにお話を伺いました。

紗月さんの装い

着物:紋意匠地染め小紋 帯:紬地染め名古屋帯

まずは、紗月さんの装い紹介から。

間道ぼかしが目を惹く着物は、普段はかわいらしい印象の紗月さんをキリリとした表情に。

地模様

着物:紋意匠地染め小紋 帯:紬地染め名古屋帯

近づくと大きな花の地模様が浮かび上がる紋意匠地が用いられており、 濃紫と薄灰桜の配色が、大人の艶やかさを感じさせます。

帯合わせ

着物:紋意匠地染め小紋 帯:紬地染め名古屋帯

取材先にちなんで、墨黒色の帯をセレクトされた紗月さん。

帯締めの赤、飛び絞りの帯揚げの赤が効いていますね!帯締めの先の小田巻がちょこんとかわいらしく、紗月さんらしさがこんなところに。

5代目から6代目へ、つなぐバトン

五代目柊屋新七・馬場麻紀さん

五代目柊屋新七・馬場麻紀さん

『馬場染工業』の創業は明治3年。以降150年以上にわたって、ここ柳水町で染色業を営み、“柊屋新七”の名前を代々受け継いできました。

その5代目に就任したのが、今回お話を伺う馬場麻紀さんです。2008年に、4代目であるお父様の跡を継ぎました。

インタビュー中の紗月さん

黒紋付染の需要が最も高まっていたのは昭和40年〜60年。当時は1ヶ月に3万反もの着物を染めていたといいます。

麻紀さんが子供の頃も、お父様がどこにいるのか分からないほど、染めた後の真っ黒な着物と染める前の真っ白な着物で工場が埋め尽くされていたそうです。

「それが普通だと思っていたので、全然違和感がなかったですね」

と、当時を振り返る麻紀さん。

最盛期には、120軒ほどの染め屋さんが立ち並んでいたという柳水町。今では、『馬場染工業』含めて3軒にまで減少してしまいました。

麻紀さんが立ち上げた新ブランド「京の黒染屋」

かねてよりマスコットキャラクターを務める『感謝くん』

同時に黒紋付染の需要も下がり始めたことから、麻紀さんは洋服の染め替え・染め直しを請け負う新たな事業を開始。

今では洋服の染め替えの依頼が多く、工場にもワンピースやジャケット、ジャンバーなど、黒く染められたたくさんの洋服が天井から吊り下げられていました。

黒く染められた洋服

「リピーターさんがすごく多くて。みなさんが口コミで広げてくださるので、本当にありがたいと思っています」

と、麻紀さん。お父様がこだわっていた着物の黒染めも大事にしながら、時代に合わせた工夫で未来に技術を繋いでいこうとされています。

とはいえ、湿度90%以上になる工場内での長時間の作業は年々難しくなってきているという麻紀さん。そんな麻紀さんを見兼ね、「じゃあ、俺がやるわ!」と声を上げてくれたのが息子の健悟さんでした。

麻紀さんと、息子の健吾さん

麻紀さんと、息子の健悟さん

以前は別の会社にお勤めでしたが、お休みの日には麻紀さんを手伝っていたそうです。

「本当に優しい子で」と健悟さんについて語る麻紀さんの表情はとってもにこやか。

家業に入られて、はや5年。

6代目となる健悟さんはプレッシャーを感じつつも、変に気負うのではなく『馬場染工業』で働く一従業員としてお客様に対して自分が何をできるかが大切だと考えています。

素敵な親子を前に紗月さんもこの笑顔

素敵な親子を前に紗月さんもこの笑顔

「6代目という名前はついていますが、でもそれは名前だけやと思って頑張っていきたいです」

YoTube動画の方ではそんな健悟さんの作業風景をお届けしています。そちらも合わせてご覧ください!

黒染めを支える名水を試飲

黒紋付でお正月を過ごす舞妓時代の紗月さん(撮影:松尾カニタ))

黒紋付でお正月を過ごす舞妓時代の紗月さん(額内の写真 撮影/松尾カニタ)

黒紋付といえば、紗月さんも舞妓時代にお店出しや始業式、八朔、芸妓になるにあたっての襟替えなどの節目に着ていたそう。

今回はその貴重なお写真も持ってきていただきました!白粉を塗ったお肌が、黒でより際立っているように見えます。

「黒紋付はとりわけずっしりと重みがあって、気持ちも引き締まりまったことを覚えています」

と、紗月さん。

とはいえ、ひと口に黒といっても奥深い黒染の世界では、物によってその加減はさまざまです。

黒の加減が違う二種類の黒紋付

例えば、紗月さんがお持ちの反物は藍下(あいした)といい、藍を下染めに用いた少し青みがかった黒。一方、麻紀さんがお持ちの右の反物は、紅を下染めに用いた紅下(べにした)といいます。

「紅下はお日さまの下で見ると奥深い色になり、藍下は蛍光灯の下で見るとすごく高貴な黒になるんです」(麻紀さん)

素人目には……どちらも真っ黒!どちらが好みかは人によるそうですよ!

より深い黒を出すにはどうすればいいか、常に追求されている麻紀さん。

そんな麻紀さんを支えているのが、店前の井戸から湧く『柳の水』です。

柳の水

撮影の合間にも近所の人が水を汲みに

千利休が茶の湯に用いたという

千利休が茶の湯に用いたとか

江戸時代には、あの千利休が茶の湯に用いた名水として有名で、現在も多くの人がここに水を汲みに訪れます。

『馬場染工業』でも代々柳の水を黒染めに用いてきたとのことですが、その理由は、この水には微量の鉄分が含まれているから。

少し鉄分が入っていることで、黒の濃さが引き立てられるというのです。

柳の水を試飲

身体にも良いとのことで、紗月さんも柳の水を試飲してみます。

ひと口飲んだだけで「うわー!美味しい!」と思わず声を上げる紗月さん。口当たりがとてもまろやかで、するするっと身体に入っていきます。

麻紀さん曰く、この水でお米を炊くとグレードがぐんと跳ね上がるのだとか。みなさんもお近くへ行かれた際にはぜひ訪ねてみてくださいね!

ところでみなさんは、ご自身の家紋をご存知でしょうか?

着物ファンの方でしたらきっと把握されていらっしゃる方が多いですよね。

黒紋付には家紋が5ヶ所ついていますが、麻紀さん曰く、

・両胸の家紋が両親
・両袖の家紋が親戚、兄弟
・お背中真ん中の家紋がご先祖様

をあらわしているそう。しっかりと守られているのが黒紋付なのですね!

しかし、現代では一般的にはご自身の家紋を知らない方が増えているそう。そこで少しでも多くの人に家紋に触れてほしいと願い、麻紀さんが作ったのが……

366日を表した花個紋

四年に一度の閏年(うるうどし)だけにある2月29日も含む、366日をあらわした『花個紋(はなこもん)』。

京都府知事賞も受賞した『花個紋』に紗月さんが挑戦する体験編は、来月公開!

ぜひお楽しみに。

体験中の紗月さん

紗月さんファン必見!オフショット

うなぎの寝床の染め工場。通路に浅野光が降りそそいで

うなぎの寝床の染め工場。通路に朝の光が降りそそいで

オープニングを撮影中

はい!オープニングの撮影から

黒染めされた洋服

黒染めされた洋服を見上げる紗月さん。白いお肌が際立ちますね!

麻紀さんと和やかな雰囲気で打ち合わせ中です

実はとってもユーモラスな麻紀さん。和やかな雰囲気で打ち合わせ中です

柳の水が汲める井戸はポケストップにもなっているんです

柳の水が汲める井戸はなんと……ポケストップにも!

不思議なほどまろやかで美味しいお水でした

不思議なほどまろやかでおいしいお水でした

撮影中も笑顔が絶えない紗月さん

笑顔が絶えない紗月さん

次週はさらに息子の健吾さんにもお話を伺います!

健悟さんが繋ぐ未来への挑戦も楽しみです!

文章/苫とり子
撮影/弥武江利子

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